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マトシュ・コパーチェク Matouš Kopáček

チェコの中でも歴史のある
国内最上の「プラハ交響楽団」

マトシュ・コパーチェク
12歳でPRO BOHEMIA国際コンクールで1位、15歳の時にConcertino Praga国際コンクールで1位など、さまざまなコンクールに参加し、高い成績をおさめています。コンクールやオーディションで審査員の前で演奏するのと、観客の前で演奏するのとでは違いがありますか。
M
コンクールやオーディションは、審査員に評価されるので大きなストレスを感じます。観客の前で演奏するのとは、精神面でもかなり違いますね。でも、本当は違いがあってはいけないと思っています。音楽というのは、いつもあるべき姿が決まっているものですから。
在籍しているプラハ交響楽団について教えてください。
M
1934年に設立したプラハ交響楽団はチェコの中でも歴史があり、とても有名なオーケストラです。チェコの作曲家の音楽だけでなく、様々な時代や作曲家の音楽も得意としています。去年のコンサートではベートーヴェンの曲を演奏しましたし、フランスの作曲家ラヴェルの曲を演奏することもありますよ。
オーケストラ奏者としてなにか特別な練習はしていますか。
M
オーケストラで演奏する曲も、ソロ曲も練習しますが、それに加えて毎日必ずスケールの練習をするようにしています。
マトシュさんは室内楽にも取り組んでいますが、室内楽とオーケストラで演奏のスタイルを変えていますか。
M
そうですね、たしかに変えています。具体的にはセッティングというか、選ぶリードを変えているのです。室内楽を演奏するときは、オーケストラのときより柔らかいものを選んでいます。オーケストラでは室内楽より硬いリードを使います。といっても、リードの厚さを変えるのではなく、同じ厚さのリードの中でも柔らかいもの、硬いものと使い分けています。室内楽ではそれほど大きな音量を求められませんが、オーケストラは一緒に演奏する人数も多いし、音量も大きくないといけません。そこで、オーケストラのときは室内楽より硬いリードにしているのです。

自分の出したい音を
探していくことが大切

プラハ交響楽団で活躍しながら、プラハ芸術アカデミーでも学ばれていますね。
M
プラハ交響楽団のオーディションに合格したので、その近くにあるアカデミーに通うことにしました(編集部注:アカデミーはプラハ音楽院などを卒業した人が通う、芸術大学のような学校)。
チェコはヨーロッパの中央にあり、かつてはモーツァルトやベートーヴェンが訪れるなど音楽の国としても知られています。チェコの伝統的な音楽と他の国との違いはどんなところでしょうか。
M
チェコの伝統的なクラリネット・スクールで一番大事なのは音色です。長い音楽の伝統から生まれる音色で、音を押して出すのではなくすべてスムーズに出すように教えられます。クラリネットの授業では、良い音を出すためにたくさんの時間をかけます。それはクラリネットだけでなく、すべての楽器においてそうなのです。そしてその伝統がまた受け継がれていくのです。
良い音色を出すためのレッスンが大切だということですか。
M
実は、正しい音を出す練習というよりは、いろいろな演奏家の音を聞いて自分の出したい音を探していく、自分の出したい音に出会っていくということが、とても大事だと思います。チェコの様々な音楽家の音を聞くことで、自分のモチベーションも上がっていく。そして自分がずっと聴いていたい音色に出会えれば、自分の出す音もそれに近づいていけると思います。
チェコには伝統的な楽器メーカーはありますか。
M
ファゴットで知られるアマティ社はチェコのメーカーです。昔はもっとたくさんのメーカーがあり、良い楽器を作っていました。しかし、第二次世界大戦後にチェコスロバキア(現在のチェコ共和国、スロバキア共和国)が共産主義国になったとき、楽器職人がみな国境を超えてドイツに逃げてしまいました。それまでは、チェコは金管・木管の両方の製造で長い歴史を持っていたのです。
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