オガケン先生の東洋医学で気楽に音楽

【第1回】自分のカラダを知ろう

クラリネット奏者としてクラシックの本場フランスで研鑽を積み、世界のさまざまなフィールドを歩みながら、現在は東洋医学の分野で活躍しているという異色の経歴を持つオガケン先生。クラリネット界の裏表を熟知し、日本東洋医学界のサラブレットという顔も持つオガケン先生による、音楽ライフに役立つ“カラダのしくみ”連載がスタートです!

はじめまして! オガケンです

東洋医学の視点から、カラダのしくみや効果的な使い方などについて連載をさせていただくことになりました「オガケン先生」こと小笠原賢二です。僕は中・高と吹奏楽部でクラリネットを始め、日本の音楽大学で学んだのちパリへ留学し、帰国後は日本のビュッフェ・クランポンでの勤務を通して国内外の様々な奏者の方々と交友を持たせていただきました。そして現在は、鍼灸あん摩マッサージ指圧師・教員として銀座で治療院を営んでいます。
クラリネットは、本当にたくさん吹いて、たくさん練習し、たくさん聴いてきました。ときには悩みすぎて「二度と見たくない!」とケースを封印した時もありました(数か月で封印は解けたんですけどね......苦笑)。たくさんの時間を共有し、今となってはもう一生手放せないパートナーとなっています。吹奏楽→音大→フランス留学→楽器メーカー勤務→東洋医学——という様々な道を歩んできたからこそ発見できた、「楽器との向き合い方」「身体の使い方」「新しい視点やアイデア」などを、このコラムでお話しできれば幸いです。 “音を楽しんで「音楽」、気を楽しめば「気楽」”をモットーに、これからよろしくお願いしますね!

東洋医学ってなんだろう??

「東洋医学」といわれてもなかなかピンとこないですよね? 東洋医学とはアジア地域、とくに中国において2000年以上にわたる経験や実績を積み重ねて発展してきた医療を指します。漢方薬・鍼(はり)・お灸・吸角(カッピング)などは皆さんも聞きなじみがあるかもしれません。そんな東洋医学の中でも「鍼灸・按摩・マッサージ指圧」はれっきとした医療行為というカテゴリーなんです。そのため西洋医学と同じく国家資格が必要で、免許がないと施術ができないというのは意外と知られていないかもしれません。ちなみに、街中にはチェーン展開しているようなもみほぐし屋さんを多く見かけますが、そのほとんどはリラクゼーションのカテゴリーに分類され「マッサージ」を名乗ることはできません。また、「リラクゼーション」だと医療行為ではないので国家資格はいらないんです。
現代の西洋医学では、不調の原因を検査やデータで発見し退治・排除するのに対して、東洋医学は物事のバランスを大切にし『それぞれの関係性』を整えることに注力します。健康を保つのにも「調和」と「均衡」をしっかり整えることが重要だと説いているんです。
『過ぎたるは及ばざるがごとし』とも言うように、何事もバランスが重要です。関係性を大切にして争い(=ストレス)を生まないようにすることは、自然界や人間社会にも当てはまるとっても重要なことです。音楽もそうですよね? メロディやハーモニーの調和、合奏時の意思疎通、ステージ上の奏者と客席の聴衆との空気感なども、東洋的な視点で考えると個々の絶妙なバランスで成り立っていると捉えることができます!

実はたくさんの筋肉を使っている“楽器演奏”

さて、ここからが本題です。
皆さん、楽器を演奏するとき、自分の体のどの筋肉を使っているか考えてみたことがありますか? 【楽器を構えて、アンブシュアを作り、息を入れ、指を回し、アインザッツや表現のために身体を動かす】——この一連の動作だけでも何百という種類の筋肉が働いています。実はこうした身体のしくみを意識するだけで、無駄な力が抜けて、楽に演奏ができるようになるんです。
まずは大まかでいいので演奏している自分をイメージしてみてください。

 

「楽器を構える動作では両ひじを90°ぐらいに曲げているな」
「アンブシュアは、口を開く動作なのに唇の筋肉は閉じるように働いている」
「息を吸っている時と音を出しているときでは、胸やお腹の使っている場所が違う」
「キィを閉じる/離すの動作は前腕の内側や外側の筋肉も連動している」

 

こんなことがざっくりと見えてくるかと思います。
まずは筋肉の動きを想像したり、自分で触ったりするだけで充分です。だんだんわかってくれば、疲れた時にはどこをリラックスするべきか、アフターケアはどのようにするべきかが理解できるようになります。はじめは「ふーん、なるほどね」程度でいいので、自分の身体がどのように動いているのかを少しずつイメージしてみましょう!

長時間の練習って、身体の負担も大きい?

長時間の演奏時、とくに集中して練習している時などは、ずっと同じ姿勢で身体が固まっています。これは、自分が思っている以上に身体に大きい負担がかかっているんです。
楽譜を一音一音がんばって読んでいると、まばたきが少なくなり目が乾きます。息のコントロールや楽器を支えるためには首肩も使います。同じく楽器の支えや、運指では手首や腕まわりがロックされがち。では、その姿勢の固まりが「なぜ」身体に負担をかけているのでしょうか!? 先ほど話した通り、少しイメージしながら聞いてみてください。
私たちが生命活動を維持するには、血液の循環が最重要です。血液循環は様々な栄養分が動脈血に乗って身体のあちこちに運ばれ隅々まで潤します。その後、各所で発生した不要物が静脈血に乗って肝臓へ行き分解され、また腎臓ではろ過され尿として排出されます。この内臓フィルター機能で浄化された血は静脈血としてまた心臓へもどり、再び動脈から出発する......という循環をくり返しています。

血液の循環は、心臓の「ドクンドクン」という拍動で押し出された血液が、ゴムのような弾力性のある「動脈」を通り、波打ちながら全身へ送られます。しかし身体の末端まで届いた血液が帰ってくるには拍動の勢いだけではパワー不足。なぜなら人体の大動静脈から毛細血管にいたるすべての血管をつなぎ合わせると「地球2周半」という途方もない長さになるといわれているからです! そりゃパワー不足にもなりますよね(笑)。さらに地球には重力もあるので、足下に届いた血液が心臓に戻っていくにもサポートが必要。そこで補助として活躍するのが身体のうごき=筋ポンプ作用です。

“凝り”や“むくみ”の原因は老廃物の渋滞?!

筋ポンプ作用とは、文字通り筋肉がポンプの役割をすることです。歩くときのふくらはぎや太ももの筋肉を思い浮かべてみてください。筋肉が「縮んで固くなる↔伸びて柔らかくなる」を繰り返す動きをイメージですね。この筋肉の伸び縮みによって、足首・膝・股関節が動かされます。

実は大きな血管はほぼ筋肉に沿って流れています。身体の末端に栄養を届け、不要物を回収した「帰り道」の静脈は、動脈に比べてペラペラで伸縮性があまりないので、動脈のように自力で血液を動かせません。ですが内側に逆流防止の弁が備わっており、身体(筋肉)が動いて伸縮するのに沿ってポンプのように心臓へ一方向に戻ることができます。この「筋ポンプ作用」が血液循環を支える鍵となっているのです。

静脈は動脈のように弾力性がないため、筋ポンプで血液循環をサポートしている
 

では、長時間にわたって同一姿勢が続くとどうなるでしょうか? 筋ポンプが作用しないことは容易に想像できますよね。血液の循環がうまく回らないと、必要な栄養が供給されず、不必要な老廃物は回収されません。つまり疲れは蓄積しますし、パフォーマンス効率も低下してしまうのです。こうした老廃物がたまった状態が“凝り”や“むくみ”の要因なのです。

「伸び」をするだけで変わる!?

そんなことを言ったって屈伸しながら楽器演奏なんてできないよ!というご意見、ごもっともです。そこで、ホントに気軽にできるセルフケアとして、ぜひ「伸び」をおすすめします。単純ですが、「伸び」をすると全身の筋肉の収縮・弛緩が生まれるからです。
座奏のときはイスのまま伸びをするだけでもよいですが、できれば数十分に一度、外の空気を吸いに出て、うーんと筋肉を伸ばしてあげてください。ちょっと歩くだけでも、足の筋ポンプ作用で全身に血がめぐりやすくなりますし、新鮮な酸素を吸って脳血流もすっきり循環します。そうすれば再び集中しやすくなり、斬新なアイデアが生まれるかもしれません!
大切なのは身体の「なぜ?」のしくみを知って、まずはシンプルなことから踏み出してみることが大切だと私は考えています。

いかがでしたか? 「いきなりなんだか小難しいな......」と感じた方もいるかもしれませんが、自分の身体をイメージすることがセルフケアの第一歩です。特に「身体が凝りやすい」や「なんだか疲れやすい」と悩んでいる方はぜひ実践してみてくださいね!

—本日のまとめ—

1. 身体のどこを使っているかまずはイメージしてみる
2. 楽器演奏は思っている以上に負担がかかっている
3. 同じ姿勢が続くと体内の循環が滞る
4. 血液の流れが悪くなると老廃物(疲れの要因)が蓄積する
5. 「伸び」をするだけでもとっても効果的!

これからのコラムで、分かりやすく東洋医学とカラダのお話を深めていきます。どうぞお楽しみに!

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皆さんがますます“気”も“音”も楽しんで、気楽に音楽ができることを応援いたします。最後まで読んでくださりありがとうございました!

 

ベル・エール・トウキョウ
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〒104-0061
東京都中央区銀座3-14-18
小野寺ビル6階 銀座ルーチェ治療室内
[営業時間]11:00~20:00(最終受付)
[定休日]月・火曜日または月・水曜日

 

フランス語の「Bel-Air(ベル・エール)」とは、英語の「Beautiful-Air (ビューティフル・エアー)」、すなわち「美しい-空気」「澄んだ-気」の意味。 院長 小笠原賢二の人生とゆかりの深いパリ12区に、メトロ6番線「BEL-AIR(ベ ル・エール)」駅が存在します。「美しい空気、澄んだ気」という語意にちなみ、治療を受けにいらした患者様が素敵な空気の中で、身体だけでなく気持ちまで整っていただきたいといったコンセプトのもと名付けました。

 

 

小笠原 賢二 Kenji Ogasawara
クラリネット演奏家からメーカー社員、そして東洋医学の世界へ転身という異例の経歴!
国立音大、エリザベト音大大学院卒⇒フランス留学⇒ビュッフェ・クランポン・ジャパン⇒鍼師/きゅう師/あん摩マッサージ指圧師の国家資格および教員資格⇒現在は東京銀座 鍼灸マッサージサロン『ベル・エール・トウキョウ』で治療活動&教育活動を行う。
クラリネットを武田忠善(国立音大招聘教授)、ミシェル・アリニョン(元パリ音楽院教授)の各氏に師事。バスクラリネットをフィリップ=オリヴィエ・ドゥヴォー氏(元パリ管弦楽団奏者)に師事する。現代フランスの作曲家ジャン=ミシェル・フェラン氏からバスクラリネットとピアノの為の作品『Apostasis』(KLARTHE出版)の献呈を受ける。祖父は古代中国の東洋医学書『黄帝内経』を日本語意釈した先駆者、小曽戸丈夫。

 


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