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“いま”という瞬間を、悔いの残らない音楽に

THE FLUTE vol.179 Cover Story

東京佼成ウインドオーケストラでの活動が、20周年を迎える。今年のコロナ禍はもとより、世の中全体が未曾有の出来事を体験してきたこの20年は、激動の時代だったかもしれない。そんな中、音楽活動で歩んできた道のりや、様々な節目で感じてきたこと……あらためて振り返りながら語ってもらった。一人の演奏家として、そして吹奏楽の最前線で活躍してきたフルーティストとして、後進へのメッセージも込められたインタビューとなった。  
写真:森泉 匡

“出したい音”のイメージ

今年はコロナ騒動で、音楽家にとっては前代未聞の受難の時期でもありました。佼成ウインドオーケストラのメンバーとしていつも全国を飛び回ってきた前田さんも、かつてない過ごし方をされたことと思います。
前田
そうですね。これまでずっと月に半分も家にいないくらい、出張続きの生活を続けてきましたから、ここはもうむしろとことん「おうち時間」にこだわろうと開き直って過ごしました。急にずっと家の中で過ごすようになったら、「あ、私こういう暮らしも好きかもしれない」とあらためて思いました。もちろん、コンサートがなくなったり音楽活動がすべてストップする中での不安はありましたが、20年ぶりに本来の自分を知ることになり、気づきを得たな、と。
もともと子どもの頃からインドア派で、家にこもってイラストを描いたり何か作ったりするのが好きだったんですよね。こんなふうに各地を飛び回ることになるなんて、子ども時代の私が知ったら信じられない生活だと驚くと思います(笑)。
楽器との向き合い方も、これまでにないものになったのではないですか?
前田
家でできること、こういうときだからこそできること、今しかできないことをしようと考えて、これまでなかなか取り組めなかった練習に時間を使うようにしました。 自分自身のこと以外では、普段から吹奏楽のコーチとしてお邪魔していた中学校や高校の生徒さんたちのために何ができるかを考えていました。学生にとってのこの一年間というのは、大人にとってのそれとはいろいろな意味で重みが違いますよね。今年という時は、たった一度だけの大切な時間。できる限りその時間が無の時間にならないように、練習動画を送ってもらってレッスンをしたり、家で音出しができない場合は音を出さなくてもできるトレーニングを動画で送ったり、自分で出したい音のイメージを絵にしてもらったり……そんなふうに工夫していました。
音を絵にする試みでは、目に見えない“音色”というものを自分なりのイメージで表現することがテーマでしたが、皆本当に想像力を豊かに膨らませて、丁寧に一生懸命に描いてくれて。自分の出したい音についてこんなに向き合って想像してくれたんだな、ということが伝わってきて、生徒たちも描き出したら夢中になったと言ってくれて、すごく感動した瞬間でした。

次のページの項目
・縁が運んだチャンス
・音楽の力とは……
・自分ととことん向き合うこと

Profile
前田 綾子
Ayako Maeda
神戸女学院大学音楽学部をハンナ・ギューリック・スエヒロ賞受賞し卒業。読売新人演奏会に出演。卒業後1994年より渡仏。パリ・エコール・ノルマル音楽院、フランス・ロマンヴィル国立音楽学校、フランス・オルネー国立音楽学校、パリ20区立音楽院を全て満場一致の首席一等賞を得て卒業。エコール・ノルマルにおいて「最高栄誉賞“スペシャル”」受賞。留学中、パリUFAM国際コンクール、イタリア・クレモナ国際音楽コンクール、パリ・ルテス・フルートコンクール、L.WURMSERパリ・フルートコンクールに優勝。各地でガラ・コンサート等に多数出演。これまでに曽根亮一、佐久間由美子、クリスティアン・ラルデ、工藤重典、ブノワ・フロマンジェ、パトリック・ガロワの各氏に師事。2001年より東京佼成ウインドオーケストラ・フルート奏者。また、洗足学園音楽大学にて客員教授として後進の指導にあたっている。2012年度日本管打・吹奏楽アカデミー賞(演奏部門)受賞。

前田綾子フルートレッスンチャンネル
https://www.youtube.com/channel/UC_ZEUadxkW3cXZKCzeNagYg

なかなかレッスンが受けられない人にも役立ててもらえるようにと開設したというYouTubeチャンネル。吹奏楽のレッスンを中心に、今後も更新していくとのこと

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カバーストーリー
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