クラリネット記事
2022年1月5日@会員制サロン「レタス」

大沼博子のリード講習会

実際に調整してみよう!

ここからは、会場の皆さんと実践的に、大沼さん流リードの調整方法を教えていただきました。参加者の机にはガラス板に品番が異なるやすりが2枚と、蒸留水が用意されました。やすりの1枚は円盤で穴が6つ開いていて裏面がシールになっているので、ガラス板に貼り付けます。なぜ穴が開いているかというと、元々は壁の研磨用やすりなのだそう。ジョイントのために開けられた穴に、リードを削る際に出る粉がちょうどよく溜まるので、リードに最適なやすりとして人気があるとのことです。

大沼さん流リードの調整方法

①リードの裏面をまっすぐにする
リードの裏面に3本鉛筆で線を入れ、やすりにかけていきます。そうすると、うまく全部消えたり、消えている線と残ってる線があったり……。後者のほうは、リードが歪んでいるからムラができるそうで、まずここで裏面を整えていきます。
②リードは音によって振動するところが違う!?
クラリネットは4オクターブ弱の音域をもつ楽器ですが、なんと出る音によってリードが振動する位置が異なるそうです! 出にくい音があったら、リードの対応する一部分を小さく切ったやすりでピンポイントに削っていきます。

③先端のカーブを整える
目の細かい長方形のやすりで先端のカーブを整えていきます。よく見るとカーブが左右非対称だったり、角ばっていたりするものは、マウスピースの形に合わせて調整していきます。まるでスマッシュを打つかのような動きと速さでどんどん削っていく大沼さん。各メーカーのカーブも熟知されていて、さらに何枚削っても同じ形にできるんだとか!!!
大変興味深くあっという間に時間が経過し、リードの講習会後半も終了しました。
今回、身近で貴重なリード職人である大沼さんのお話を伺い、また実際に南フランスのリードの産地へ視察された際のお写真を見せていただき、今手元にあるリードはこんなにもいろいろな旅をしてここにいたのか、と感慨深く思いました。今まで、届いたばかりのリードは「新しいリードだ!」と言っていましたが、葦が育ち伐採されたのちリードとして製造され、私の手元に届くまでは5年以上の歳月が経っています。2~3年かけてカラカラに乾燥させ、良い材質だと判断されたものだけがリードの形となり、削りに削られ音が良く鳴るか確かめられ……と、様々な試練を乗り越えたリード、それが私の手元にあるリードたちでした。
この講習会を終えた後、生産者から製造者までリードに関わるすべての人たちのおかげで、私たちは音を鳴らすことができるんだと改めてわかり、感謝なしには演奏することができなくなりました。今後はリード一枚一枚の個性を理解し、調整方法も身につけてより大切にリードを使っていきたいと思います!

文章:添石紗静 尾方優佳

 

*リード講習会の様子はこちらのオンラインサロンから会員限定で公開されます。
 https://community.camp-fire.jp/projects/view/341327

 

講師:大沼博子
常盤木学園高等学校音楽科卒業。尚美学園大学卒業。クラリネット・アンサンブル「プチ・パヴィヨン」のメンバーとして様々な分野で活動。クラリネットを田中正敏、岸 洋子、G.V.ブオノマーノ、室内楽を浜中浩一、木村健雄に師事。日墺文化協会主催「フレッシュ・コンサート」に出演。東日本大震災で失われた楽器を支援する「ウインドバンド・フォー・グリーン」キャンペーンに参加し被災地へ支援活動を行う。ドイツ・ハンブルグ音楽院卒業。NDRエルプ・フィルハーモニー管弦楽団アカデミーで演奏。ハンブルクを拠点とする室内楽オーケストラnuova consonanzaで病気と闘う子供達の支援コンサート活動開始。2018年よりThe Young Classxでクラリネット講師を務める。2019年イタリアのフィラデルフィア市主催室内楽国際コンクールで優秀賞受賞。同年、プラハ芸術アカデミー主催クラリネット・デイズ・マスタークラスを受講、同アカデミー主催のプラハの春コンサートホールで開催されるコンサートに出演。現在、ドイツ・リューベック在住。

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