第27回|「生まれ来る子供たちのために」
こんにちは! 2本のフルートとピアノのトリオ【kokoro-Ne(ココロネ)】です。このコーナーも6年目となりました。今シーズンもよろしくお願いいたします。
パリオリンピック中に2022北京オリンピック団体の銀メダル授与がありましたね。改めておめでとうございます。メンバーの一員として日本のアイスダンスを支え、4月に競技引退を発表した小松原美里さん。尊さんとチームココの愛称で親しまれてきた2人の心温まるプログラム「生まれ来る子供たちのために」をご紹介します。
オフコース、小田和正
1967年〜1989年まで活動したオフコース、そのメンバーの小田和正さん。日本の音楽を語る上で欠かせない存在です。
のぞみ:我々世代は「🎶あ〜の〜日あ〜の〜時〜」だよね!(月9のドラマだったから) 火曜日は学校に行くと「カーンチ!!」ってみんな言ってた(笑)。あのイントロが流れてくるだけで分かっちゃう。ホントすごいことだと思う。あのドラマがあそこまでヒットしたのは曲の力もあるよね。私は最終回に納得してないけど(笑)。
なつき:あと小田和正さんの声は唯一無二よね。あの声が流れてきたら自然と耳が傾いちゃう。
まゆ:私は鈴木康博さんと2人編成時代のオフコースの曲が好きだな。70年代の洋楽の香りがする作風で。
オフコースのLiveアルバム『秋ゆく街で』(1974年)の冒頭2曲を聴いてびっくり。70年代のSoul〜Popsのカバーばかりじゃありませんか! 私のストライクゾーンとドン被りで、きっとこの方たちの作る音楽もツボだろう。と他のアルバムを聴き始めたのがきっかけです。
以下、個人的お気に入りの中から↓
『別れの情景(1)』
サビ前のコードチェンジが今聴いても垂涎もの。そこだけ擦り倒すくらい好きです(もちろん全編好きです)。当時聴いた人はもっと衝撃が大きかったのではないかと思います。
『ワインの匂い』
美メロとオシャレサウンド、切なく余韻のある歌詞も素敵です。
『地球は狭くなりました』
ギターのカッティングとコーラスにCrosby, Stills & Nash系のかっこよさを感じます。
『すきま風』
秒で(高橋)幸宏さんとわかるハイハット♡「Alone Again/Gilbert O'Sullivan」ぽいピアノもよき。
『水曜日の午後』
イントロのピアノから名曲確定オーラが隠しきれない爽やかな名曲。スターダスト☆レビューのカバーも圧巻のコーラスワークが拝めます。
『生まれ来る子供たちのために』
1979年に大ヒットした「さよなら」に続くシングルとして、オフコースのアルバム『Three and Two』から1980年にシングルカットされました。小田和正さんのソロでセルフカバー、佐藤竹善さん、BANK BAND(ミスチルの桜井さんがヴォーカル)、辛島美登里さんなど、歌い継ぐアーティストが多い名曲です。
オフコースバージョンは、全編エレピのバックと重厚なコーラスのサウンドがメッセージをより一層強く訴えかけている印象があります。個人的な萌えポイントは、この曲の構成です。
※この曲や、クリスタルキングの『大都会』(←2回もある!)のように、サビお預けがある構成を【私的感情爆上げ方式】と思っています。
小松原美里&小松原尊組(チームココ) 2020-22 Ex
ココ組のプログラムでは小田和正さんのソロバージョンの音源が使用されています(2005年リリース『たしかなこと』のカップリング曲)。オフコース版よりもバラード色が強めに始まりますが、強かにGroove感も持ち合わせた秀逸なアレンジです。上記の構成を踏まえて、ココ組の演技とも楽曲に追っていきます(是非原曲を聴いてみてください!)。
イントロの雨音の部分はカットされて、約16秒後のフレーズが動き始めた所から使用されています。ピアノに被せたストリングスの2拍3連「ラソラソラソ」に合わせるように円を描きながら進み、スピン。美しい……
本来ならこの次にあの美声でAメロ「♪おーおくのー♪」となるはずですが、まさかの!!!!
……間奏に飛ぶ。
ただでさえサビのお預けがある曲なのに!! 小田さんの声、そう簡単に聴かせてくれません(笑)。
元の構成を知ってるだけに「ぎゃあああ、そう来るか!!」となります。語彙喪失。
(音源編集した人に会ってみたい)
ちなみに、カットされたAメロ①はピアノと小田さんのデュオ、2回し目にうっすらシンセなどのおかず、Bメロ①はギターと金物などのアクセントが加わり多少サウンドが厚くなってます。
間奏は、低く落ち着いた大人な音使いのギターソロのフレーズにストリングスや鍵盤系が厚みを出しています。この雰囲気が美里ちゃんと尊くんの一歩一歩や、ぱっと手を広げる動きにとっても合っているんです。
見惚れているうちに間奏明けとBメロ②。待ちに待った小田さんの声が初登場です。しかも、楽器陣が抜けて、ほぼヴォーカルのどソロになる所。こういう初出しの仕方ありますか(音源編集した人に会ってみたい。2回目)。
小田さんの声だけがリンクに響き渡る状態でリフト、ツイズル。特にサビ前に1小節サウンドが抜けるところの2人の回転が、サウンドの一部になってサビまでの4拍を刻んでいるようで心を擽られます。
そして、サビの♪きみを♪
あああああ、ここの♪ファーソラー♪がもう……個人的に小田さんの声の中でも一番好きなゾーンかも知れません。無双感はんぱない。サウンドもストリングスの裏メロ主張が強まり、ピアノのGroovyな動きでじわじわと熱量を上げてきます。そこに2人の優しく包み込むような演技が重なり、サビの2回し目に差し掛かりながらローテーショナルリフト。ギターのカッティングも加わって推進力が増します。リフトの後の♪集まる♪で手を取って→♪ひとり♪でまた離れて交差して、という歌詞とのリンクも素敵です。
曲は静かなAメロ②に戻ります。帆を上げて旅立つ船のように上げた美里ちゃんの足と二人のきれいなスパイラル。リフトも一連の動作が滑らかで、終わりゆく曲調とぴったりです。勇気だけじゃなく、どっぷりと感動を与えてもらえます。曲を知らなくても十分味わえますが、聴き込んでから観るとあちこちで悶絶できるプログラムです。
素敵な演技をありがとうございました。これからのお二人の活躍も楽しみにしています。
演奏動画
kokoro-Neではオフコースバージョンで演奏してみました。
歌物のカバーについては何回かその手強さに触れてきましたが、歌詞の欠落と合わせて大きな壁と感じているのが【半音の間の音】の存在です。
冒頭「おおくの⤴︎」サビの「きみを⤴︎」みたいな音程の移動が、弦楽器やトロンボーンのように間の音を出せないフルートやピアノにとっては大敵なのです。半音で区切って表現すると機械的でぎこちなくなったり、装飾音をひっかけるといやらしくなってしまったり…… 。
この曲に関しては、歌詞で音程を区切った器楽的な歌い方をしても、それはそれとして成立しそうなメロディだったので、完コピに近い感じで再現してみました。小田さんバージョンも素敵なので、いつか演奏してみたいです。
楽譜とCDのご紹介
フルート、アルトフルート(または、フルート2本)とピアノのための『生まれ来る子供たちのために』オフコース(小田和正)
kokoro-Neの楽譜はkokoroneshopでお求め頂けます。
kokoro-Ne(ココロネ)プロフィール
門井のぞみ・大和田真由・田仲なつきによる、2本のフルートとピアノのトリオ。
クラシックで培った確かな技術と表現力を基に、色彩豊かなアレンジやハイレベルな演奏で好評を博している。
2007年結成当初より、ジャンルを超えたレパートリーに挑みながらも、リズムセクションや打ち込みなどを敢えて加えず室内楽トリオの可能性を追求し続けている。
TPOに合わせた演奏を得意とする一方、CD・楽譜・オリジナル作品の発表にも力を入れており、オーディエンスはもとより多くのプレイヤーからも支持を得ている。
・2009年 1st Album 「 kokoroーNe/ココロネ 」
・2013年 「 コンサートで使えるフルートデュエット曲集kokoro-Ne編 」(ドレミ楽譜出版社)初版以降も増刷を重ね、ロングセラーとなる
・2016年 2nd Album 「 Microcosmos 」
同収録のオリジナル曲「 ミクロコスモス 」楽譜出版
・2017年 楽譜出版「 kokoro-Ne Library 」を立ち上げ、これまでに30タイトルを超える楽譜を発表。続々と新作発表を控えている。
kokoro-Ne公式HP https://www.kokoro-ne.net/
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