フルート記事
THE FLUTE vol.179 close up

郷愁や哀愁を超越した、“音楽の旅”│古谷まさみ&佐藤紀雄

日本各地でコンサートを行なってきたフルーティスト・古谷まさみと、アンサンブル・ノマドの音楽監督や指揮者としても知られるギタリスト・佐藤紀雄によるデュオアルバムがリリースされた。「フルートとギターによる叙情紀行」―叙情的な美しさ”を届ける音楽の旅へといざなう、作品の数々。長いブランクを超えて活動する古谷と、現代音楽家としての印象が強い佐藤とのコラボレーションが作り出す音楽は、温かく情熱的に、ときに哀切に、叙情に訴えかけてくる。
取材協力:株式会社トーンフォレスト、近江楽堂

30年を経て手にしたフルート

古谷さんは、長いブランクを経て演奏活動を再開されたそうですね。
古谷
出産や介護などいろいろなことが続いて演奏とは遠ざかったまま、30年近くが経っていました。その間は楽器がどこにあるのかもわからなかった状態で……。6年前に活動再開しました。
30年ですか。それでもコンサートやアルバムリリースなどでこうして活躍されていることは、いろいろな事情で音楽を中断している人にとっても励みになるでしょうね。
古谷
すっかり音楽から遠ざかってしまっていましたが、やっと自分の時間ができたときに、「ああやっぱりフルートをもう1回やろうかな、やりたい」と思ったんですよね。
再開後、旧知の佐藤さんに久しぶりに連絡を?
佐藤
去年のことでしたね。突然であまりに久しぶりだったので、正直びっくりしました。そして本当に嬉しかったですね。もう一度音楽を再開しようと決めて楽器を出して、一緒にやりたいと連絡してきてくれたことが。
古谷
快諾してくださって、私もとても嬉しいやらほっとするやら……音楽の世界から遠ざかっていた期間があまりに長かったし、「できるの?」と言われても仕方がないと思っていたので。懐の深さに、感謝の気持ちでいっぱいです。
佐藤
実際に合わせをしてみたら、しっかりしたきれいな音だった。何も不安はなかったんですよ。
もともとお二人のご縁は、現代音楽を通してのつながりだったのですね。
古谷
小泉浩先生に師事していたこともあって、学生時代から現代音楽に興味を持っていたんです。小泉先生を通じていろいろな演奏家の方々とかかわりを持たせていただく機会もあって、そんな中でご縁をいただきました。

 

次のページの項目
・無限の可能性を秘めた組み合わせ
・音楽の根源は変わらない

 

CD information

MIKAZUKI
フルートとギターによる叙情紀行
【TFCC-2005】トーンフォレストレコード
[価格]¥2,800(税別)
[演奏]古谷まさみ(Fl)、佐藤紀雄(Guit)
[曲目]レスピーギ:リュートのための古風な舞曲とアリア第3組曲より イタリアーナ/シチリアーナ、ドップラー:ハンガリー田園幻想曲、ラヴェル:ハバネラ形式の小品、ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ、フォーレ:ファンタジー、ヴィラ=ロボス:ブラジル風バッハ第5番よりアリア、グルック:精霊の踊り、ピアソラ:「タンゴの歴史」より ボルデル1900 /カフェ1930 /ナイトクラブ1960、プジョル:「ブエノスアイレス組曲」よりパレルモ

 

Profile
古谷まさみ
古谷まさみ
12才よりフルートを始める。武蔵野音楽大学音楽学部器楽学科卒業。東京・青山で4回のリサイタルを開催後、東京、川崎、出身地の福井を中心に活発な演奏活動を行う。2016年にはハープとのデュオ「メルフィーユ」を結成。各地より招聘され演奏を行うなど、様々な形態のアンサンブルにも精力的に取り組んでいる。大久保功治、小泉浩、青木明、斎藤賀雄、上野星矢の各氏に師事。

佐藤紀雄
佐藤紀雄
ギター演奏と指揮活動を広範囲に行なう。1997年にアンサンブル・ノマドを結成し音楽監督として毎年定期演奏会を開いてきた。これまでに様々な国から招かれコンサート、録音、マスタークラスを行なってきた。1990年京都音楽賞(実践部門賞)をはじめ、多くの受賞歴を持つ。桐朋学園芸術短期大学、フェリス女学院大学、日本大学芸術学部で後進の指導にあたっている。
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