2017年5月27日(土)『Wave』

大久保はるか ボサノヴァフルート ワークショップ|第8回レポート

昨年に引き続き開催された、大久保はるかさんによるボサノヴァワークショップ。今回はボサノヴァ曲の中でも人気の高い『Wave』 を題材に、アンサンブルによるテーマメロディ演奏や、メロディを感じつつ奏でるアドリブをレクチャーと実践により身につける。大久保先生との楽しいトークも交え過ごした昼下がりのボサノヴァなひとときの様子をお届けいたします。

2017年5月27日(土) a-note+ MUSIC SCHOOL
課題曲『Wave』

 


● ボサノヴァのグルーヴを体で感じよう

ジャズやポップスとは一味違う、どこか気だるい雰囲気が心地よりボサノヴァのメロディ。ボサノヴァらしくメロディを奏でるには、体でグルーヴを感じつつ演奏するのが第一歩。
先ずは、CD音源のWave演奏をバックに大久保先生が横揺れでグルーヴを表現。続いて受講生たちも先生のアドリブ演奏に合わせて横揺れでグルーヴを体感。


● テーマを演奏しよう

ボサノヴァのグルーヴを体で感じた後は、いよいよメロディ演奏です。
テーマをフィーリングよく吹くための準備運動として、ブラジルの打楽器スルドのリズムパターンに合わせ、各コードのルート音を捉える練習を行ないます。
リズムに乗せてルート音を吹くことは、その曲の調性を感覚的に捉えるということですね。これは、メロディ演奏にもアドリブ演奏にも役立つ重要な練習です。

大久保はるか ボサノヴァフルート ワークショップ8th

準備運動が終わったら、みんなでテーマを吹きます。
大久保先生の手書きによる楽譜を基に、全員ユニゾンでメロディを演奏します。

大久保先生直筆『Wave虎の巻』
大久保先生直筆『Wave虎の巻』

ここで、本ワークショップで毎回受講生に配られる、大久保先生直筆のボサノヴァ虎の巻をご紹介いたします。
本ワークショップは、回によって曲が変わりますが、これらすべての曲に対して、大久保先生自ら制作の教則本ともいえる虎の巻が受講生に配られます。この内容が、とても丁寧で、受講生に大変な人気を博しています。

虎の巻

ボサノヴァのフィーリングを上手く掴んでメロディを演奏するコツ。転調においてのアドリブの説明。メロディを演奏する前のカッコいいイントロのフレーズも大久保先生のオリジナルアレンジ。各小節のコードにはアドリブで使用するのに最適なスケールも書き込まれています。また、単音楽器であるフルートが、コード感を出すのに最も適したトライトーンの説明も有り、まさに各曲オーダーメイドの教則本です。
ワークショップ終了後、家に帰ってからの復習にも役立つこと間違いなしのうれしい内容です。

 

アドリブ演奏について
アドリブ演奏について

本ワークショップに参加された方の多くは「クラシックやポップスのメロディ演奏には馴染みがあるけど、アドリブはどうやって良いかわからない」という方が大半です。
そこで、大久保先生から、まずは基本的なアドリブ演奏の仕方についてレクチャーが行なわれます。
その内容を少しだけご紹介すると…
アドリブは譜面に書かれたコードを見て演奏します。コードはいわば地図の役目。そこに吹いて良い音を当てはめれば良いのです。ただし、コードにもいくつか種類があります。同時に曲ごとに調性(キー)が存在します。そのキーのなかでのコードのポジション、役回りも関係してきます。
今回の題材『Wave』は、キーが#2つのニ長調(Dメジャー)です。Dメジャーのスケールといえば、D、E、F#、G、A、B、C#という構成ですね。
つまり『Wave』でDM7というコードが出てきた場合、Dメジャースケールの音を使ってアドリブを構成すれば良いのです。
テーマ3小節目はAm7というコードですが、このコードは、5小節目に出てくるGM7に完結するコードです。Am7のルート音“A”はGM7のメジャースケール(G、A、B、C、D、E、F#)で考えると2番目の音ですね。ここでは“A”からはじまるGメジャースケールを使ってアドリブ演奏をします。このAから始まるGメジャースケールのことをAドリアンスケールと呼びます。
各小節で使用する音階についてのレクチャーに引き続き全員で演奏。次に、その音階内の音を自由に組み合わせ、各自フィーリングでアドリブソロを回して行きます。
最初はちょっと様子見で遠慮がちにアドリブを吹いていた参加者の方々も、アドリブの回数を重ねるごとにコツを掴み、メロディックな堂々たるアドリブを展開されるのには驚きです。取材を通じて本ワークショップの密度の濃さを感じる瞬間です。

アドリブのおいしい音、ちょっとした禁じ手
アドリブのおいしい音、ちょっとした禁じ手

アドリブにおけるちょっとした禁じ手として、AVOID NOTE(アヴォイド・ノート)についての説明がありました。アドリブで使ってはいけないという訳ではないけど強調してはいけないのがAVOID NOTE 。たとえば『Wave』の主調であるDメジャー。このDメジャー(DM7)のときは“4度”の音が該当します。つまり、Dから数えて4番目のG音がAVOID NOTEです。なお、AVOID NOTEは各コードに存在していますが、コードによって度数は違います。
AVOID NOTEを避けながら、でも吹いてしまった場合、2度上や2度下の音に落ち着かせると、それはアドリブでは美味しい音なのだそうです。アドリブの裏技やまめ知識についての説明に、アドリブ演奏へのさらなる興味が湧いてきます。

最後はアンサンブルで締めくくり!
最後はアンサンブルで締めくくり!

ワークショップの締めくくりは、大久保先生アレンジによる3パートに分かれてのアンサンブル。もちろん途中にアドリブの掛け合いもあり、集中と充実の中ワークショップは終了です。演奏のあとはちょっとしたティータイムが設けてあります。ワークショップでの難しかった内容やアドリブについての感想、また、大久保先生への質問など、リラックスした雰囲気で参加者同士の交流も深まった様子でした。次回参加について宣言されていた参加者も見受けられ、ワークショップの充実ぶりが伺えた一幕でした。

最後はアンサンブルで締めくくり!

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