クラリネット記事
The Clarinet vol.73 Close Up

クララ・シューマン邸での夜会を再現したアルバム─吉田 誠

国内外で活躍を続けているクラリネット奏者の吉田誠氏と、ベルリンを拠点に活動し、ソリスト・室内楽奏者として多くの演奏家から絶大な信頼を得ているピアニストの小菅優氏の二人によるアルバムがリリースされた。このアルバムは1894年にフランクフルトのクララ・シューマン邸で行なわれた、ブラームスのクラリネット・ソナタの私的な初演をCDで再演したもの。このアルバムで吉田氏が伝えたかったことを訊いた。

自粛期間中にフルートも始めた

コロナ禍で自宅にいる時間が増えたと思いますが、どのように過ごされていますか?
吉田誠
(以下、吉田)
コロナがなかったらパリと日本を行き来している予定でしたが、海外のコンサートもキャンセルになってずっと日本にいます。この1年で大きなプロジェクトとして動いていたのは、今回リリースしたCDですね。あとはテレビの収録など新しいことに取り組む時間が増えました。
CDは以前から準備はしていたのですが、時間ができたことでより良いものが作れたのだと思います。今回はHakuju Hallで収録しましたが、コロナでなければHakuju Hallを3日連続で押さえることはできなかったでしょうし、ピアニストの小菅優さんとのリハーサルもこれほどまでに時間をかけることができなかったと思います。
また、プライベートでは、料理が趣味なのでよく作りましたし、2020年の2月上旬に犬を飼い始めました。犬と過ごす時間も増えたことはお互いにラッキーだったと思います。
新たに始められたことはありますか?
吉田
実はフルートの練習をはじめました。先日サン=サーンスの『動物の謝肉祭』の「水族館」という曲をクラリネットで演奏してほしいと言われたのがきっかけです。YouTubeやクヴァンツの「フルート奏法理論 バロック音楽の原理」などを読んで勉強しました。
 

>>次のページに続く
・クララ・シューマン邸のサロンでの初演を再現
・楽器の選択は曲の魅力を引き出すのに必要な作業

 

吉田 誠 Makoto Yoshida
クラリネット・ソリスト。15歳からクラリネットをはじめ、22歳から小澤征爾、湯浅勇治のもとで指揮を学ぶ。東京藝術大学入学後、渡仏。文化庁海外新進芸術家派遣員として、パリ国立高等音楽院、ジュネーヴ国立高等音楽院で学んだ。ソニーミュージックから「ブラームス:クラリネット・ソナタ、シューマン:幻想小曲集ほか」(朝日新聞特選盤、レコード芸術室内楽部門特選盤)を世界リリース。文科省学習指導要領教育芸術社小学校音楽教科書準拠DVDで演奏が紹介された。国内外のオーケストラ、音楽祭にソリストとして招かれ、日欧で活躍。テレビ朝日『題名のない音楽会』、NHK『クラシック倶楽部』などメディア出演も多数。

 

CD Information

SICX-10009
「ブラームス:クラリネット・ソナタ(全曲)、シューマン:幻想小曲集ほか」

【SICX-10009】ソニー・ミュージックレーベルズ
¥3,300(税込)
[演奏]吉田誠(Cl)、小菅優(Pf)
[収録曲]ブラームス:5つの歌曲 作品105より第1曲「調べのように私を通り抜ける」/5つの歌曲 作品107より第3曲「乙女は語る」/5つの歌曲 作品106より第3曲「霜が降りて」/5つの歌曲 作品107より第5曲「乙女の歌」/5つの歌曲 作品105より第2曲「私の眠りはますます浅くなり」、ブラームス:クラリネット・ソナタ第1番ヘ短調 作品120-1/クラリネット・ソナタ第2番変ホ長調 作品120-2、シューマン:幻想小曲集 作品73
 
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