フルート記事
THE FLUTE vol.178 Cover Story

ただ、ベストな演奏を貫くこと 秋元万由子

神戸国際フルートコンクールの2021年開催が決定した。2017年の前回大会で、日本人として唯一の入賞者となった秋元さんは、現在28歳。高校1年生の時に渡米し、その後ヨーロッパへ。ドイツやスイスで学び、ミュンヘン音楽大学大学院に在籍した後、現在もミュンヘンに居住する。神戸では1位が2人、3位が3人という異例の結果となる中、4位に入賞。ジュネーブやミュンヘンといった国際コンクールでの入賞歴も持ち、今後ますます国際舞台での活躍が期待されるホープでもある。
次回神戸国際コンクールは、数年越しの存続の危機、そしてコロナ禍が続く中での開催決定となった。世界的奏者を多数輩出してきた貴重な場の存続を願う意味も込め、今回あらためて秋元さんを迎え、当時のエピソードや今後への思いも含めて話を聞いた。  
写真:森泉 匡

“ウィズコロナ時代”の音楽家

ちょうどこのタイミングで帰国されていて、実際にお会いすることができたのでラッキーでした。海外との行き来はできるようになったものの、入国するのにいろいろ大変だったでしょう?
秋元
はい。到着してから検査を受け、さらに2週間の自宅待機を経てやっと自由の身になりました。
お住まいのドイツでも、この春からはすべてがストップしていたと思いますが、どんなふうにお過ごしでしたか?
秋元
一人で家に籠もる生活でした。スーパーとドラッグストア以外は開いていないし、人とも会わず……でも、ポジティブに良い機会だと考えるようにして、今まで興味があったけれどできなかったことを勉強してみようと思うようにしました。フランス語や、音楽以外の分野の本を読んだり。今までずっと音楽漬けでやってきたので、ほかの分野の知識も広げていけたらいいな、とずっと思っていたんです。生物学とか歴史とか……。
もともとそういうことに興味が?
秋元
そうですね。高校時代から、生物学の中でも遺伝に興味を引かれたりして、勉強してみたら面白そうだな、と思ったりしていました。
あとは、こういう状態でもできる仕事って何だろう、と考えましたね。今こうなってみて感じるのは、演奏一辺倒にならず、いざとなったら別の得意分野で仕事ができるようにしておくことが必要だということ。私の場合は、語学がそれにあたると思うので、仕事の選択肢として持っておけるようにしなければ、と考えたりしていました。
ウィズコロナ時代と言われる中、音楽家も意識を変えていくことが求められているのかもしれませんね。
秋元
はい。本当にそう思います。ひとつに絞らずに複数の選択肢を持っておくことが、いざという時に役立つ手段になるのだと感じた、今回の出来事でした。

次のページの項目
・言葉の壁、文化の違い
・ファイナリストたち
・コンクールを支える人々の存在
・充電期間に、音楽以外の知識を

Profile
秋元 万由子
Mayuko Akimoto
東京都出身。第9回神戸国際フルートコンクール第4位入賞のほかに、 ジュネーヴ国際音楽コンクール特別賞やミュンヘン国際音楽コンクール特別賞「アリス・ロスナー賞」など、国内外のコンクールで数々の賞を受賞する。タングルウッド音楽祭ヤング・アーティスト・オーケストラ、フライブルク 歌劇場オーケストラ、ルツェルン交響楽団(研修生)、PMFオーケストラアカデミーにてオーケストラの経験を積む。2014年よりユンゲ・ドイチェ・フィルハーモニー管弦楽団団員。ミュンヘン音楽大学大学院にてアンドレア・リーバークネヒト氏に師事した後、現在もミュンヘンに居住。
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