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運命に導かれ、パワフルかつ繊細に ボビ・ハンフリー

THE FLUTE 155号 Cover Story

ボビ・ハンフリーは、ほぼ初めての女性ジャズ・フルート奏者だ。1971年にプロ・デビューを果たし、アメリカにおけるアフリカ系国民の権利獲得や女性解放活動などといった時代の波に乗って、そのアイコン的な存在となっていった。何よりも抜群の可愛さと、アフリカ系の象徴であるようなアフロ・ヘアが大きな特徴だった。そんな彼女の個性は、当時の彼女のリーダー・アルバムのジャケット写真でも確認できる。70年代初期からの大活躍だったが、不思議と来日回数の少ない人でもあった。だから、この秋ブルーノート東京で行なわれた日本公演は貴重な機会だったのである。じっくりと話を聞いた。
インタビュー・文:櫻井隆章/写真:土居政則/取材協力:ブルーノート東京

「世界中が君の名前を知るようになる」

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お生まれはテキサス州のダラスですよね。
ハンフリー(以下H)
ダラスではなくて、テキサス州の中央部にあるマーロンという街なの。そこで生まれて、南テキサス大学に行ったのだけど、途中からダラスにある南メソジスト大学に移ったのね。最初にプレイした楽器はリコーダーよ(笑)。5年生、10歳の時ね。フルートを始めたのはダラスにある高校に入った時で、15歳だったわ。 子どもの頃、夏のコンサート・シーズンにダラス交響楽団のコンサートに行って、『ピーターと狼』を聴いたのだけど、その時のフルートの音色に魅了されたのね。私の兄がクラリネットをプレイしていて、それにも興味はあったのだけど、先生に「あのキラキラ光っている楽器は何ですか?」と訊いたのよ。そうしたら「あれはフルートと言うんだ」ですって。それが確か6歳か7歳の頃でね。その後にリコーダーを手にしたわけだけど、ずっとフルートには憧れを持っていたのね。最初にお手本にしたフルート奏者は、ヒューバート・ロウズだったわ。
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たしか、彼も“テキサン”(テキサス出身者のこと)でしたよね?
H
あら、良く知ってるわね! そうよ、彼もテキサス出身よ。ロウズ・ファミリーには優れたミュージシャンが多いわね。他に聴いていたのは、ジェームス・ムーディーに、ジェローム・リチャードソンとかエリック・ドルフィー、それにもちろんハービー・マンね。
ボビ・ハンフリー
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その当時、女性のプロのフルート奏者って、いたんですか?
H
いや、まったくいなかったわね、残念ながら。私がブルーノート・レーベルと契約した最初の女性フルート奏者だけれど、他にはいなかったわ。ただね、きっかけがあったの。私が南メソジスト大学の4年生だった時にコンテストがあったのね。当時の私は大学のジャズ・バンドで演奏していたのだけど、その際に私が最優秀ソロイスト賞を受賞したの。その時の審査員の一人がディジー・ガレスピーで、彼は私に投票してくれたのだけど、コンテストの後で私に「君はニューヨークに来なさい。そうしたら、世界中が君の名前を知るようになるよ」と言ってくれたのよ。すごい言葉でしょ? だって、まだまだ何も知らないシャイな大学生だった私が、世界的なジャズ・トランぺッターであるミスター・ガレスピーからそんな言葉をかけてもらったら、そりゃ舞い上がるわよね? 「ニューヨークには、アポロ劇場というところがある。そこでは『アマチュア・ナイト』という催しがあって、名前を上げるには良いチャンスだよ」ともね。
当時の私は運転免許を持っていなかったのよ。ロサンジェルスに行ったとしたら、車を運転しなければどこにも行けない。でもニューヨークだったら地下鉄があるから、地下鉄の乗り方を覚えれば大丈夫だ、ということもあったわね。それでニューヨーク行きを決めたの。これが1971年のこと。私は21歳だったわ。(次のページに続く)

次のページの項目
・デューク・エリントン、ハービー・マン……出会いは映画のように
・大スターの気さくな横顔
・LIVE Report

Profile
ボビ・ハンフリー
ボビ・ハンフリー
Bobbi Humphrey
1950年4月25日、米国テキサス州マーリン生まれ。ジャズ/フュージョン系の黒人女性フルート奏者。ニューヨークに進出後、ヒューバート・ロウズに師事。71年、ブルーノートより初リーダー作『フルート・イン』を発表。その後も『ブラックス&ブルース』(73年)など、70年代のブルーノート・レーベルを彩るソウルフルな作品をリリースし続けた。また、76年にはスティービー・ワンダーの代表作『キー・オブ・ライフ』に参加。2004年にはレア・グルーヴ・ムーヴメント再評価の波に乗り、来日も果たした。

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