THE FLUTE vol.180 Cover Story

大切なのは、自分の強みを知ること

2021-02-10

2017年の神戸国際コンクールでの優勝者として、一躍その名が世界に轟いた。しかし、弱冠19歳でルクセンブルクフィルハーモニー管弦楽団に入団して以来、彼女は若い頃から着々とキャリアを積み重ねてきていた。
「神戸は最初の国際コンクールで、優勝を経験し人生最後となったコンクールもまた神戸」と話し、日本の漫画やアニメのファンでもあり目下日本語を勉強中なのだという。
そんな彼女は、新たなステージに踏み出していた。フルーティストとして、そして一人の人間としても─。
写真：Sebastien Grebille　インタビュア・翻訳：竹内あすか（フルート奏者）

別の人間になったような…特別な体験

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現在は、どんなふうにお過ごしですか？コロナ禍の中で、オーケストラやその他の音楽活動はどうなっていますか？

ブレグ

他のオーケストラと同じように、私の所属するルクセンブルク・フィルでも奏者間は2メートルの距離を空け、小編成で演奏できるベートーヴェンなどのプログラムが特別に組まれました。そして私は11月から家で安静にしているようにとオーケストラ側から言われました。というのも私は現在妊娠していまして……コロナウイルスへの心配があるので、本来の産休よりも早く休めるようオーケストラが手配してくれました。現在は自宅でオンラインレッスンを行なったり自分のための練習をゆっくりとしています（3月の終わりに出産予定です）。

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昨年から音楽家はどの国でも大打撃を受けましたが、この期間どんなことを感じていましたか？

ブレグ

ありがたいことに国営のルクセンブルク・フィルに所属しているため、直接的な打撃は受けませんでしたが、世界中のフリーランスの音楽家のことを思うとこのひどい状況には心が痛みます。
ロックダウンの時期はもちろん在宅していましたが、インスタグラムなどソーシャルメディアでの仕事で忙しくしていました。しかし発信するだけではなく、ベルンハルト・ケレス（ウィーン・コンツェルトハウスの元芸術監督）による｢BE YOUR OWN MANAGER｣というオンライン講座を13週間に渡り受講しました。これはクラシック音楽家のセルフマネジメントについての講座で、宿題もありとても充実していました。もちろんフルートの練習もしていましたが、自身のキャリアについて熟考する時間を持てたことは大きな収穫でした。
ライブではないコンサートやレッスンについて否定的な意見もありますが、インターネット上で世界中の人に発信できるということは、音楽の未来にも良い影響を及ぼすと私は考えています。もちろんコンサートホールで聴衆を前に演奏したいと思いますが、ネット配信したコンサートに世界中からコメントをもらえてそれに返事ができる、という新しいコミュニケーションもまたとても面白いものです。

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・未知の世界への冒険、そして闘い

Profile

エレーヌ・ブレグ
Hélène Boulègue

フランス生まれ。ナクソスよりアンドレ・ジョリヴェの全作品集を現在2枚発表しており、その演奏はル・モンド紙やBBCマガジンにて「音色とテクニックを驚くほど自在に操るブレグの魂の献身により、ジョリヴェ作品を美しく巧みな解釈で新たに創造した」などと賞賛されている。昨シーズン、台湾とスウェーデンでのデビューを果たし、また国際コンクールの審査員としても登場した。ジョリヴェ全集の第2巻を2020年3月に発売、ピッツィカート紙のスーパーソニック賞を受賞した。2017年神戸国際フルートコンクール優勝及び2015年プラハの春国際コンクール第2位。日本でソロリサイタルのほか東京室内管弦楽団や神戸市室内管弦楽団とソリストとして共演するなど度々登壇している。
弱冠19歳でルクセンブルクフィルハーモニー管弦楽団に合格。さらにドイツ南西放送交響楽団の首席フルートをはじめ、ベルリンフィル、ロッテルダムフィル、ムジカエテルナ、ヨーロッパ室内管弦楽団などにも招聘されている。後進の指導にも情熱をかたむけ、レッスンを提供するだけでなく、様々なソーシャルメディアのチャンネルを介して多くのフルート愛好家とコミュニケーションを取っている。ルクセンブルクフィルの教育プログラムでは、子ども向け参加型コンサートを企画するなど、演奏家の枠にとらわれない活動を展開している。趣味はバドミントンと日本語のレッスン。