リード1箱10枚を全部使えるようにするプロジェクト

第3回 | 大公開! 10枚全部使えるようにする方法!! その2

【上管の音を調整します(第2工程)】

■作業する前に……

実際に作業する前に一つ注意事項を。リードの表面は根本(Ⓐ)はザラザラでも、先端(Ⓑ)はツルツルでなければなりません(右図参照)。第1工程で使った粗いペーパーの80番は第2工程では使用しません。今回からは耐水ペーパーの320番と、さらに先端の仕上げ用に800番を使用します。

 
 

チューニングのドのオクターブ下のドからソまで(※下記の五線譜を参照)の音にストレスが残り、鳴りきらない場合は、左記の縦線部分を320番で必ず左右同回数に、↓方向に5〜10回くらい削ってください。

譜例
D写真

※今回、320番のサンドペーパーを使用してリードを調整しました。320番を使う場合は、ペーパー側に付着した粉の量を確認することが大切です。“どれくらい削れたか”を確認しながら作業をしましょう。

 

開放のソの音は(ザーという)雑音が入りやすく、悩みの種ですよね。この音を綺麗にするにはずばりこれです。左記の縦線部分を320番で左右同回数、3〜5回↓方向に削ります。

ガラス板
※削るときにはガラス板を使用しましょう。

 

 
 

開放のソからネックのシ♭を鳴らしたい(※下記の五線譜を参照)、雑音を減らしたい場合は、左図の縦線部分を320番で左右同回数、触れる程度の強さで↓方向 に1〜3回削ります。

譜例

ここはスロートの鳴り、音の立ち上がりを決める重要な箇所ですが、削りすぎると“音がつまる(マウスピースとリードの間がくっついてしまう)”原因になります。先端付近はどのメーカーのリードも左右対称に完璧な厚さに仕上がっています。ヘタに手を加えるとダメにしてしまうことのほうが多いくらいなので、細心の注意を払ってください。
削っていてもし、どうするか悩んだら……止めることも大切です。一度乾かして、もう一度湿らせて吹いてみて様子を見ましょう。そこで再度考えてみること。極意は「リードを削っていて、迷ったら止める。」

 

● 今回のまとめ

今回で3度目となる“1箱10枚を全部使えるようにするプロジェクト”いかがでしたか?
リードを削るというと、ナイフを使用するイメージを持った方も多いでしょう。ですが、このコーナーではサンドペーパーを使用します。その理由はサンドペーパーを使用することにより、リードを面で削ることができるからです。その他にもサンドペーパーを使用すると、リードを削ったときに“どれくらいの面積”と“量”を削ったのかを、削った時の音と触感、さらにサンドペーパーに付着する粉で把握できるからです。これはリードの右側、左側を対象に削るときに比較しやすく、結果的にどちらかを多く削ってしまう失敗を減らすことになります。
とにかく少しずつ……が肝心。削りすぎは即OUTどころかGAME OVERです。どこをどう削ったらどうなった……という経験が一つずつ学習なので、慎重に取り組んでください。さらに大切なことは「謙虚であること」。上手くいったときは「たまたま」くらいに思いましょう。相手は自然物、天然のものなんですから。

次回は、「こんなときどうする」ということをテーマに、様々な対処法をご紹介したいと思います。それでは。

取材協力:ドルチェ楽器 管楽器アヴェニュー東京

次回更新もお楽しみに!


木村健雄さん
東京都出身。東京藝術大学、フランス国立ルエイユ・マルメゾン音楽院卒業。帰国後、ソリスト、フリーのオーケストラ、室内楽奏者として活動。とりわけE♭クラリネットからコントラバスクラリネットまでこなすスペシャリストとして国内外のオーケストラ、吹奏楽団の数多くの演奏会、CD録音、DVD録画に参加。また海外からの現代音楽祭出演招待も多く、2005年に韓国大邸国際現代音楽祭、2006年にポーランド・ワルシャワ・ラボラトリウム現代音楽祭、2007年、2008年、2014年にソウル市ディメンション国際現代音楽祭などにメインゲストとして出演。現在、アンサンブル・インタラクティブ・トキオ、東京クラリネットアンサンブル、アマデウスクインテットのメンバーとしても活躍。尚美学園大学、聖徳大学の各講師。

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