サックス記事
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渡辺貞夫〜ジャズはもちろん、クラシックを吹いても、くっきり浮かび上がる唯一無二と呼べる音の佇まい

THE SAX vol.86

日本を代表する世界的サックスプレイヤー渡辺貞夫が、ジャズとクラシック2枚のアルバムを同時発売した。自身のルーツであるビバップをテーマにしたアコースティックなジャズ作品と、2000年にサントリーホールで開催したバッハに正面から取り組んだコンサートを記録した実況アルバムだ。正反対とも言えるタイプの違う2枚のアルバムをリリースした意図と作品完成の手応えを、いつもながら率直な言葉で語ってくれた。
(インタビュー・文:原田和典/メイン写真:岡田貴之/協力:ビクターエンタテインメント)


対照的な内容となる2つのアルバムが登場

このパワーは、いったいどこから湧いてくるのだろう。60年以上にわたって第一線に立ちながら、それでもなお「もっとチャレンジしたい、もっとボキャブラリーを増やしたい」と語る。留まることを知らない前進意欲に、ただ頭が下がるのみだ。アルトサックスの巨星、渡辺貞夫が10月25日に2作品を同時リリースした。ひとつはルーツのひとつである“ビバップ”の発展形に挑んだ6年ぶりのアコースティック・ジャズ・アルバム「リバップ」、そしてもうひとつはバッハの難曲に挑んだ歴史的コンサートの模様を収録したアルバム「プレイズ・バッハ」だ。まさしく対照的な内容ながら、両方からくっきりと浮かび上がるのは渡辺貞夫ならではの、唯一無二というしかない音の佇まいである。

 

熱望したブライアン・ブレイドとの本格共演も実現

ブライアン・ブレイド(Ds)とは、ホワイトハウスで開催されたオバマ大統領(当時)主催の「International Jazz Day 2016」でも共演なさっていますが、その頃からレコーディングの構想があったのですか?
貞夫
いいえ、もっと前です。ウェイン・ショーターのグループでのライブを見てから、ブライアンのプレイにすっかり魅了されて、彼と一緒にやりたいとずっと思っていました。それで一昨年かな、ブライアンが日本に来た時、彼にアプローチしました。最初はブライアンとクリスチャン・マクブライド(Bass)のリズムで演奏したいと思ったんですけど、忙しくて引っ張りだこのミュージシャンたちなので、その時点でクリスチャンの2017年のスケジュールはいっぱいだった。でもブライアンは5月とクリスマス・ツアーの時期なら時間が取れるというので、5月にレコーディングすることに決めたんです。ベーシストはブライアンに紹介してもらったクリス・トーマス、ピアニストはサイラス・チェスナットです。サイラスは僕が日本人のメンバーを連れてアメリカ・ツアーに出ていた1980年代の後半ごろ、確かフロリダのジャズ・フェスで初めて聴きました。そのときは恐らく、デビュー当時のジョシュア・レッドマンのバンドで演奏していました。僕の「リメンブランス」(99年)に付き合ってくれたこともあって、いいリズム・セクションの組み合わせになりそうだということで録音したんですけどね。

(続く)

 

 

渡辺貞夫リバップ

リバップ
【VICJ-61765】¥3,000(税抜)ビクターエンタテインメント
[曲目]リバップ、ルック・アヘッド、アイ・ミス・ユー・ホェン・アイ・シンク・オブ・ユー、リトル・ウィンド、ノット・ビフォア・ロング、エイト・フィフティーン、ホワイル・ユーアー・アウェイ、コール・トゥ・マインド、モニカ、ギヴ・ミー・ア・キュー、花は咲く
[演奏]渡辺貞夫(As)、サイラス・チェスナット(Pf)、クリス・トーマス(Bass)、ブライアン・ブレイド(Ds)

 
 
渡辺貞夫リバップ

プレイズ・バッハ
【VICJ-61768】¥1,700(税抜)ビクターエンタテインメント
[曲目]フルート・ソナタ BWV.1035(第1楽章/第2楽章/第3楽章/第4楽章)、フルート・ソナタ BWV.1031(第2楽章/第3楽章)、無伴奏フルートのためのパルティータ BWV.1013(第1楽章/第2楽章/第3楽章/第4楽章)、管弦楽組曲 第2番 BWV.1067(第7曲)、ポル・トーダ・ア・ミーニャ・ヴィーダ、カリニョーゾ、フルート・ソナタ BWV.1033(第1楽章/第2楽章/第3楽章/第4楽章)、フルート・ソナタ BWV.1030(第3楽章)よりジーグ
[演奏]渡辺貞夫(As)、小林道夫(Pf)

 

 

SADAO WATANABE Re-Bop Night
12月8日(金)横浜市 神奈川県立音楽堂
12月9日(土)軽井沢町 軽井沢大賀ホール
12月10日(日)西宮市 兵庫県立芸術文化センター KOBELCOホール
12月12日(火)札幌市 わくわくホリデーホール
12月14日(木)岡山市 おかやま未来ホール
12月15日(金)大阪市 ビルボードライブ大阪

 

SHISEIDO presents Christmas Gift vol.25
SADAO WATANABE Re-Bop Night

12月16日(土) 渋谷区 Bunkamura オーチャードホール
[出演]渡辺貞夫(As)、サイラス・チェスナット(Pf)、クリス・トーマス(Bass)、ブライアン・ブレイド(Ds)
※詳細はhttp://www.sadao.com/

次ページにインタビュー続く
・ビバップから抜け出した新しい世界を表現したかった
・バッハをストレートに演奏しながらスウィング感も
・ジャズ・アレンジじゃなくて、ちゃんとバッハを演奏したかった

登場するアーティスト

渡辺貞夫
Sadao Watanabe

1933年2月1日栃木県宇都宮市生まれ。チャーリー・パーカーに憧れ、1951年に上京してプロとしての活動を始め、1953年に秋吉敏子(Pf)のグループに参加して注目を集める。1961年に初リーダー作「渡辺貞夫』をリリース後、バークリー音楽院に留学。その後チコ・ハミルトン(Ds)やゲイリー・マクファーランド(Vib)などのグループに参加し、ブラジル音楽などにも触れて自身の音楽性を確立していった。1965年に帰国。1966年に「ジャズ&ボッサ」をリリースして日本にボサノヴァ・ブームを巻き起こした。1970年代から海外にも進出し、1970年代後半からはフュージョン的なサウンドにもアプローチ。1978年の「カリフォルニア・シャワー」は大ヒットを記録した。1983年に全米でもリリースされた「フィル・アップ・ザ・ナイト」は“ラジオ&レコード”誌のジャズ・チャートで1位を記録。その後も日本最高のアルトサックス奏者として精力的な活動を続けている。

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