第34回|「Time to Say Goodbye」
こんにちは! 2本のフルートとピアノのトリオ【kokoro-Ne(ココロネ)】です。オリンピックシーズンの2025-26も世界選手権まで閉幕。惜しまれつつ今季で引退、そして世界選手権で4度目の優勝と自己ベスト更新、有終の美を飾った坂本花織選手。愛でたいのにフルートで演奏しづらい曲ばっかりで、このコーナーで取り上げられなかった念願のかおちゃんプロ!2025-26 SP『Time to Say Goodbye』を取り上げます。

フランチェスコ・サルトーリ(Francesco Sartori 1957- イタリア)
ピアノとトランペットも演奏する音楽家です。「Con te partirò」以外にも、同じく作詞のルーチョ・クアラントットと組んでアンドレア・ボチェッリのレパートリーを多数書いています。逆に、それ以外のクレジットがあまり見当たらないのです(ご存じの方、教えてください)。
クラシック的な雄大なメロディとポップスを融合させて、その中にイタリアっぽい、カンツォーネの成分も感じるような、とにかく”歌がわかりやすい”作風が特徴のように思います。「ボッチェリが歌って曲が完成するように作るのが上手だなぁ」という印象です。
アンドレア・ボチェッリ (Andrea Bocelli、1958 - )
言わずと知れたテノール歌手。その魅力をポップスでも最大限に活かして活躍する世界的なヴォーカリストです。
6歳でピアノを始めますが、12歳の時にサッカーボールが頭を直撃したことで、先天性緑内障の悪化に伴い失明してしまいます。その障害を乗り越えて、音楽を続けながら博士号を取得。弁護士として働いていた時期もありました。
転機は1992年。イタリアの歌手、ズッケロの作品のデモをボチェッリが担当。それを聴いたパヴァロッティがボチェッリの才能を見出し、歌手としての道がさらに開けたそうです。
ミラノ・コルティナ五輪の開会式で『誰も寝てはならぬ』を歌っていた姿に、2006年トリノ五輪のパヴァロッティの歌唱を思い出した方も多かったのではないでしょうか。
ぱっと聴いて“ボチェッリ”とわかる特徴のある声、クラシック仕込みの歌唱力、その個性や“上手い感”だけで押さない聴きやすさが魅力。「イオ・チ・サロ(※)」「Vivo per lei」など、フィギュアでも重宝されています。
※バラード王David FosterとWalter Afanasieffとの共作です。聴き比べると、前出の“ボチェッリが歌って曲が完成する”Sartoriの作風がより感じ取れると思います。
「Con te partirò (Time to Say Goodbye)」 (1995年)
元々はボチェッリの「Con te partirò」として書かれました。1996年にサラ・ブライトマンと英語を混ぜて歌ったデュエット版が世界的大ヒット、爆売れ。別れの曲というよりは、旅立ちの要素が大きい曲です。
大きな弧を描くような旋律、ボレロのリズム、初めて聴いても脳内再生可能なわかりやすさとインパクト。今ではクラシックでもアンコールの帝王的な存在です。
とにかく曲のパワーが強い! が故に、フィギュアスケートで使用するとなると、壮大な世界観をスケーティングスキルで表現するのが難しいはずなのです。その辺りを、次項でかおちゃんプロとともに追っていきたいと思います。
坂本花織選手『Time to Say Goodbye』2025-26 SP
リンクインした瞬間、なんなら6分間練習前の選手紹介で泣きそうなんですが、収集がつかなくなるので冒頭に入ります(笑)。
羽を広げるような振り付け、ブノワ・リショーっぽい! そして、動き出すと「え、もう?」秒で爆速滑らかが始まります。急いで蹴ってる感じが一切ないのにグングン伸びていきます。すごいスピードを出しているのに微塵も大変そうに見せず、上半身を大きく優雅に使って、3連符や16分音符↔︎4分音符メロディの緩急の表現がたまりません。なんなんですか♪sole♪の伸びは!

ここまでで既に「ご馳走様でした(人’▽’。)」ですが、そのまま即3ルッツ。自然で軽い……で、更に愛でたいのが、かおちゃんの着氷後です。ジャンプの衝撃がなくて、そのままのスピードで次に行ってしまう垂涎ポイントです。
オリンピックの団体戦までは画面の左下に「ジャンプマップ」が出ていて、かおちゃんはこの線の途切れない伸び方とリンクカバーの範囲がレベチだったんです。いつの間にか表示されなくなって残念でした。
こういう難しいことをシレっと魅せるスケーティングスキルが別格で、ラストシーズンは今まで以上にゆとり感がハンパなかったように思います。
Bメロでリンクを広く駆け巡っていたのがジャッジの前で、語るようなメロディに合わせてちょっと留まる振り付けも緩急があって吸引力upのポイントです。あっという間にリンクの中央にすぐ移動。この加速が3連符に合っているもの萌えます。
Bメロの終わりでフライングから入ってサビでキャメルスピン。1番を歌っているサラ・ブライトマンの声と安定したスピンがすごく合っていて、一箇所に留まっているのに、広がりを感じます。
そして解き放たれるような♪che non ho♪からの移動距離がたまりません!本来2回しあるサビのメロディが山場(♪ソ〜#ファレソ#ファレシレ〜♪)で2回目の最後のフレーズに飛びますが、原曲を熟知していても「あれ、もう1回なかったっけ?」と後から気付くくらい編集もきれい♪
曲が2番に入ってボチェッリが登場。難しい姿勢から入る2アクセル。前後のスピードがあって2Aの飛距離も大きいから演技が途切れません。ジャンプアピールが少なくてシレっと飛んじゃうの、ほんと大好きです。いつも♪parole♪のところにお客さんの拍手が被さるのも効果音のように聞こえます(計算したのかな?)。世界選手権の時にいつもより斜めになってたんですが、グッと堪える様子もなく行けてしまうんです。そういえば、かおちゃんは転倒や大きな怪我、少なかったなぁ。なんてしみじみしちゃいました。
ここのAメロも2小節カットされてますが、また編集がきれい! 失敗の許されないSPで最後のジャンプにコンビネーションを入れる攻めた構成もグッときますが、ジャンプに入るまでの広告の流れ方よ(>ω<。`)ノ彡☆すごい爽快感です。サビに入ったところで、大袈裟に見せない3フリップの踏み切り、流れのままに跳んでしまう3トゥループ。そして、ここが♪Time(フリップ) to(トゥ)♪でハマっていて……さらにその後の足変えコンビネーションスピンがまた山場(♪ソ〜#ファレソ#ファレシレ〜♪)に合わせてポジションが変化。

本来ボチェッリのサビも2回しありますが、ここでカット。G-Dur→A-Durに転調してサラ・ブライトマンとのデュエットのラスサビです。「今から行きます」みたいなポーズからのステップは女王の貫禄!それまでの圧巻の流れに切り開く感じも加わります。エッジが深くて、上半身も恐らく極限まで使ってるんですけど、安定した重心ですごいスピードで進み続けます。曲調も、全音upの転調した上にヴォーカル2人がかりで歌ってこられたら、スケーターが置いてけぼりになりかねませんが、かおちゃんのステップはむしろ、これくらい音楽も威力がないと足りません!ヾ(≧▽≦)ノ彡☆
ヴォーカル終わりの後奏がちょっとカットされて、エンディングでレイバックスピン。難しい名プログラムがたくさんありましたが、今シーズンは特にシレっと感が増してるように見えました。台頭してくる3アクセルや4回転ジャンパーを相手に、スケーティングスキルで勝負してきたかおちゃん。単なる別れではなく、やり切って次のステップに進む姿がカッコ良い!
ここまで書くのも動画を何度も拝み、擦り過ぎと書きたい事が多すぎて原稿が進まない・・・そんなプログラムでした。かおちゃんありがとう&お疲れ様でした。今後も応援してます!
そして、今シーズンもご愛読ありがとうございました。今季は女子シングル、イタリアの作品が多めになってしまいましたが、これからもいろいろなフィギュア曲にフルートでチャレンジしていきたいと思っています。来シーズンもお楽しみに!
演奏動画
kokoro-Ne YouTubeチャンネル
曲が壮大、故にフィギュアの音源として使用するのは難しい、これはフルートも然り。できなくないですが、借り物感が満載になってしまうのです。もう一つ大きな要因は[ジャン、ジャジャジャ、ジャン]だと思ってます。無敵すぎます(^_^;)
ということで、ボレロのリズムを封印、kokoro-Neらしく2本フルートならではの絡みも活かしつつ演奏してみました。フルート1本じゃなくてよかったと心底思いました(笑)。
コンサートのお知らせ
【kokoro-Ne 19周年コンサート】
今年もkokoro-Neカラー全開のアレンジものやオリジナル曲を中心にお届けします。フィギュアコーナーでご紹介した曲も演奏予定です。ご予約お待ちしております。

[日時]7/11(土)18:30開演(18:00開場)
[会場]アコスタディオ(東京・JR「原宿駅」竹下口より徒歩2分/
東京メトロ千代田線・副都心線「明治神宮前駅」2番出口より徒歩5分)
[出演]kokoro-Ne
[料金]一般¥3,500円 メルマガ会員¥3,000 学生¥2,000(いずれも税込、全席自由)
[ご予約]https://www.kokoro-ne.net/ticket
【フルート四重奏のひととき L' atelier des Flûtes (ラトリエ・デ・フリュート)】
作編曲も手がける4人のフルート奏者が集い、アルトフルート、バスフルートなども駆使して独自のサウンドを追求します。
L' atelier des Flûtes(フルートのアトリエ)をどうぞお楽しみに・・・

[日時]5/23(土)15:00開演 (14:30開場)
[会場]リベストプラザ (JR、井の頭線「吉祥寺駅」北口より徒歩7分)
[出演]池田さく子/渡邉加奈/大久保祐子/大和田真由(Fl)
[プログラム]ボザ:夏山の一日、ドビュッシー:小組曲 (編曲:大和田真由)、ギヨー:ディベルティメント・ジャズ、ベルトミュー:猫、フランシス・レイ:男と女 (編曲:sakuko)、ピアソラ:フーガと神秘 (編曲:大久保祐子) 他 (変更する可能性がございます)
[料金]一般¥3,500 学生¥2,000(当日券はいずれも+¥500円
[チケット取り扱い店]
村松楽器販売(株)新宿店:03-3367-6000 (月曜定休)
山野楽器銀座本店5Fフルートサロン:03-5250-1062
管楽器専門店ダク:03-3361-2211 (第1、第3水曜日定休)
E-mail:happytalk2525@gmail.com

kokoro-Ne(ココロネ)プロフィール

門井のぞみ・大和田真由・田仲なつきによる、2本のフルートとピアノのトリオ。
クラシックで培った確かな技術と表現力を基に、色彩豊かなアレンジやハイレベルな演奏で好評を博している。
2007年結成当初より、ジャンルを超えたレパートリーに挑みながらも、リズムセクションや打ち込みなどを敢えて加えず室内楽トリオの可能性を追求し続けている。
TPOに合わせた演奏を得意とする一方、CD・楽譜・オリジナル作品の発表にも力を入れており、オーディエンスはもとより多くのプレイヤーからも支持を得ている。
・2009年 1st Album 「 kokoroーNe/ココロネ 」
・2013年 「 コンサートで使えるフルートデュエット曲集kokoro-Ne編 」(ドレミ楽譜出版社)初版以降も増刷を重ね、ロングセラーとなる
・2016年 2nd Album 「 Microcosmos 」
同収録のオリジナル曲「 ミクロコスモス 」楽譜出版
・2017年 楽譜出版「 kokoro-Ne Library 」を立ち上げ、これまでに30タイトルを超える楽譜を発表。続々と新作発表を控えている。
kokoro-Ne公式HP https://www.kokoro-ne.net/
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