THE FLUTE BackNumber 企画

THE FLUTE 永遠の財産 巨匠たちのメソード

1993年の創刊以来、本誌には世界の名だたる奏者たちが登場し、上達や練習のヒントとなるアドバイスやコメントを多数残してくれた。
今回の特集は、そんな“永遠の財産”であるメソードの数々を再編集して、紹介する。ジャン=ピエール・ランパル、ジュリアス・ベーカー、オーレル・ニコレ、ジェームズ・ゴールウェイ……巨匠たちの言葉と教えを味わい、日々の練習にもぜひ役立ててほしい。

今後、FLUTE ONLINEでは、Back Numberに登場した巨匠たちのインタビューやレッスンを公開してきます。ご期待ください!


CONTENTS
1ページ目

●上達への道―巨匠からのメッセージ

ジャン=ピエール・ランパル/オーレル・ニコレ/ジュリアス・ベーカー
ジェームズ・ゴールウェイ/ペーター=ルーカス・グラーフ/ウィリアム・ベネット
ウォルフガング・シュルツ/マクサンス・ラリュー/クリスチャン・ラルデ

次のページへ続く

●巨匠が教える! 練習法

【基礎練習編】アンドラーシュ・アドリアン/ミッシェル・モラゲス
【ロングトーン編】吉田雅夫 【スケール練習編】レイモン・ギオー

●鼎談「よく聴くこととしっかりした準備、そしてアンブシュア」

アラン・マリオン × アンドラーシュ・アドリアン × マクサンス・ラリュー

 

上達への道―巨匠からのメッセージ

インタビューの中で飛び出したアドバイスの言葉は、珠玉のメッセージ―。
歴代数々のインタビューの中から、巨匠たちによって語られた“上達法”をまとめた。

Rampal

音が良くなければ何もできません
Jean-Pierre Rampal
ジャン=ピエール・ランパル(15号より)

楽器奏者、弦でも管でも、まず大切なのは「音」です。音が良くなければ何もできませんし、指なんか問題外です。音の勉強をすることは当然のことです。すべての人が音についてマスターするのであれば、こんなに素晴らしいことはありませんが、残念ながらそうはいかない。なぜならこれは各人の才能であって、勉強の成果による贈り物だからです。 (1995年/インタビュア:鈴木章浩)


Nicole

テクニックのほかに必要な5つのもの
楽譜に忠実に、そして正確に
Aurèle Nicolet
オーレル・ニコレ(16号、60号より)

(今、ヨーロッパで注目される若いフルーティストは?という問いに答えて)なぜ、私がこれらのフルーティストたちに特別な興味を感じるかといいますと、この人たちはただ単にテクニックをひけらかすフルーティストではないからです。それぞれ優秀な技術と音楽性を持ちながら、また同時に音楽の内容を深く掘り下げて考えるインテリジェンスを持ち合わせているという点で、私はこの人たちに注目するのです。皆テクニックはもちろん、スタイルのとらえ方、そして教養や個性があり、また知性も理性も持っています。(1995年)


現代作品を演奏するときは、現代奏法などのテクニックが必要になってきますが、それ以外にも、楽譜をよく読んで、楽譜に忠実に、そして正確に演奏してほしいですね。シェーンベルク、ブーレーズ、ベリオは大変細かく、正確に楽譜を書いています。楽譜の音符や書かれてある指示を正確に読むことは、とても重要なことです。(2002年/インタビュア:塩野衛子)


Baker

必ず練習に使う2つの曲
Julius Baker
ジュリアス・ベーカー(27号より)

僕が必ず練習に使う曲が2曲ある。それがちゃんと吹けたら自分はまだ大丈夫というわけだね。僕がカーティスに受かって初めて学校のオーケストラで聴いたのがサン=サーンスの『動物の謝肉祭』の練習で、全然知らない曲だった。その中の「鳥かご」のところが素晴らしいと思ったんで、―中略―(自編の練習曲集に引用されたバッハのソナタの第2楽章の冒頭部分を示しながら)ここにも出ているんだけど、バッハがわざわざ時間をかけてたくさんのソナタをフルートのために書いてくれたなんて信じられなかった。なぜなんだろう? 歴史上最大の作曲家がフルート曲に時間を費やすなんて。そこで、僕はこの曲を選んで「鳥かご」と一緒に毎日の練習に使うことにしたんだ。スケールとアルペジオの練習を済ませてからね。
(1997年/インタビュア:峯岸壮一、通訳:奥田恵二)


Galway

声に出して、歌うこと
Sir James Galway
ジェームズ・ゴールウェイ(34号より)

「これ、ちょっと歌ってみてくれないか」と言うと、「いや、歌えません」という人が多いんです。私はフルートを吹くときはいつも心の底から歌うことを大事にしています。歌うことによって、フルート奏法をすぐ進歩させられると私は確信しているからです。  吹きながら頭の中でメロディを歌っていることが大事です。実際に曲をやるときも、歌ってみてから、ということを基本に考えてみましょう。
(1998年/東京四谷区民ホールでの公開レッスンより)


Graf

『チェック・アップ』活用法
Peter-Lukas Graf
ペーター=ルーカス・グラーフ(14号より)

フルートの練習についてでしたら、「チェック・アップ」という本を書きましたので、そのことをお話ししたいと思います。とても役に立ちますし、値段も高くありません。1冊ですべてをカバーしているので、「チェック・アップ」と名付けたのです。あらゆる基本的なテクニックのための基本的な練習を入れました。私自身も使っています。
(自分自身は)スケールや音の練習は、耳を鋭くして聴きながらしますね。曲のときも同じように、鋭い耳で聴いて自分自身を批評しながら練習するのです。逆に、フルートの練習課題(私の本)の時は、どの課題でも単調に吹くのではなく、楽曲のように興味深く練習するべきなんですよ。
フルート奏者はいつも2つのことに頭を悩ませています。一つは楽器を扱うテクニックや音の出し方について、もう一つは音楽ですね。2つのバランスを良くとって、フルートを吹く時に、音楽を忘れないようにしなくてはいけません。素晴らしい演奏をするには、テクニック的にも上手に吹かなくちゃいけませんが、それがすべてではありません。どんなに上手に吹いても、音楽を何も表現していなかったら、何の意味もないのですから……。
(1995年/訳文:中川紅子)


Bennett

ジェフリー・ギルバート、その教え
William Bennett
ウイリアム・ベネット(11号より)

ジェフリー・ギルバート(ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団、ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団、BBC交響楽団、ハレ管弦楽団などの首席奏者を歴任したイギリスのフルーティスト)先生には、まずはじめに指使いを直されました。しかも一度に全部を。そして長調と短調のスケール、アルペジオ、ディミニッシュの和音などを全部1日1回は練習することが最初の課題でした。―中略―指がきれいに動くだけでは駄目で、低音から高音まですべての音を同じ強さ、質で吹けることも大切でした。それから先生はリズムや強弱についても強調されていました。たとえば4拍子の場合、1拍目は強拍、3拍目は中強拍、4拍目が最も弱くというように、音には論理的な関係があるわけです。  スケールやアルペジオも同じで、このように練習しました(譜例参照)。これはとても大事なことなんですが、今の演奏家にはそれを無視している人が多いですね。(1995年/インタビュア:中川紅子)


Larrieu

良いブレスコントロールのために
Maxence Larrieu
マクサンス・ラリュー(68号より)

(良いブレスコントロールのための方法は)歌、声楽のテクニックとまったく同じです。つまり、まず声や音を横隔膜上で支える、それが音に表情と命を与えるのです。そしてなるべく目立たないように、できるだけ高いポジションに息を入れます。身体の下のほうに息を入れてはいけません。なぜなら口からの距離が遠くなるので、いつもブレスが遅れる感じになるからです。
口を開けながら身体の最も高い位置に息を入れることを習慣にしなくてはいけません。そうすれば目立たずに自然なブレスができるでしょう。
本当に我々は、ブレスということについて十分気をつけているとはいえませんね。もっと注意深くならなくては。録音してみるのも良い方法でしょう。そうすれば時として、ただ身体的必要性からとっているブレスに気がつくはずです。けれども、ブレスはそのようにとるものではなくて、必ず音楽と一緒のものでなくてはいけません。
(2004年/インタビュア:東條茂子)


Schulz

「これで大丈夫」なレベルまで時間をかけること
Wolfgang Schulz
ウォルフガング・シュルツ(9号より)

(コンサートの前の練習として)ウォーミングアップでは、どういう曲を吹くかにもよりますが、普通、ライヒェルト、モイーズなどで指や音の練習をします。たとえば、スタッカートの多い曲では、5分くらいスタッカートを集中的に、またカンタービレのように、ゆっくり歌う曲ではロングトーンの練習を、というようにです。特に難しい箇所は2、3回ゆっくりとさらいます。
気をつけないといけないのは、特に若い頃はとにかく速いテンポで練習しがちですが、個人練習ではできるだけゆっくり練習したほうがいいし、オーケストラのゲネプロでは、ゆっくりのテンポでやることがとても大事だということです。そうすることによって、難しいパッセージに対しても自信が持てるようになるからです。「これで大丈夫」という自信は自分にとっても必要なんです。
(1994年/インタビュア:井ノ上洋)


Guyot

「原因」を見つけること
Christian Larde
クリスチャン・ラルデ(9号より)

私はいつも生徒に言うのですが、うまくいかないパッセージがあったら、まず何の音がうまくいかないのか?それを見つけたら、なぜその指がうまくいっていないのか?……それを見つけて練習すればいいのです。何が原因かわからなければ、何十回練習しても無駄です。―中略― それから、フルートパートだけを読むようなことはしないように。その下に何があるのか、楽譜を全部読んでください。フルーティストになるのは結構ですが、音楽家になったらもっといい……これが目的なのですから。
(1994年/インタビュア:齊藤佐智江)

 
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