フルート記事
kokoro-Neがお届けする〜フルートで彩る フィギュアスケートの世界〜

第9回│「キャラバンの到着」

こんにちは!2本のフルートとピアノのトリオ【kokoro-Ne(ココロネ)】です。
10月に入って急に寒くなったりしましたが、皆様、お風邪など召されておりませんでしょうか。kokoro-Neもつい先週リハで集まった時は「あっつー!秋どこ行った?」なんて会話をしていたのに、慌てて冬物引っ張り出してきたり、子どもたちも一気に体調を崩し、てんやわんやしています。
さて、今回ご紹介するのは、ミュージカル映画「ロシュフォールの恋人たち」より『キャラバンの到着』です。

・映画「ロシュフォールの恋人たち」について
・町田樹さん、佐藤駿選手のプログラム
・『キャラバンの到着』への思い入れ

などをテーマにお話ししています。今回はkokoro-Ne流のアンサンブルの取り組み方のガヤガヤトークなど、メンバーの生態をご覧いただける動画もございます。是非お楽しみください。

ミシェル・ルグランと映画「ロシュフォールの恋人たち」

フランスの作曲家、ジャズ・ピアニスト、映画監督、俳優として活躍したミシェル・ルグラン。「シェルブールの雨傘」をはじめ、20世紀後半のフランス映画音楽界を代表する存在で、ストーリーに寄り添う吸引力の高い楽曲で人々を魅了しました。「ロシュフォールの恋人たち」だけでも、『キャラバンの到着』『双子の姉妹の歌』『マクサンスの歌』など、いつか全曲チャレンジしたいくらい名曲ズラリです。

作品で多用されているツーファイブ(Ⅱ度→Ⅴ度)の和音てベタなだけに、実際に使うとなると、私レベルだと結構勇気がいるコード進行なのですが……『キャラバンの到着』のような軽快な曲でも、『マクサンスの歌』のようなしっとりのバラードでも、ミシェル・ルグランは美しいメロディとともに畳みかけて見事に惹きつける。そういうところに、何十年経っても色褪せず「グッと来る」魅力を感じてしまいます。

 

映画の舞台となっているロシュフォールの街は、白が基調。そこに、カラフルな衣装を纏った登場人物が次々と現れます。話も母と双子の娘、3人がそれぞれ運命の人と出会うシンプルな構成。ヤンチャな末っ子の弟や、母が働くカフェでの様子がスパイスとなり、歌や踊りを交えて物語が進みます。これらの映像と、わかりやすく色彩豊かなサントラが見事にお洒落な世界観を作り出していて、ミシェル・ルグランの魅力をたっぷり味わえる楽しい作品です。

町田樹 2012-2013 Ex

映画の中の各シーンの曲が走馬灯のようにメドレーになっている『Finale』を使用しています。その中に『キャラバンの到着』も含まれていて、 この『Finale』が流れるエンドロールに入る寸前のラストシーンがたまらないんですよね😍(後述)

個人的には銀メダルを獲得した2014世界選手権の演技が好きです。コンパルソリー(※1)や体幹を鍛えることを重視して練習していただけあって、前半の『マクサンスの歌』や後半の『ソランジュの歌』では、氷に描かれる図形の美しさに見入ってしまいます。情熱的なステップの最中も手・足・重心がバラバラで、普通の人なら捻れて転んでしまいそうな動きなのに、淀みなく見応えたっぷりです。
『キャラバン〜』のような軽快な曲では、映画のダンスシーンを思わせる振り付けもあり、それぞれの曲調を見事に表現したプログラムです。BGM的な音楽の使い方ではなく、音楽の比重が大きくて、スケートとしっかり融合しているのが町田樹さんの演技の好きなところです。ダイジェストのようにコロコロ変わる曲調にフィギュアスケートの要素がしっかり溶け込んでいて、競技でも観てみたかった贅沢な作品です。
スケーターとしては引退してしまいましたが、「スケートをブームじゃなくて文化にしてほしい」(ほんとそれ。音楽もです。泣)と、スポーツのマネージメントの研究に励んでいるそうです。今後の活躍が楽しみです。
※1 氷上を滑走して課題の図形を描き、その滑走姿勢と滑り跡の図形の正確さを競う種目。1990年までシングルで行なわれていた。

 

佐藤駿 2019-20 SP

昨シーズンはジュニアGPF(※2)で優勝などで飛躍した佐藤駿選手。使用曲は『キャラバンの到着』のみ、インストをメインにした編集で、こちらも映画のダンスシーンの動きを取り入れたような躍動感溢れる振り付けが楽しめます。
ラストのコンビネーションスピンでヴォーカルバージョンが出てくるので、映画を観たことがある人は、粋な編集に思わず心を掴まれてしまうかも知れません。全日本ではショートの3本目で助走を見て「え、もしかして?」と思ったところ、見事に4回転(※3)が決まったんです。15歳のメンタルにオバハンは感激してしまったのですが、そのあとも最後まで一歩一歩伸びて、スピードも落ちずに滑り切る素晴らしい演技でした。今年も活躍が楽しみです。
※2 GPF:グランプリファイナル
※3 ジュニアのSPでは4回転ジャンプが禁止されています。

キャラバンの到着

個人的に2つの「忘れられない」がある曲です。1つめは三菱ランサー セディアのCM。私たちアラフォー世代は映画よりも印象が強いかも知れないですね。テレビから流れてきた衝撃的なカッコよさ! 釘付けになったあの感覚は、今でも鮮明に覚えています。CMでは車の映像もあって、だいぶシャープなイメージを持っていました。

2つめは、本家の映画でヴォーカル版を聴いた時です。冒頭、お祭りに参加するキャラバン隊がロシュフォールに到着するシーンでインストで演奏され、その後、別のシーンでキャラバン隊の青年2人が歌います。「えー!この曲、歌えるもんなんだ∑(゚Д゚)!」ていうか、歌もいいインストとコード進行やバックのサウンドも違ってこれまたお洒落。その後のシーンでもアレンジを変えたり、他の曲と組み合わさったり、映画の中で度々再現されます。

私が好きなのは、なんと言ってもラスト!

母:イヴォンヌ(カフェ経営)昔の恋人:シモン(楽器&楽譜屋)
姉:ソランジュ(音楽家)憧れの作曲家:アンディ(有名作曲家、シモンの学友)
妹:デルフィーヌ(ダンサー)「まだ見ぬ理想の女性」としてデルフィーヌうり似の肖像画を書いたマクサンス(兵役中の画家)

3組の男女は、他の登場人物とは会うのに肝心の本人同士はすれ違ったり、ラストまでまともに会えないまま物語が進みます。ギリギリで一気に伏線が回収され、イヴォンヌシモン、ソランジュアンディは再会を果たします。(ソランジュとアンディとお互い一目惚れのシーンで、手元だけ→から顔を上げたジーン・ケリーの名優オーラがこれまた半端ない!)
1人取り残された感の漂うデルフィーヌは、ダンサーを目指し、祭りを終えてロシュフォールを離れるキャラバン隊の車に乗り込みます。その車で彼らと口ずさむのが『キャラバンの到着』。そして、道端にはヒッチハイクをする青年が……!なんとデルフィーヌと、お互いに探し合っていた運命の人マクサンス。マクサンス(絵描き=ボエームだったりして。笑)が車に乗り込む様子が後ろ姿&引きの映像で、そのままエンドロールに入るんです😆お洒落なフランス映画ですもん、「その後、デルフィーヌとマクサンス、どーなりましたぁ?」なんてヤボなの見せませんよね。あー、もー、この余韻、忘れられません!

お馴染みの「♪ラレドレ ラミレミ」のジャズワルツだけでなく、3分弱の中にワルツや4ビートが詰め込まれています。でもバラバラの継ぎ接ぎ感はまったくなくて、自然に変化して1曲にまとまっている、なんとも贅沢な楽曲です。なかなか曲が書けない人としては、曲中で使われてるフレーズを全部分けたら3曲くらい書けそうなのになぁ。と思ってしまいます(笑)。

フルートの楽譜

2本のフルートとピアノのための 映画「ロシュフォールの恋人たち」より『キャラバンの到着』
「Arrivée des camionneurs」for 2Flutes and Piano from『Les Demoiselles de Rochefort』/ Michel Legrand
10月下旬発売予定

kokoro-Neの楽譜・CDは「kokoroneshop」でお求め頂けます。

 

参考動画

演奏のポイント

「キャラバンの到着」にまつわるkokoro-Neトーク

動画では、♩≒216とかなり速い中でリズムが小刻みに入れ替わる曲に対して、kokoro-Ne流の工夫などお話しています。
楽譜はドラム・ベースまで入ったオーケストラ編成をトリオに凝縮しました。フルートは1stと2ndの役割は上も下もない感じで、行ったり来たり入り組んで、次から次にフレーズが襲ってきます(笑)。また、音符の長さ、ニュアンスも可能な限り再現しました。♩と♪の違いや、テヌート・スタッカート・何もなしなど、ちょっとしたことを3人揃えるだけで、演奏が引き締まって聞こえます。ぜひ役立ててみてください。

Concert Information

コンサートサロンALKAS 自主企画第11回演奏会
kokoro-Ne(ココロネ)コンサート~2本のフルートとピアノが織りなす、極上のハーモニー~

[日時]2020年11月23日(月・祝)13:30開場、14:00開演
[会場]コンサートサロン ALKAS(JR西船橋駅、京成西船駅)
https://alkas-salon.com/
[出演]kokoro-Ne:門井のぞみ(Fl,Picc)、大和田真由(Fl,A.Fl)、田仲なつき(Pf)、加藤義男(賛助出演)(Ten)
[曲目](予定)秋の唱歌メドレー、ブランデンブルク協奏曲 第5番/J.S.バッハ、Asian Dream Song/久石譲、蘇州夜曲/服部良一、他
全曲編曲:大和田真由&kokoro-Ne
[料金]3,000円(全席自由)
 

こちらのコンサートを、アンケートにご回答いただいた方の中から抽選で1組2名様にプレゼント!
ご応募お待ちしております!!
[応募締め切り]10/30(金)

※無料のアカウント登録が必要になります。

 

kokoro-Ne(ココロネ)プロフィール

kokoro-Ne (ココロネ)
門井のぞみ・大和田真由・田仲なつきによる、2本のフルートとピアノのトリオ。クラシックで培った確かな技術と表現力を基に、色彩豊かなアレンジやハイレベルな演奏で好評を博している。2007年結成当初より、ジャンルを超えたレパートリーに挑みながらも、リズムセクションや打ち込みなどを敢えて加えず室内楽トリオの可能性を追求し続けている。TPOに合わせた演奏を得意とする一方、CD・楽譜・オリジナル作品の発表にも力を入れており、オーディエンスはもとより多くのプレイヤーからも支持を得ている。
主な作品
・2009年 1st Album 「kokoro-Ne/ココロネ」
・2013年「コンサートで使えるフルートデュエット曲集kokoro-Ne編」(ドレミ楽譜出版社)初版以降も増刷を重ね、ロングセラーとなる
・2016年 2nd Album 「Microcosmos」同収録のオリジナル曲「ミクロコスモス」楽譜出版
・2017年 楽譜出版「kokoro-Ne Library」を立ち上げ、これまでに10作品を超える楽譜を発表。続々と新作発 表を控えている。
kokoro-Ne公式HP https://www.kokoro-ne.net/
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