その練習法大丈夫?クラリネットが上手〜くなるための基礎練習

第13回 「アタックは息がすべて」

発音のイメージ

さてさて、問題が出てしまった人はどんどん解決していきましょう!
皆さんは発音する時どういうイメージで発音をしていますか? おそらく「Tu」とか「Ta」「To」など、Tの発音をしているのではないでしょうか。確かに旋律を歌う時に「ティヤタタタ」とか歌ってしまうので、そのイメージが染み付いてしまっている人は非常に多いと思いますが、これがいろんな問題を引き起こしてしまいます
Tの発音というのは、舌が上前歯の裏を触る発音になります。それに対して、リードは前歯よりも口の中に入り込んでますから、Tの発音をしようと思った時点で舌が大きく動き、リードに対して深く触ってしまうことになります。ではもっとコンパクトに舌を動かすためにはどうすればよいのでしょうか。
自覚しにくい舌の動きについて考えるよりも、手っ取り早く発音のイメージを変えてしまいましょう。普段僕がレッスンの時によく提案しているのは「Lu」や「Nu」といった、舌が前歯ではなく上あご(口の中の上側、ボコボコしているところ)を触るような発音です。面白いことに、人によって自分にしっくりくる発音というのが違うので、僕の生徒の中にも「Du」や「Gu」のほうが良い結果になる人もいました。
なので、いろんな発音を試してみてください。第12回の譜例が問題なくできるような発音が、あなたにとってベストな発音です。ポイントとしては、アンブシュアと連動させるためにも、基本的に母音は「u」がいいと思います。「o」でもいいかもしれません。「a」「i」「e」は舌の形が横に引っ張られてしまうので避けたほうが無難だと思います。
この自分にぴったりな発音を特定することが、タンギング上達のための唯一の秘訣となります。時間がかかるかもしれませんが試行錯誤を繰り返してキレイな発音ができるタンギングを手に入れましょう!

アタックは息がすべて

前項で無駄のないタンギングができるようになったらしめたものです。というのも、このタンギングの仕方ですべてのアタックが吹き分けられるようになるからです。
例えばアクセントですが、この記号を見るとなぜか舌を強く押し付けたくなる人をよく見かけます。そんな時はたいていアクセントではなくて単純に発音が汚くなっているだけで、なんとも残念な音になってしまっています。アクセントで重要なのは息の圧力、スピードです。また、スタッカートは音を舌で切るわけですが、これも不必要に押し付けてしまうので引く動作も大きくなり、タンギングのたびにアゴが動いてしまったり、アンブシュアが崩れてしまう人をよく見かけます。
これらはすべて基本のタンギングの仕方で応用が可能なので、スラーだとキレイに旋律が吹けるのにタンギングになると音が汚くなってしまう人は、発音の仕方を見直してみてください。そして、タンギングはあくまで発音のきっかけにすぎず、息の流れやアンブシュアに極力影響のないようにしてあげるのが最良であるということを忘れないようにしてください

タンギング練習

良い形でタンギングができるようになったら、今度は速くしていく練習をしましょう。息の流れさえスムーズにいけば、舌の動きがコンパクトになっているはずなので速いタンギングも難しくなくなります。譜例をいろんなテンポ、いろんな音域で練習してみてください。ポイントはブレスをする4拍目頭までしっかり息を一定に保つことです。リズムが細かくなったり、テンポが速くなっても舌の動きが変わっていないかチェックしてください。

譜例

登場するアーティスト
画像

渡邊一毅
Kazuki Watanabe

兵庫県立神戸高等学校を経て東京藝術大学音楽学部器楽科卒業。
室内楽、吹奏楽、オーケストラ、ミュージカルなど多岐に渡り活動する一方で、指揮活動も含め後進への指導にも積極的に取り組み、指導した団体は吹奏楽コンクール、アンサンブルコンテストなどで全国大会出場多数。また各地にて各コンクール審査員も務める。
スタジオワークも多く、アニメ、ゲーム、映画、TVドラマ、CM等録音多数。
また、下記団体において数多くの編曲を手がけ、楽譜が出版されている。
オブロークラリネットアンサンブルE♭クラリネット奏者。ブリッツ・フィルハーモニックウインズ コンサートマスター。
クラリネット五重奏団Penta-CLam、東京セレーノバスクラリネットアンサンブル【木炭】、山本拓夫木管6重奏Halocline各メンバー。
2018年1stアルバム「Triptyque」発売。
現在、洗足学園音楽大学、相愛大学講師。音楽教室「黒笛音楽塾。」主宰。
公式サイト「黒笛危機一髪。」


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