THE FLUTEオンライン記事:つくばフルートコンクール審査委員長 工藤重典氏に聞く

つくばフルートコンクール開催! 審査委員長 工藤重典氏に聞く

今までにない画期的な試みのコンクールを開催

        工藤重典

11月、12月に開催されるつくばフルートコンクールは、「J=P.ランパルへのオマージュ」と副題が作られたコンクールです。審査委員長の工藤重典氏や実行委員の方々が、これまでにないコンクールのあり方を模索し、実行するコンクールになります。そこで、審査委員長の工藤重典氏に話を聴きました。

コンクールが演奏活動のきっかけになるように

——
茨城県つくば市でコンクールを開くきっかけを教えてください。

工藤
つくばに限らずですが、僕は茨城でコンサートを度々開いていまして、県内の方たち と交流が広がってきました。なかでもつくば市はコンクールを含め、大きな音楽的なイベントをしたことがないということを聞きました。そこで街の活性化にもつながるコンクールはどうかと話をしたことから始まりました。
具体的に話をしたのが2、3年前で、何回かの打ち合わせを経て内容が具体化してきました。
つくば市にはノバホールというすばらしいホールがありますから、演奏会もよく開かれています。今回のコンクールは予選、本選、ガラ・コンサート含めて7回ホールを使い、市民はすべて無料で見ていただけることにしました。そうすることで、市民の方にも応援してもらえると考えたわけです。

——
今回のコンクールは副賞が豪華ですね。

工藤
そうです。1位を獲得することでこんなにたくさんの演奏機会を得られるコンクールは他にはありません。都内の大ホールでコンチェルトを演奏できる機会も与えられますし、茨城県内や横浜など首都圏での演奏会もあります。僕との共演も考えています。1位になった人に賞金を渡して終わり、というのではコンクール自体も成長しません。コンクールが育成にも関われるようにしました。
例えば、通常コンサートを開くにはチケット販売の負担が演奏者にかかります。これでは音楽に集中することができませんから、要項の副賞の部分に「チケットの負担はなし」というのを敢えて入れました。要項としては余分なことかもしれませんが(笑)。
これは共催の公益財団法人つくば文化振興財団の方たちが、僕たち実行委員会の意向を汲んでくれて折衝し、実現できました。このようなことは実行委員会だけでうまくいきません。支えてくれる人たちが協力をしてくれることが大事です。
このあり方は海外のコンクールに似ていると思います。僕がミュンヘンコンクールに出たときには、プロモーターの方が本選を聴きに来ていて、本選が終わったあとにすぐに連絡があって、ラジオ局主催でリサイタルを行なうことなりました。こういう形に持っていければいいなと思っています。
このコンクールで、本当の意味で実力のある優秀な人を見つけたい。もちろん、一生の面倒は見られないけど、最初のレールの上に乗せて、ひと押しはしてあげたいですね。

現代曲が課題曲になっていないコンクール

——
このコンクールはランパルさんのオマージュと副題がついています。

工藤
来年ランパル先生が亡くなって20年となります。彼は日本でも人気のあった20世紀最大のフルーティストですから、彼が好んで演奏した曲を課題曲に取り上げました。

——
課題曲ですから、通常は統一性はありませんよね。

工藤
コンクールとは難しい曲を並べて完成度を競うものですからね。僕はここの考え方を変えました。一般の人にも予選から聴きに来てほしい。それには音楽性の感じられるものでないといけないわけです。ランパル先生は一般の音楽ファンのために演奏していたから、現代曲はほとんどやりませんでした。
だったら、そういうプログラムで課題曲を組んではいけないのか、と思ったんです。それで彼が好んで吹いた曲を課題曲にし、オマージュにしました。

——
課題曲に現代音楽が入っているとつまずく人がかなりいると思います。

工藤
現代音楽を課題曲にすることは、ピアノやヴァイオリン、歌の世界ではありません。なぜフルートなど管楽器だけやらされるのか。管楽器というのは20世紀になってから楽器の構造などが落ち着きました。だから「こんなこともできる」「あんなこともできる」、という見せる場が必要だったんです。リヒャルト・シュトラウスなどには、吹けないぐらい難しいフレーズがフルートにはがあるでしょう。リヒャルトは根っからのウィーンっ子で、ウィーン・フィルの演奏会を聴いて育ちました。フルートがいつもパラパラ吹いているのを見て、ああいうフレーズを書いたらしい。一番華やかな楽器だからそういうことになったのでしょうね。これは時代の流れですし、演奏者も挑戦して吹き、作曲者がそれを聴いて触発されて、という流れですね。それがいい悪いという議論はここではできないけど、現実的に起きている。それがフルートという楽器の一つの個性になっていると言えるでしょう。
コンクールに話を戻すと、その個性が課題曲に取り入れられてしまっています。
審査をしていると、指などテクニック的な部分で点数を付けやすいのが現代音楽なんです。曲によると思いますが、音楽性とは直接結びつかないものもあります。音楽的にどんなにすばらしい個性を持っていても、指がうまく回らなかったら落とされるのがコンクールなんです。僕はテクニックの部分も音楽性と同じ立ち位置で見てくれるコンクールがあるといいのではと考えています。それに演奏活動を始めたからと言って、あんなに難しい曲を演奏する機会はありません。

        工藤重典
——
高校時代に習った数学の微分積分みたいな感じですね(笑)。

工藤
そう。あれは頭を弄り回すためにあるんですよ。現代曲でテクニックをつけることはいいとは思いますが、課題として取り上げ、音楽性を決めてしまうことを危惧しているわけです。

本物を演奏を聴かせてほしい

——
本選はつくばシンフォニエッタと共演ですね。

工藤
コンチェルトが本選の課題曲だというのに、ピアノ伴奏はありえません。ピアノのコンクールの本選で伴奏がピアノってないでしょう(笑)。オーケストラのいろんな音が出てきたときに、フルートと絡んでどんな響きになるか、フレーズがどうつながるのかなど考えながら吹くのがコンチェルト。だからピアノ伴奏で吹くコンチェルトは音楽として本物ではありません。本物の中でコンチェルトを吹いてもらいたい。そこで音楽をどのようにやっているのか、評価したいと考えています。
——
若い人にとってオーケストラと共演するのはいい経験になります。

工藤
そうですね。あとコンクールでは間奏もカットされることもありますが、音楽的にはおかしいですからカットはありえません。カットするぐらいだったら、曲数を減らしてちゃんと吹いてもらうべきです。
またつくばコンクールの特徴としては公式伴奏者がいないことも挙げられます。公式伴奏者がいると、合わせる回数は限られてしまいます。でも数回の合わせでは、演奏者の音楽は出せません。これまでに国内外のコンクールで、いろいろ審査をしてきましたが、長年やっているピアニストとの演奏で、コンビネーションがすばらしい人が何組がいました。それを聴いた時は圧倒され、勉強になったし、僕もああいうふうに吹きたいなと刺激を受けました。それが本当の意味での音楽の演奏です。フルートだけではなくピアノとのアンサンブルも大事です。ピアノは圧倒的に音が多いのにフルートだけを聴いて審査するのはおかしい。そう考えると伴奏者は音楽を一緒にやっている人を連れてきてほしいから、公式伴奏者は用意しませんでした。


——
審査員はどのように選ばれましたか?

工藤
もっと多い人数であるべきですが、最低限の奇数人数にしました。今回お願いした方は、現役で演奏していてさらに留学経験者です。みなさんオーストリア、ドイツ、フランス、アメリカ…と留学先も違う。でも師事した先生方は一流のプレイヤーでした。そういうみなさんは共通した価値観を持っているのではと、お願いしました。
この審査員だったら落ちても仕方ないかな、と自然に思えるメンバーであることも考えました。少なくとも評価してくれる人たちが、受験者にとって信頼できる人であるべきと考えたのです。

——
ジュニア部門も開設されていますね。

工藤
ジュニア部門で1位になった人が何年後かに、一般部門で入賞、1位という流れはコンクールに馴染むのにもいいと思うんです。つくばは将来のことも見据えてジュニア部門も作りました。年齢制限が満たされていればジュニア、一般の両方を受験することも可能です。

——
フルートのコンクールにしては、一般部門の年齢制限が35歳と高めです。演奏活動をされている方もチャレンジできますね。

工藤
そうです。ある程度年齢を経たほうが音楽性も成長していますからね。そういう意味ではジュニア部門もあり、一般部門は年齢制限も高く、間口の広いコンクールといえます。さらに課題曲に現代曲がないことも受けやすい一つの要因だと思います。将来を担う様々な方にぜひチャレンジしていただきたいですね。

 

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ありがとうございました。
 公式サイト:http://tsukuba-flute.com/
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