フルート記事 紫園香X藤井一興 対談 「フルート&ピアノ・アンサンブルの魅力」
  フルート記事 紫園香X藤井一興 対談 「フルート&ピアノ・アンサンブルの魅力」
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藤井一興氏最後のインタビュー

紫園香X藤井一興 対談 「フルート&ピアノ・アンサンブルの魅力」

ARTIST
[この記事の目次]

THE FLUTE本誌でもおなじみの紫園香氏は、ピアニスト・作曲家である藤井一興氏と長年共演を続けてきた。その藤井氏は2025年1月に病気のため急逝されたが、昨年2024年に二人は対談を実施。その内容をTHE FLUTE ONLINEでお届けする。藤井氏の最後の対談となった貴重なインタビューだ。
文・写真提供:紫園香

バッハ以前と以後

紫園
日本の音楽教育についてはどうお考えですか?
藤井
技術的な高水準を支えるだけの精神性がほしいです。私は日本の心を尊く思います。ただ日本では信教の自由と言っているけれど、メシアンのおっしゃるように、「信じる宗教を持っていることは、すごく幸せなこと」です。J.S.バッハがいなくては今の西洋音楽は成立しませんが、そのバッハを学ぶのにドレミファだけをさらっても意味がない。だってバッハの素晴らしさは、神を賛美することの素晴らしさですから。転調は心を入れ替えて神を賛美することだし、再現部は神との再会だし……。
紫園
藤井さんのそのお考え、良くわかります。 2023年私がオールバッハアルバムを録音した時、チェンバロを弾いてくださる藤井さんから、神様を賛美するスピリットが溢れ出ていました。
藤井
ありがとう。同様にバッハ以前も重要なの。グレゴリアンチャントに代表される単声聖歌の美しさも学んで欲しい。
紫園
響きに対して「耳をつくる」にも、作曲家の心を学ぶにも必要なことですね。
藤井
そう! 大切なのは、バランスの取れた、カラフルなオーケストラや室内楽etc.を聴いて倍音の乗せ方、呼吸、バランス、音程の選び、テンポの運び等を学んで「耳をつくる」こと。そして作曲家の精神を汲み取ること。そしてさらに大切なことは、 神様を賛美することの素晴らしさを学ぶこと。
紫園
演奏は祝福ですものね。
藤井
そう! 音楽は「祝福」だから……。

*このインタビュー後、2025年1月18日藤井一興氏は急逝された。享年70歳。数多くの偉業を残された藤井氏の、これは遺言かもしれません。
私たちに素晴らしい音楽を残してくださり、本当にありがとうございました。藤井さん、安らかに。      合掌

2024年9月紫園香フルートリサイタルで聖フランチェスコの世界初演@王子ホール。
このコンサートは音楽の友誌で「評論家が選ぶ2024年ベストテン」で、ベスト1位を獲得。

 

■藤井一興作品 (委嘱:紫園香)
「香る薔薇の雨降る聖テレーゼ」(2021年作)
「今賜るアッシジの聖フランチェスコの教え」(2024年発表)
「空が紫色に輝くとき」(1992年)

以上3曲は、他の作品と共に東邦音楽大学図書館に保管される予定です。

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