フルート記事
2本のフルートによるブラジル音楽、日本ツアーを開催

Interview ヒロ・ホンシュク & 城戸夕果 ― Love To Brasil Project

ボストン在住、ジャズとブラジルのハイブリッドバンド「ハシャ・フォーラ」のリーダーで作曲家でもあるフルーティスト、ヒロ・ホンシュクさんと、ブラジルで活動後ボストンを経て日本でライブを繰り広げる城戸夕果さん。二人の盟友が結成した「Love To Brasil Project」が、6月末より日本ツアーをスタートする。プロジェクトの音楽性、先行リリースされたEPアルバムのこと、そして目前に控えたツアーについて――若きジャズフルーティストが、じっくりと話を聞いた。

インタビュア:片山士駿

 

何を演奏しても怖いものなし、自由自在に…

ーー お二人が出会ったきっかけや、Love To Brasil Projectのコンセプトを教えてください。

ホンシュク あるときFacebookで、夕果さんがブラジルで *roda (ホーダ)をやっている動画を見て、こんなにすごい日本人がいるのか!と驚いたのがきっかけでした。その動画を見てすぐにFacebookの友達申請を送りました。その頃夕果さんはブラジルに住んでいらしたのですが、僕ももう20年くらいブラジルにも行っていなかったので、ブラジルに行きたくてしょうがなかったんですよ。それで夕果さんを尋ねようと思ってメールをしようと思ったら、偶然にも夕果さんが僕の住んでいるボストンに来ることになったんです!ボストンに到着されたその日は、僕はツアーに出ていてお迎えができなかったのですが、そのあと会う約束をして、実際に会ったその日にはお互いにフルートを出して、すぐに意気投合しました。

城戸 そのあとリハや勉強会、セッションの中で様々な課題に取り組みました。ヒロさんのRacha Fora(ハシャ・フォーラ)というバンドがあり、そこにゲストで参加させていただいたりもしましたね。初めて出会ったときから2人の共通項としてブラジルというものがあり、そのブラジルの音楽を、伝説のジャズミュージシャンとも演奏してきたヒロさんと演奏することになったわけですが、30年以上北米で活動されてきたヒロさん、そして私は南米と長く関わってきたので、それぞれの土地で移民たちが育んできた音楽を自分たちで融合させて、その上で自由にインプロヴィゼーションをする、というのはコンセプトの中でも魅力に感じています。

ーー なるほど。出会ってすぐにお互い共感し、いろいろなセッションを経て今回のプロジェクトを結成する運びとなったのですね。

城戸 フルーティスト同士って、ピッチとかすごく難しいじゃないですか……? でもヒロさんと初めて演ったときに、全然お互いのスタイルも音も違うのに、パッ!とピッチが合って、ものすごいハーモニーだったんです。インプロをしていて、何を演奏しても怖いものなしで自由自在に演奏ができ、お互いの蓄積がすべてプラスに機能するような感じもしました。まず、グルーヴに関しても、重点を置くポイントなども共通していました。

ホンシュク お互いがやりたいと思って向かう方向が、常にシンクロナイズしているようで、これは本当に相性だと思いますね。

 

 

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〜Profile〜

ヒロ・ホンシュク(Horoaki Honsyuku)

米ボストン在住。バークリー音楽大学に奨学生として入学。その秋にニューイングランド音楽院の大学院に奨学生として迎え入れられ、故ジョージ・ラッセル、ディブ・ホランド、ジョージ・ガゾーンなどに師事した。両校多数の賞を受け、主席で同年同月卒業後ニューイングランド音楽院、ロンジー音楽院、ニューイングランド・インスティテュート・オブ・アートなどで教員を務めた。ホンシュクは作曲家/バンドリーダーである故ジョージ・ラッセル氏のアシスタントを20年務め、氏のリディアン・クロマティック・コンセプトを実践する数少ないアーティストとしても知られる。また同氏のリビングタイム・オーケストラの一員としてヨーロッパでも活躍。現在NYCで活動するジャズとブラジリアンのハイブリッドバンド、ハシャ・フォーラのリーダを務め、アルバム3作を発表。他6枚のリーダーアルバムと、サポートミュージシャンとしても30作以上のアルバムに参加。2017年に城戸夕果Love To Brasil Projectを発足し、活動を続けている。

 

城戸夕果(Yuka Kido)

89年小野リサ・グループのデビュー・メンバーとしてブラジル音楽に出会い、リオデジャネイロに移住。ブラジルでボサノヴァの創始者ジョニー・ アルフ、ジョイス・モレーノ、ジョアン・ドナート、カルロス・リラ等と活動。帰国後、自己のグループや、EPO、宮沢和史とのコラボレーションなどを通じ、ブラジルの手法によるオリジナルの世界を追求。渡辺香津美や向井滋春等ともツアーをする。リーダー作は、ブラジルやデンマークでの録音も含め6枚リリース。一部はイタリアでベスト8を記録し、韓国でもリリースされる。2000年から2年間ベルギーで活動。2008年、リーダー作5タイトル「リファインド」「リオスマイルズ」「アラクアン」「カーザ」「ルルー」が一挙再発売された。12年、ジャズフルート4人のアンサンブル「フォー・カラーズ」をリリース。2020年、ボストン在住時にフルート奏者のヒロ・ホンシュクと「Love To Brasil Project」をリリース。2020年夏に帰国、現在、日本で活動中。

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片山士駿(Shun Katayama)

1995年 千葉県市川市出身。国立音楽大学ジャズ専修 首席卒業。矢田部賞受賞。Manhattan School of Music修士課程修了。第46回山野ビッグバンドジャズコンテストにて、最優秀ソリスト賞を受賞。第20回、第21回 太田市ジャズフェスティバルに於いてソリスト賞を受賞。National Flute Association主催 44th Annual Convention, Jazz Artist Competitionに於いて、同部門では邦人初のWinner Playerに選出。ジャズを音楽的背景に持ち、自己のプロジェクトを行なう他、様々なアーティストのレコーディングやライブのサポートへ参加している。YAMAHA Z アーティスト。これまでに池田篤、大澤明子、斎藤和志、Donny McCaslinの諸氏に師事。主な共演歴: 小曽根真、佐山雅弘、山下洋輔、井上 智、井上陽介(敬称略)等

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