フルート記事
THE FLUTE vol.169 

次号予告「吹いてみたい人に贈る「ケルトの笛」の吹き方講座 」

「モダンフルートで演奏する アイリッシュ、ケルト音楽の6つのコツ」

THE FLUTE168号特集の続編となるPart2は、レッスン動画などを含め、誌面とフルートオンラインの連動でお送りします。本誌記事に引き続き次号でレッスンをしていただく畑山さんに、“モダンフルートでアイリッシュ、ケルト音楽をカッコよく演奏するための装飾音”についてポイントを説明してもらいます。

 

Navigator:畑山智明

ケルト音楽に興味を持った方は、フルートで伝統音楽を吹いてみたい! とお思いではないでしょうか。
ケルトの伝統音楽には楽譜を使う習慣がないため、目で見て、耳で聴いて、そらで吹けるようになるまで繰り返し練習します。また、クラシック音楽のように基礎練習をしたり、簡単な練習曲から難しい曲へ順番に練習してゆくという道筋がないため、楽譜を使って演奏をしている方には、とっかかりがつかみにくいと感じることでしょう。そもそも楽譜がない音楽ですから、アーティキュレーションや装飾音や変奏は演奏者にまかせられています。とはいえ雰囲気で演奏すればよいというわけではなく、演奏習慣の理解や趣味の良さが必要とされています。

伝統音楽の演奏習慣を誌面や楽譜だけで伝えるのは矛盾したことではありますが、ここでみなさんのフルートを「ちょっとケルト風」にするミニ・レッスンをしてみましょう。アイルランドの伝統音楽ではたくさんの種類の装飾音が使われていますが、今回はその中から6つをお教えします。

 

1前打音

メロディの1つ下の音を素早く挟みます。こうすることで、その音を強調する効果があります。フレーズの始まりや、小節の1拍目などの強拍、フレーズの中の最も高い音などに使うと効果的です。 前打音の長さを調節することで、効果の強弱を変えることができます。

 

 

2シングル・トリル

トリルというと指孔を連打する装飾ですが、1回だけ指を打つので、「シングル」トリルです。メロディの1つ上の音を素早く挟みます。装飾がつけられた音を強調する効果があります。どこにつけてもおかしくはなりませんが、1拍目などの強拍、フレーズの中の最も高い音などに使うと効果的です。 トリルの長さを調節することで、効果の強弱を変えることができます。

3フォール

メロディが下降するときに、1つ上の音を経由して降ります。

 

4カット、5タップ

同じ音程の音が2音以上連続するとき、タンギングで区切るのではなく、それらの音をタイでつないで指で区切ります。その方法には、「押さえている指を素早く上げて再び下げる」カットと、「押さえている指のすぐ隣の空いた指孔を軽く叩く」タップとがあります。どちらを使ってもかまいません。指で区切るときは、 タンギングと同じように聞こえるタイミングで区切ります。祭り囃子の笛をイメージする方もいるかもしれませんが、タンギングができないバグパイプの演奏法が元になっています。

 

6上がるカット

メロディが上がる変わり目に素早く上の音を挟みます。 上がった時の音を強調する効果があります。1拍目などの強拍を強調するときに用いられます。

 

 

ここでご紹介したのは演奏のルールではなく、あくまで習慣です。つまり「この時は必ずこうする」のではなく、「こんなふうにしてみるといいかも」というアイデアを提供しているにすぎません。装飾音とは文字通り「音楽を飾る」ためのものですから、飾ってもよいし、飾らなくてもよいわけです。

絵に例えると、1種類の装飾音は絵の具の1色にあたります。旋律をそのまま演奏するのは、黒い鉛筆や墨で絵を描いているようなものです。それに色を足してゆくと、カラフルになりますね。たくさんの色を使うと、それだけたくさんのことを表現できます。しかし単にカラフルなだけでは、モノクロームの絵よりも優れていることにはなりません。水墨画やペン画の白と黒だけでも素晴らしい世界を表現できますし、色使いのセンスが悪ければ、せっかくの絵を台無しにしてしまうことだってあるのです。

具体例がなく少しわかりにくいかもしれませんが、Part 2では日本でも知られているアイルランドのメロディを例に、これらの装飾を練習してみましょう。
この講座でケルト音楽の演奏に興味を持った方は、YouTubeの「ケルトの笛チャンネル」を検索してみてください。ケルトの笛の吹き方を動画でわかりやすく解説しています。関西や名古屋では、モダン・フルートでも受講可能なレッスンも開催していますので、お問い合わせください。それでは次号をお楽しみに!

「ケルトの笛チャンネル」 https://celtnofue.com/play/video/channel

上記レッスンのほか、アイリッシュ、ケルト音楽を楽しむためのコンテンツをWEBでお送りします。

●アイルランドの伝統音楽「ジグ」を演奏してみよう!
●“ケルトの笛”の選び方
●はじめてのティン・ホイッスル
●あのヒット曲をフルートで

……など、“吹いてみたい人”のための企画がいっぱい。お楽しみに!


フルート奏者カバーストーリー