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森の五重奏団 「文化芸術による子供総合育成事業~芸術家派遣事業」

屋久島町立小瀬田小学校  双方向テレワーク演奏会

7/9(木)森の五重奏団事務所/鹿児島県屋久島町立小瀬田小学校1・2年生、3・4年生、5・6年生(全3公演)
[出演]森の五重奏団〈だてかよこ(Fl)、弘瀬麻子(Ob)、大藤豪一郎(Cl)、磯崎政徳(Fg)、伊東輝道(Hn)〉、小川正毅(お話・ナチュラルホルン)、彦坂僚太(音響配信ディレクター)
[曲目]ヘンデル:水上の音楽より、木村弓:いつも何度でも(映画「千と千尋の神隠し」より)、「ハンドベルと奏でるパッヘルベルのカノン」〜田村緑の参加型シリーズ①(まるいち)〜 編曲:田村緑、楽器紹介(プログラム協力:風の五重奏団)

文化庁の「文化芸術による子供育成総合事業~芸術家派遣事業」で6月に公演を行なう予定だった森の五重奏団。しかしコロナ禍の中、屋久島町教育委員会と小瀬田小学校教頭の當房先生と相談の上、双方向のオンラインで公演が実現した。

演奏を聴く児童たち

コロナの音楽界への影響はライブ配信など、一面的には利点もあったのだが、今回の公演の注目すべき点は“双方向”にある。そのため入念に準備したという。
双方向テレワーク演奏会は、ヘンデルから始まり、演奏を含めた楽器紹介などから公演は始まる。モニター越しに見る児童たちは、集中して聴いているのが窺えた。そしていよいよ東京と屋久島で同時演奏をする『カノン』。子どもたちは事前に用意されていたハンドベルで演奏に参加し、見事なアンサンブルを聴かせてくれた。

森の五重奏団に様々な質問や感想を寄せてくれた

子どもたちからは「五つの楽器の音が重なり合ってとてもきれいでした」など、楽しい時間を満喫したコメントも多く届いた。
音楽家にとっても愛好家にとっても、生の演奏に触れることのできない時期が長く続いているが、このような状況だからこそ、生まれた双方向でのオンライン公演と言えるだろう。
ここからはメンバーによるインタビューをお届けしよう。

生の演奏会とは違う魅力を発見

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左からだてかよこ(Fl)、弘瀬麻子(Ob)、伊東輝道(Hn)、磯崎政徳(Fg)、大藤豪一郎(Cl)、手前左から彦坂僚太(音響配信ディレクター)、小川正毅(お話・ナチュラルホルン)

【座談会参加者】
クラリネット奏者:大藤 豪一郎
フルート奏者:だて かよこ
お話し・ナチュラルホルン:小川 正毅

今回の双方向テレワーク演奏会を開催するきっかけを教えてください。
大藤
文化庁の「文化芸術による子供育成総合事業~芸術家派遣事業」で6月に2日間直接学校にお伺いする予定だったのですが、このような状況になってしまい行くことができなくなりました。中止にするか、延期にするかなど屋久島町教育委員会の福留さん、小瀬田小学校教頭の當房先生と相談させていただきました。双方向オンラインでの開催の可能性に関しては演奏会の当日音響配信ディレクターとして森の五重奏団に加わっていただいた彦坂僚太さんと5月以降実験を重ねていて、こちらとしては中止・延期という選択肢に加えて、「オンラインでの演奏会」という選択を提案できる準備をしていました。まだ実験が必要という前提でオンラインの提案もさせていただいたところ「ニュースで『テレワーク』といった言葉があふれているが、子どもたちにはその実感がないだろうし、ICT教育という側面でも価値があるのでは」という話になり今回の実施になりました。
小川
ここ数年屋久島での公演が続いていて、いろいろ相談できる関係性があったことが大きいと思います。昨年の安房中学校の公演には関係の皆さまにもたくさんいらしていただき、学校の先生方も我々も来年も楽しみだね、となっていて。その関係から初の試みをやってみようという形に繋がったのだと思います。
テレワークということで準備で大変だったことは?
大藤
準備は入念に行ないました。
まずはどうやったら可能な限りいい音で届けられるか。知り合いのサックス奏者の彦坂眞一郎さんがFBを通じてご家族で様々な実験をされていたんです。それをみて彦坂さんの息子さんの僚太さん(同じくサックス奏者で宅録や配信を相当実験をされていた)を音響配信ディレクターとして紹介していただきました。各通話アプリケーションの実験で設定できない部分の数値の検証に加え、どのような場所でもスムーズに行なえるように通信速度が遅いところでも聞きやすい音質をその場で作ること(通信速度が遅いと声の音域を優先する仕組みがあるようなので、その場合だけ低域、高域のカットなど)などを入念に仕込んでもらいました。実験段階で屋久島の方で聴こえている演奏を録音して送ってもらいましたが、会議用の通信システムでも設定の変更・調整で驚くほどいい音で配信できるようになりびっくりしました。
相手方のネット環境の問題が次のネックでした。もともと屋久島にこの春、光回線が通るということだったのですが、感染拡大の影響を受けこれが延期になり、結局この本番には学校への光回線は間に合わずADSL回線を使った通信になりました。そのため回線の不安定さをどのようにして補うかなど実験を重ねました。
そして東京の木管五重奏と屋久島でのハンドベルの共演の準備と実験。これは直接伺うときは我々が音を順番に並べたり、公演中に説明を行ない共演という流れなのですが、今回は事前にハンドベルを送り、先生と合奏しました(笑)。回線の問題でSYNKROOMを使わずZOOMでの時差を確認したりしました。
小川
あとは本番中のコミュニケーションの問題。直接目の前で展開されるコミュニケーションとは違うので、機材の検討や設置など細かい実験を行ないました。説明のときにスライドをどのように向こう側にみせるか、児童の反応やハンドベルの音をどう奏者に伝わるようにするか。最終的には2台のパソコンと3台のタブレット、モニターイヤホンなどメンバーで持ち寄って駆使する形になりました。
だて
演奏者としてはマイクとイヤホンと画面に囲まれた環境で「伝える」という点で気をつけなければならない事がありました。楽器紹介で各奏者がそれぞれ話をするのですが、そのときマイクとの距離、話すスピード、間の取り方、カメラ目線(演奏時も)など……。それから当然のことですがリアルに比べると生徒さんの反応がわかりにくく、私もテレワークに慣れていないため(笑)、やりにくさがありました。終演後、生徒さんから共演して楽しかったという感想をたくさん聞けたのはなによりでした。
双方向テレワーク演奏会をやったご感想をお聞かせください。
小川
双方向テレワーク演奏会が「できる」ということがわかったこと。これは大きいです。
大藤
そうですね。終わった後の複数の児童の感想を聞いて新しい演奏会の形として成り立っていると感じました。(翌日の公演の)質問コーナーでは「今までに一番覚えるのに大変だった曲はなんですか」という質問がありました。おそらく譜面台が画面からは感じにくかったと思うんです。それで、司会の手持ちカメラで奏者の前に行って譜面を大きく写して「こんな楽譜をみながら演奏しているので、みんな曲を覚えているっていうわけではないんです」という説明をしました。普段でしたら楽譜を持ち上げて説明するところにカメラで大きく写してみてもらうことができるんです。こういうところは生の演奏会にはない魅力になると思いました。
だて
双方向テレワークコンサートは音響・映像技術スタッフのお力、そして学校側のご理解とご協力、綿密な打ち合わせなしでは成り立たなかったと思います。開催まで長い時間をかけて準備してくださった先生方には感謝の気持ちでいっぱいです。
今回の演奏会をやって、今後のコロナ禍における音楽界の将来性で感じたことは?
大藤
「森の五重奏団」と「風の五重奏団」では様々なプログラムを共同で開発しながら管楽アンサンブルの魅力を伝える活動していますが、「オンラインならでは」の魅力も追求していけたらと思います。
小川
新しいことにチャレンジすること=可能性を拡げるという実感が得られました。
だて
コロナを機にこのような新しい形態でのコンサートは進化していくと思います。双方向テレワークコンサートをきっかけに、ますます興味を持ってリアルコンサートに足を運んでくださる「音楽ファン」の方が増えることを願っています。
大藤
そうですね。オンラインのものが流行ると目の前で演奏する今までの生演奏の価値も逆に高まるでしょうね。同じ空間での空気の振動と感動のやり取りのかけがえのなさを演奏者も観客もより欲していくのではと。
ありがとうございました。
 
 
 
 
 

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