クラリネット記事
Close Up Interview

本濱寿明 & 岡本知也 インタビュー Part.2

1+1=……3?

ピアノも弾けるからこそ

本濱
クラリネットの人はあまりやらないかもしれませんが、コンクール前に職場のグランドピアノでひたすら和声を取っていました。一ヶ月くらい。テンポもめっちゃゆっくりにして。
それで、音を聴きながらこの和音のときはどんな感じで弾きたいだろうか、ということを考えていました。
クラリネットの人は、自分の音、発音、音色、音程とかをとても大切にしていると思うんです。でもそれがそのまま曲の彩りに直結するかっていうと、結構別な物が多いんじゃないかと。僕はすごく華やかに吹きたいと思っていたところをピアノが実は繊細だったり。
岡本
秋吉台音楽コンクールって、ホールと宿泊棟がある合宿形式でやるんです。練習室もあって合わせの時間もたっぷりとれるので、それこそ中高生みたいにめちゃくちゃゆっくりにしてひたすら確認するとかやったよね。
本濱
部活みたい。
岡本
やれることは全部やった感がある。
本濱さんがピアノを弾けるからこそのアプローチですね。
本濱
1+1=3にするための一つのものだと思います。両方の気持ちを理解するところは大きいかな。逆にバレると言いますか、全然ピアノの譜面見てないんだなっていうことは絶対あると思うので。
岡本
確かに、思うときある。

自分に正直に。

北九州市消防音楽隊に入隊された経緯を教えてください。
本濱
入団したのは2015年4月でした。2014年ごろに家族が相次いで大病を患いまして、このままだと実家に帰って音楽以外の仕事をしながら家を助けてくれと言われかねない状況だった。なのに、それでも音楽をするにはどうしたらいいかって考えてたんですよ。
そうしたら、大学の後輩が北九州市消防音楽隊を辞めるから枠が空くと言ってくれたんですね。もうしめたと、楽器やりながら公務員をできるのであれば薬剤師にしたがっている親父が反対するわけがないと思ったんですね。
それから、当時は東京でフリーランスとしてやっていましたが、正直うまく演奏ができなくなってたんです。どちらかと言うと、自分に正直に演奏するのではなくて周りに気に入られたいと思いながら演奏していました。そうしたら、先ほど話に出た岡本さんの真ん中突いた方が、僕の心に風穴ぶち抜いたんです。「お前気に入られようとしてんだろ」って。
当時の僕にはそれを持つキャパがなかった。でも、楽器は続けたいし、家族のこともあったので、せめて一回楽器で給料もらえるようになろうと。その頃は、もう周りからどんなふうに思われているのかが気になりすぎて、吹奏楽のリハーサルで5分吹いただけで着ていたものが汗でぐしゃぐしゃになってました。
だけど入隊してからは、お役所勤めで給料があるからなのか、安心して演奏できた。自分に正直に悔いなく演奏できるためにはどうすべきかを考えさせてくれた場所です。
音楽ってすごく難しいと思うんです。お金をいただくにあたってやっぱりクオリティを高めて、皆さんにいいと思ってもらわないといけない。でも、それが本当に自分のやりたいこととイコールなのかどうか、という。だから僕は、2015年から今日まで、「正直かつちゃんと人にお聴かせできるものとはなんなのか」をずっと考えながらやっています。
クラリネットのセッティングを教えてください。
本濱
ついに来ましたね、ザ・クラっぽい。
バックーンの「Lumiere」、グラナディラ材でキィはゴールド。マウスピースがB40、リガチャーがブルズアイのルージュ 逆締め、リードはV.12の3半。
岡本
みんな言ってたよね、「楽器、派手」って。
本濱
自分も最初は派手だなぁと思いましたが、周りの方から「アンティークみたい。持って舞台にあがるだけで非日常感がある」って言ってもらえて。
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