アルバムをリリース&「世界フルートフェスティバル2025」に出演!
今年9月に「ジャポニスム 宵待草ファンタジー」をリリース、そして年明け2月には、東西の笛が集結し第一線で活躍する奏者が絢爛に共演する「世界フルートフェスティバル2025」に出演が決定している山形さん。様々な経験から得たインスピレーションを優美に演奏へ生かしていく彼女に、アルバムや公演への思いを伺った。
取材協力:ムジカキアラ
ジャポニスムをテーマに選んだ2つの理由
その思いを強くしたきっかけは、パリでのリサイタル後に行なわれたパーティーの会話の中で、「ジャポニスム」という言葉を耳にしたことでした。我々は「ジャポニ“ズ”ム」と言うことが多いようですが、フランス語では「ジャポニ“ス”ム」と発音し、その澄んだ語感がとてもきれいだと思いました。19世紀後半、印象派の芸術家たちの間で日本の浮世絵が人気を博し、彼らの作品に大きな影響を与えたという時代があり、日本の誇る文化が認められたムーブメントは素晴らしいことだと思いました。
その3年後に、パリの同じ会場、そしてバルセロナやザルツブルクで、ピアノと三味線とのトリオ(The Trio)のツアーを行ない、大きな反響をいただきましたが、そのときに日本の文化がいかにヨーロッパで興味を持たれ、熱く迎えられるかということを実感しました。フルートとピアノという西洋楽器に三味線が加わることによって「何か新しい」というように感じていただけたのかもしれません。私にとっては、より日本文化のことを考えるきっかけとなりました。(「The Trio」の)中棹三味線の五世常磐津文字兵衛さんは、江戸の文化を継承され、歌舞伎の舞台にも数多く出演されています。ピアノの菅野 潤さんは、パリを拠点に世界的に活躍されていますが、日本文化にも造詣が深くていらっしゃいます。お二人とご一緒すると、私もさらに日本について深く知りたいという気持ちが高まってきます。
フルートの演奏法についても「鳴らし切る」といった方向性を目指すだけではなく、自分の内側に響かせることをより大切にするようになりました。トリオでのアンサンブルによって意識するようになったことだと思います。
そして1曲だけ、無伴奏の曲が入っています。『水の翼』というタイトルですが、一昨年公開されたドキュメンタリー映画「霧幻鉄道*」のオープニングに私が演奏させていただいている曲なのです。福島県会津から新潟県までを走る只見線は絶景の路線として愛されてきていますが、東日本大震災の年に豪雨被害を受け、5つもの橋が流されてしまいました。その映画は、分断されたことで廃線となる運命にさらされた只見線の復興にかける、人々の熱い思いを追って撮影されたのです。そのタイトルどおり、霧がひとつのテーマになっていて、霧の中で男性が舟を漕ぐシーンから映画が始まります。その静かな世界観の中に「山形由美のフルートのソロが流れてほしい」という安孫子亘監督の希望がありまして、演奏させていただきました。
映画で使われた秦野萌さん作曲のオリジナルは低音域から始まり深みを感じさせてくれる旋律ですが、CDではそれをテーマに、さらに発展させてほしいと安田さんにお願いしたところ、とても聴き応えのある楽曲に仕上げてくださいました。秦野さん、監督、プロデューサーの方もとても喜んでくださり、嬉しく思っています。人々の切なる思いが届き、只見線全線の復興が叶いましたが、さらに盛り上げていこうという活動に私も積極的に参加し、応援歌のような気持ちで、その曲を演奏しています。
*霧幻鉄道 只見線を300日撮る男」:2022年7月公開。2011年に新潟・福島を襲った集中豪雨で被災した、ローカル鉄道「只見線」の復興に尽力する、郷土写真家・星賢孝と地元に住む人々を追ったドキュメンタリー。
インタビューは続きます!
・和ドレスのCDジャケット \ONLINE限定!/
・フルート、三味線、ピアノの“The Trio” \ONLINE限定!/
・何を吹くにもこのフルートで \ONLINE限定!/
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・様々な“笛”の中でのフルート
●山形由美/Yumi YAMAGATA
東京都出身。東京藝術大学音楽学部器楽科にてフルートを専攻、同大学卒業後渡英。これまでに野口博司、故小泉剛、エドワード・ベケット、スーザン・ミラン、トレヴァー・ワイなどの諸氏に師事。またサー・ジェームズ・ゴールウェイには数少ない弟子のひとりとして教えを受けてきている。
1986年キングレコードよりファーストアルバムをリリース、同年第1回リサイタルを開催。92年に再渡欧、さらなる研鑚と海外での演奏経験を経て帰国。
デビュー25周年を迎えた2011年は、セルフプロデュース第2弾となる記念CD「Anthology ~愛のアンソロジー」(イマジンベストセレクション)をバレンタインデーにリリースし、ホワイトデーには初の楽譜集をアルソ出版より発表。
2019年には「The Trio」を結成し、ピアノの菅野潤、三味線の常磐津文字兵衛とヨーロッパデビューを果たした。バルセロナ、パリ、ザルツブルクでは和と洋のコラボレーションによる斬新な取り組みが大きな話題を呼んだ。
35年周年を迎えた2021年には、3回目となるトーク&コンサート「由美の部屋」の開催を始め、自身のプロデュース力を生かしたコンサートを開催。
これまで各地で行なってきた精力的な演奏活動やTV・ラジオ出演などを通じて、フルートに対する人々の関心を広く集め、フルート愛好者を増やした功績は大きく、優れた演奏家としてはもちろん、その枠にとどまらない多彩な活動の幅は、一層の広がりを見せている。
フルートサロン「メゾン・デュ・リエール」主宰。
■CD「Japonisme ジャポニスム 宵待草ファンタジー」
【TTOC-0080】ティートックレコーズ
[販売元]ディスクユニオン
[演奏]山形由美(Fl)、安田芙充央(Pf/作編曲)
[曲目]1.宵待草ファンタジー 、2.早春賦によるポエム、3.竹田の子守歌(日本民謡・安田芙充央編曲)、4.ランドスケープ・オブ・ラヴ、5.ストーリー・オブ・ラヴ、6. 水の翼 ~映画「霧幻鉄道」より(フルートソロ/秦野萌作曲・安田芙充央編曲)、7.さくらフルート幻想曲、8.夏は来ぬによるポエム、9.赤とんぼによるポエム、10.雪の降る街を(中田喜直作曲・安田芙充央編曲)
※1、2、4、5、7~9は安田芙充央作曲
[価格]3,300円(税込)
[購入先]amazon、タワーズオンライン、HMVなど、全国有名CDショップ、オンラインショップにて販売中。
■世界フルートフェスティバル2025
~世紀の笛奏者競演~The World Flute Festival
[出演]ミカラ・ペトリ(リコーダー)、東儀秀樹(篳篥/笙)、山形由美(フルート)、一噌幸弘(能管/田楽笛/篠笛)*2/8(土)出演、藤原道山(尺八)*2/9(日)出演 ほか
[曲目]
※演奏作品は変更となる場合がございます。ご了承願います。
《第一部》
ヨハン・セバスティアン・バッハ:無伴奏チェロ組曲第1番より(ペトリ)、秦野萌作曲/安田芙充央編曲:水の翼~映画『霧幻鉄道』より(山形)、獅子~能『石橋(しゃっきょう)』より(一噌/東京公演)、藤原道山:曙光(藤原/芦屋公演)ほか
《第二部》
D.ショスタコーヴィチ:「2台のヴァイオリンとピアノのための5つの小品」より(ペトリ&山形)、G.カッチーニ伝/V.ヴァヴィロフ作曲:アヴェ・マリア(東儀&山形)、坂本龍一:東風(ペトリ、東儀、山形/東京公演 ペトリ、東儀、山形、藤原/芦屋公演)ほか
◆東京公演
[日時]2025年2月8日(土)13:30開場 14:00開演
[会場]紀尾井ホール
◆芦屋公演
[日時]2025年2月9日(日)14:00開場 14:30開演
[会場]ルネサンスクラシックス 芦屋ルナ・ホール
[料金(一般販売/全席指定・税込)]
東京公演:7,000円 ペアチケット13,000円
芦屋公演:5,500円 ペアチケット10,000円