フルート記事
THE FLUTE 139号 Close-Up2

マーク・グローウェルズ

THE FLUTE139号に掲載したマーク・グローウェルズさんのインタビュー。編集者がお会いしたのは2度目だったが、いつもフレンドリーな笑顔で接してくれる、礼儀正しく明るいベルギー人です。ここでは誌面に掲載できなかったことを公開しましょう。

 

ピアソラの名曲『タンゴの歴史』を献呈され、初演したグローウェルズさん。アグレッシブなフルートから奏でられるのはクラシックだけでなく、ジャズ、タンゴなど幅広い音楽です。そのために普段はどんなトレーニングをしているのか訊いてみると──
「ハッハッハ!もう知られてしまっているから困ったな!(笑)」
と大笑い。でもシリアスな顔になって、ザ・フルートの読者のために答えてくれました。
「確かに僕は多くの人がするような“デイリー・エクササイズ”をしないのです。自分でももう少しそういったことをしたほうが良いのかも、と思うことはあるのですが……。ただいろいろな国や土地を飛び回って演奏をする上ではなかなかそんな時間が取れないのでね。もし時間が余ったりすれば、練習するのはやはりモイーズの“ソノリテ”でしょうか。跳躍の練習をタンギングなし、横隔膜からのアクセントだけで吹いたり、オクターブ練習をしながらわざと鼻からブレスを取ったりします。どちらかといえば、呼吸、ブレスの取り方を整えるためのウォーミング・アップになりますね」

ヨーロッパだけでなく、アメリカ、アジアと世界を飛び回っているグローウェルズさん。それだけに体調管理も大変なはずです。
「フルートを毎日吹くことが体調管理かな! 大きくブレスを取りながら楽器を吹くのはとてもいい運動でしょう? 僕は怠け者なので仕事をしながらさらにジムへ通って運動したりするのは大変過ぎて……(笑)。実際に、コンサートの回数が多くて忙しい時期のほうが、体調がよく感じるのです。たまに次のコンサートまで長く日程が空いたりして休みを取ると、体が固まっていつもの体調ではないと感じるようになってしまいます」

マーク・グローウェルズ

グローウェルズさんのパートナーはミヤザワフルートの9Kです。実はまったく同じものを2本持っているとのこと。そのわけを訊いてみると──
「使っている楽器は、前回の来日時と変わっていません。1本目はもう7~8年でしょうか、そして予備として作ってもらった2本目ももう5年になります。2本を同時に使っているとはいえ、今までに一度もメカニズムのトラブルがなかったのは驚異的です。これまで使ってきたどんなフルートよりもメカニズムが安定しているので、フルートを持っていろいろな国を旅して回る自分にはとても頼りになります。これはやはりこの最新型のブローガー・メカニックの恩恵が大きいでしょう。特に右手側のメカニズムがピンレスなのに重量がさほど重くない、というのはこのミヤザワのブローガー・メカニズムの特徴ですからね。以前使っていたメーカーでもブローガー・メカニズムが選択できたのですが、重くなり音色にも影響が出てしまうので、あえてブローガーにしませんでした。
最近は9Kの管に18Kのリップ・ライザーが付いた頭部管も試しています。ただ、リップ・ライザーが18Kになっただけでも、以前よりウォーミングアップに時間がかかるようになったと感じます。やはり9Kの持つバランスは、他の材質では得がたいものがありますね。シルバーのようにしっかりと鳴り、その上でゴールドのブリリアントさも兼ね備えている、自分には一番の材質です」
とミヤザワフルートに愛着と信頼を持っているとのことでした。

ザ・フルートの読者へのオススメの練習を最後に聞きました。
「アマチュアもプロも同じ音楽、曲を演奏する以上は一緒だと思います。楽しんでできるのならば、プロと同じ練習をして構わないでしょう。アマチュアの方々は時として自分たちプロフェッショナルよりも音楽を愛しているものです。アマチュアだから、と制限を付けるなんてナンセンスですよ!」


2015年には日本を代表するギター奏者、荘村清志さんと日本で大規模なツアーが予定されているグローウェルズさん。今まで訪れたことのないような地方にも行くそうなので、荘村さんとのアンサンブルを聴きに行ってみては?


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