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いま、湧き上がるムーブメント アイリッシュ、ケルトの音楽シーン

THE FLUTE vol.168

THE FLUTE168号特集では、アイリッシュ、ケルト音楽を歴史や文化も含めて紹介。アイリッシュ・フルートやティン・ホイッスルなどの“笛”が大きな役割を果たすこのジャンルの音楽を、日本でリードするプロ奏者たちがナビゲートしてくれます。(以下、THE FLUTE168号記事より抜粋)

 

いま、湧き上がるムーブメントアイリッシュ、ケルトの音楽シーン

Interview:豊田耕三

日本の若い世代を中心に今アイリッシュ、ケルト音楽が広がり、ちょっとしたムーブメントになっているという。その分野の第一線でフルーティストとして活躍し、国内のブームを牽引する火付け役の一人でもある豊田耕三さんに話を聞いた。

 
――
日本でこの分野の音楽が盛り上がってきたと感じるようになったのは、いつ頃からでしょうか?
豊田
学生向けのフェスティバルを10年くらい前に立ち上げたんですよ。「Intercollegiate Celtic Festival」( インターカレッジエイト・ケルティック・フェスティバル)という名前で、最初は30人くらいの規模から始まり、芸大のサークルの合宿の延長線上みたいな感じでスタートしました。今年で10回目になります。午前中は楽器、午後はダンスのワークショップ、夜はダンスパーティや交流会をやるというスタイルで、3日間の期間中はギッチリと予定が詰め込まれているんですが、3月の平日開催なんですよ。だから自然と学生が多くなる。学生の春休みですから。
回を重ねるうち、地方から一匹狼的にやってきていた学生たちが、自分の大学でもやりたいといってサークルを立ち上げるようになったりして……そんなサークルがあちこちにでき始めたのが、5年くらい前からです。今は東大、早稲田、慶応、つくば、といった大学にもサークルができていますし、地方でも信州大なんかは100人規模のものになっています。岩手、広島、京都……といった地方にも、活動がさかんな大学があります。
ICFも最初のうちは楽器メインでついでにダンスも、という感じだったのが、ここ1、2年はついにその関係がひっくり返って、楽器よりダンスのほうに夢中になっている学生のほうが多いかもしれないという状態です。
ここまで若い人たちが熱狂的になるというのは、アイルランドでもない動きです。「いつかそういう日が来たらいいな」と漠然と思っていたものが本当にそうなるとは……! という感じです。アイリッシュという音楽は独特のゆがみのあるリズムを持っていて、ものにするのに時間がかかるものなんです。でもダンスを夢中になってやっている今の子たちをみていると習得がとにかく早い。「2年でここまで?!」というレベルです。
――
フェスティバルに参加する若い人たちと交流する中で、感じることがあるそうですね。
豊田
今アイリッシュミュージックを盛り上げている若い世代の特徴というのは、愉しみ方がより伝統的なスタイルに近いな、と。要するに、人に見せたり聞かせるんじゃなくて自分が楽しむことが主体になっている。だから、音楽のレベルが高くてもプロのミュージシャンを目指すとかそういう方向にはあまりいかないんです。それを“突き抜けた存在が出てこない”と捉える向きもありますが、僕は決してそうではないと思っています。価値観そのものが違う気がします。
ですが、若い人は圧倒的な情報量を持っていますから、僕たちの世代と比較してもスタートラインの位置が全然違います。そういう人たちがこのジャンルを盛り上げてくれているのはすごく嬉しいことですし、この先が楽しみでもあります。
 

THE FLUTE168号インタビューより抜粋しています。雑誌にはこのほか、豊田さんがこの音楽を始めたきっかけやケルト、アイリッシュ音楽のセッションについて、またどんなレッスンをしているか……などの話題を掲載しています。ぜひご覧ください。

 

豊田さんに聞きました!
アイリッシュ・フルート と ティン・ホイッスル

木製:(大きいほうから)B♭管、C管、D管、E♭管。D管がいちばんよく使うトラディショナルな楽器。

樹脂製:豊田さんは初心者におすすめしているとのこと。価格帯は木製の半分以下と素材によって開きがあるが、廉価なものだと樹脂製のほうが品質が安定しているのだとか

 

Irish Flute アイリッシュ・フルート
とてもプリミティブな楽器なので、それなりに身体的な負担もあります。重量もありますし、穴を直接押さえるので感覚を研ぎ澄まさないといけない。にもかかわらず、伝統的な音楽の中ではトップスピードでずっと吹き続けるので、最初は押さえられない人や指が回らない人もいます。息が苦しいという人も多い。だから僕のレッスンでは、半分くらいは、いかに体を楽に使って演奏するかということに時間を使います。

 

Tin whistle ティン・ホイッスル
吹けば音が簡単に出る楽器です。でも人によって全然音色が違うし、逆に頭の中で出したい音をイメージできないと、音が作れない。フルートだと、まずは音を作るところに苦労するし、他の楽器でもだいたいそうですが、その音を作るところで終わっちゃうことが多い。でも実際にはその先があって、口や構えは前提の土台。ティン・ホイッスルを演奏するときは、頭の中で出したい音をできるだけはっきりイメージして、そこに身体が吸い付くように自然に動き出すということを繰り返し誘導します。本来はどんな楽器でもそうでなければいけないと思いますが、もともと別の楽器をやっている人も、それを突き付けられるんですよ。シンプルなのに奥深い楽器です。

 
プロフィール
豊田耕三 
とよた こうぞう 東京芸術大学音楽部楽理科卒業(音楽民族学)、同大学大学院音楽研究科修士課程(音楽教育)。 O’Jizo、Toyota Ceili Band、にしむくさむらい、北斎カフェオーケストラ、Celt Quattro、(e)Shuzo Band主宰。Paddy Field、ケーリーバンドK:Reunion、詩と音楽のコラボレーショングループVOICE SPACEに所属。日本人として初めてオール・アイルランド・フラー・キョールのコンペティション(フルート シニア、フルート スロー・エアー、ティン・ホイッスル シニア、ティン・ホイッスル スロー・エアー、デュエット、トリオの各部門 )本戦に出場。アイルランド国内の複数のフェスティバルに参加。国営放送を始めとする各種メディア[テレビ、ラジオ、新聞等]に取り上げられ、またフェスティバル中の複数のコンサートにも出演。2016年、Toyota Ceili Bandを率いてアジアから初めてのケーリーバンドとして、フラー・キョールのケーリーバンドコンペティションに出場。ティン・ホイッスルのスローエアの部門で3位入賞。これもアジア人として初の入賞となる。アイルランドの国宝級バンドThe Chieftainsのコンサートに出演し、特にアイリッシュ・フルートの第一人者Matt Molloyと共演。地元千葉県船橋市の二宮神社のお囃子神楽連にも所属し、篠笛を中心に伝統芸能の担い手としても活動中。読売・日本テレビ文化センター講師(ティン・ホイッスル講座)。
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