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第6回 インタビュー編「上野由恵と絵画」

THE FLUTE ONLINE 連載 「岩崎花保のハッピーフルートライフ」

絵画との出会い

岩崎
そういえばご自宅にも油絵や画集がたくさん飾られていますが、昔から美術がお好きだったのですか?
上野
いや、実は、絵や美術が好きになったのは数年前からのことなんです。アメリカとヨーロッパに住んでいた間に、様々な美術館や画家にゆかりの場所を訪れて、どんどん興味が湧くようになりました。
お気に入りの美術館、オランダ・ハーグの『マウリッツハイス美術館』
お気に入りの美術館、オランダ・ハーグの『マウリッツハイス美術館』
 
岩崎
ゴッホがお好きだと聞いたのですが、彼にまつわる場所にも行かれたのですか?
上野
はい、あれは衝撃的な体験でした。ゴッホが移り住んだ南仏のアルルを訪れ、彼が住んだ家や街、絵を描いた場所などを見て回りました。ほとんどが当時のまま残っていて、ゴッホがもがき苦しみながら絵を描いた姿をリアルに想像することができました。その後アムステルダムのゴッホ美術館で貴重な所蔵物をたくさん見て、画家をものすごく身近な存在として感じることができたんです。どんな気持ちでこの絵を描いたのかと思いながら絵を見ることで、より深い感動を得られるようになりました。
ゴッホが暮らしたアパートの跡地。中央の建物はゴッホの絵にもそのまま描かれている。
ゴッホが暮らしたアパートの跡地。中央の建物はゴッホの絵にもそのまま描かれている。
『星降る夜』が描かれた場所。先のアパートとは数十メートルの近さ。
『星降る夜』が描かれた場所。先のアパートとは数十メートルの近さ。
上野
また、ゴッホは浮世絵の影響をすごく受けていて、コレクションの数も多いんですが、ラヴェルやモネの家に行った時も、壁一面に飾られた浮世絵の数に圧倒されました。
岩崎
当時のヨーロッパと日本というのは文化もまったく違うしお互い異質な感じがすごかったと思うんですけど、その中で日本の作品に興味を持って(もちろんほかのアジアのイメージも混ざっていたと思いますが)それを積極的に取り入れて新しいものを作っていったというのは本当に興味深いですよね。あと、なんだか嬉しい気持ちになります(笑)。
上野
そう、日本人は西洋へのコンプレックスというか、自分の文化をあまり大切にしないところがあるけれど、実はとても大きな芸術的インスピレーションを世界に与えてきたということをもっと自覚するべきだと思っています。

武満徹とイサム・ノグチ

岩崎
それから、私は大学院の論文で武満徹とその周りの芸術家について書いたのですが、由恵さんのご実家とイサム・ノグチがアトリエとして使っていた家がご近所だそうで!
上野
そうなんです。現在はイサム・ノグチ庭園美術館として管理・公開されているけれど、私が幼い頃はご本人がまだご存命で、アトリエとしてたくさん作品を生み出していた時期でもあります。実は小学校の帰りにその美しい庭によく忍び込んで遊んでいたんですが、後になって「イサムは、地元の子供たちが庭で遊ぶ声を聞くのが好きだった」と本に書いてあって、「あ!それ私だ!」と(笑)。
岩崎
すごい。世界的な芸術家との接点がそんなところに(笑)!
上野
当時はそんなすごい方だとは知らなくて……。
大人になってからも何度も訪れてるのですが、ある時、武満徹の『巡り -イサム・ノグチの追憶に- 』の演奏解釈に行き詰って訪れたことがあり、そこで武満徹の音楽とイサム・ノグチの彫刻作品の共通点を発見したんです。
岩崎
興味あります!!
上野
現在そこに置かれている作品にはあまり説明が書かれていなくて、「自由に感じてください」という趣旨でゴロゴロと置かれてるものが多いのですが、ボーっとそれらを見ていて、いろいろな質感があって面白いなと感じたんです。一つの石なのに、ザラザラしていたりツルツルしていたり、ボコっと飛び出したり引っ込んだり……。これって、武満さんのフルート作品でも同じことが言えると思うんです。一本のフルートの音なのに、様々な音質を使い分けて書かれている。それらが並ぶことで何とも不思議な世界感が浮き出てくるんです。
それ以来、武満さんの作品は音の質感を具体的にイメージしながら演奏するようになりました。
香川県高松市の『イサム・ノグチ庭園美術館』。
香川県高松市の『イサム・ノグチ庭園美術館』。
岩崎
今まで石と音の質感を比べてみたことがなかったのですが、確かに武満さんの曲の中で出てくる音って多様ですよね!今のお話を聞いて、音楽と美術の共通点を見逃さないぞという気迫のようなものを感じました。
上野
初めのほうに話したように、音楽と美術は同じ流れを辿っているので、それらは絡み合って存在しています。音楽は私にとって距離が近すぎて客観視できないところがあるので、絵画などの美術作品に目を向けることで、より冷静に音楽に向き合えるような気がします。どちらも知れば知るほど尽きることはなく、底なし沼にどんどんはまっていっています(笑)。
岩崎
芸術に終わりはないですよね。私も生きている限り、音楽も美術も探求していきたいなと改めて思いました。貴重なお話を聞かせてくださりありがとうございました!

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