クラリネット記事
The Clarinet vol.67 Close Up-2

師弟対談 リチャード・ホーキンス×ブルックス・信雄・トーン

世界中で活躍する若きオーケストラメンバーや音楽大学教授らを育ててきたリチャード・ホーキンス氏は、自らの名前を冠したマウスピースでもよく知られている。そしてホーキンス氏の一番弟子にあたるのが、日本で活躍中のブルックス・信雄・トーンさん。同じバックーンのMoBaモデルを愛用している2人の対談は、まるで久しぶりに再会した兄弟のように懐かしさにあふれていた。

 

ヴァイオリンよりクラリネットを選んだ理由

リチャードホーキンス

 

─クラリネットとの出会いを教えてください。
リチャード・ホーキンス(以下H):父は『ブルー・スウェード・シューズ』という曲で知られるカール・パーキンスバンドのメンバーで、スティールギターを弾いていました。私はテキサスで育ちましたが、ブラスバンドがとても盛んでした。私もブラスバンドに入りましたが、その中でクラリネットを選んだのは、ニューオーリンズ・ジャズのクラリネット奏者、ピート・ファウンテンが大好きだったからです。

ブルックス・信雄・トーン(以下T):アメリカの小学生はほぼ全員ブラスバンドを体験すると思いますが、私はサックスがやりたかったのです。ピアニストをしている母に相談したところ「まずはクラリネットでスタートしたほうがいい。基礎ができればいつでもサックスに移れるから」と言われて、クラリネットを選びました。
私は生まれるとすぐピアノの教育を受け、ヴァイオリンも3歳から習っていました。まじめに練習してなかったのですが、高校に入るまではずっとアマチュアオーケストラでヴァイオリンを担当していました。

 

─お二人ともプロを目指そうと考えたのはいつごろで、どんなきっかけがあったのでしょうか?
H:私も12歳の頃からヴァイオリンを習っていたのですが、14歳の時にクラリネットを吹き始めたら、すぐに「この道で上を目指したい」と思うようになりました。迷いはなかったですね。他のことは全然考えていませんでした。

T :子どものころはピアノをたくさん練習していましたが、インターロッケン芸術高校に入学してホーキンス先生に出会いました。そのときに「ピアノだけじゃなく、クラリネットも真面目にやってみようかな」と考えるようになったんです。

H :インターロッケン芸術高校は、ミシガン大学の大学院を卒業する前、22歳のときに講師として最初に行った場所です。ブルックスは私の初めての生徒だったんですよ。その次の年にはアンソニー・マクギル(編集部注:ニューヨーク・フィルハーモニックの首席奏者)を教えました。

 

─使用楽器とセッティングを教えてください。
H:バックーン MoBaのシルバーキィ、管体はココボロです。マウスピースは自作(リチャード・ホーキンス)のRモデル、時々はGモデルも使います。リガチャーはロブナーのVERSA。リードはレジェール シグネチャー4番です。

T :オーケストラ奏者としての感想を言いますと、音が近くでたくさん鳴る楽器はありますが、MoBaは距離が離れてもそのまま音が届くので好きです。オーケストラでは大きな音からとても小さい音まで幅広い音を出し分けますが、この楽器はどんな音量でもほぼ同じ音色を出せる。大きな音でも硬い音色にならないし、小さな音でも良い音色で出すことができます。

 

─いつからバックーンを使い始めたのですか?
T :B管は2年前、A管は今年の2月からです。

H:私は2011年にデモ楽器を吹かせてもらいました。それからすぐ使い始めたのです。
バックーンのすばらしいところは、その頃の楽器と今のモデルはまったくの別物だということです。AppleやMicrosoft のように、常に考え続けて製品を進化させている。楽器の世界では珍しいことだと思います。

 

 

インタビューはまだまだ続きます。The Clarinet vol.67をチェックしてください!

 

 

リチャード・ホーキンス Richard Hawkins
1992年、ケネディ・センターでのナショナル交響楽団公演(ロストロポーヴィチ指揮)にてソロデビュー。以来、50を超える公演でオーケストラと共に主要なクラリネット作品を演奏。93年にインターロッケン芸術高校で教鞭を執ったのをきっかけに、後進の育成へ関心の幅を広げ、楽器の設計にも熱意を傾ける。ペンシルバニアバレエ管弦楽団の首席奏者として5シーズン公演した後、97年から2007年までホットスプリングス音楽祭のアーティスト講師も務めた。2001年にオバリン音楽院の教職に就く。アメリカ、ヨーロッパではリサイタル& マスタークラスも広く開催している。教え子たちは今や世界のオーケストラや指導機関を率いる存在である。

 

ブルックス・信雄・トーン Brooks Nobuo Thon
米ミシガン州のインターロッケン芸術高校、ミシガン大学のクラリネット演奏科とピアノ演奏科を卒業。同大学卒業後、日本の桐朋学園オーケストラ・アカデミーに在籍した後、デュポール大学のクラリネット演奏科、ピアノ演奏科の修士課程修了。2004年1月に大阪フィルハーモニー交響楽団に特別契約団員として入団、同年9月にトップ奏者に就任。大阪教育大学、相愛大学、桐朋学園オーケストラ・アカデミー各講師。現在、愛知県立芸術大学音楽学部准教授を務める。これまでにクラリネットをリチャード・ホーキンス、フレッド・オルマンド、ラリー・コムス、鈴木良昭の各氏に師事。


クラリネット ブランド