クラリネット記事
Close Up Interview

本濱寿明 & 岡本知也 インタビュー Part.2

二人でしかできない

真っ向リベンジ

秋吉台音楽コンクールの本選で、ブラームスの『クラリネット・ソナタ 第2番』を選んだ理由や想いを教えてください。
岡本
このコンクール、3回受けてるんです。
本濱
全部2番でしたよね。
岡本
全部そう。男は黙って2番とかわけわかんない理由で。結局、1番にしようという選択肢はなかった。なんか、逃げちゃいかん、真っ向からリベンジをしなければならない、みたいな。
リベンジのスタンスでしたか?
本濱
岡本
そうそうそう。
本濱
それ以外のなにものでもない。
リベンジに成功したときはどんな気持ちでしたか?
本濱
正直、僕個人としてはあの演奏相当嫌いなんですよ。なんでかっていうと、あの演奏は僕の中では逃げ腰だったんです。
冒頭の主題は、今まで演奏してきた中で一番上手くいって、すごく嬉しかったんです。その2拍後に「え、この後どうしよう」って。
今までの傾向から、僕は最初に緊張して後から上手くいくっていうイメージが自分の中にあったので、いかに最初にその曲の世界や自分の思っていることを伝えきれるかっていうことをずっと考え続けてたと思うんですね。だからまぁ、最初に上手くいったと思ったらその後に「今ブレスしたけどその後クラリネットってどうやって吹くんだっけ」ってなって。
岡本
どうしたらいいか分かんない。
本濱
そういう感じなので、終わって礼をしたときにもう泣いてんですよ。「俺は一体何年経ったらいい加減にちゃんと楽曲が吹けるようになるんだ」みたいに。だから、賞を獲ったときに嬉しかったけど、なんていうんでしょうね……。
岡本
本濱としてはもっと最善を尽くせたはずっていう心残りがあるんだろうな、ということはその後のやり取りで感じました。弾いてるときは全然そんなことなく、なんだろうなって思いましたけどね。
本濱
後から思い返すと、あのときはちゃんとやれることを精一杯やってたんです。でも、終わった瞬間は悔いが残ってたんですね。悔いを残さないようにと思って受けたコンクールで悔いを残したかもしれない、と思ったときの悲愴感っていうか……俺には結局スパッとやりきった! 最高!みたいな瞬間はないんだなって、ただただへこみました。
でも、やっぱりちゃんとやれることはやったし、逆にそこで少しやり残したからこそ「また一緒にブラームスやりましょうね」と、またこれからも続いていくことに繋がったと思います。
岡本
本選が終わった、コンクールから解放された、賞もいただけた、よかった。というのはもちろん時系列にあって、でもそれに応じて、またここから始まるという気持ちがどんどん濃くなる。
ただ、「上手くいった。賞も良かった。おめでとう。あーよかった」とならなくてよかったな、と。

予測不能な化学反応

アンサンブルの楽しさとはなんだと思いますか?
岡本
もともと、それこそピアノって一人で完結する機会ばっかりの人種で、数多くのレパートリーが一人で弾ける。でも自分以外の人間がいると、言葉を交わさないにしてもコミュニケーションがあるじゃないですか。予測不能なことが絡んでくる、自分のコントロール下にない状況を面白がれるんですね。普段一人で弾いてる楽器からすると、やっぱりそれが大きい。リハーサルや、なんなら本番でアイデアをもらう、仕掛けあったり、フォローしあったりと、いろいろあるので。
生身の人間が複数いる面白みがあると、「あー、生きてるな―」って
本濱
一人でやると自分の中で完結するっていう安心感はあるけど、新しい気づきっていうのはないんですよね。もれなく1+1=2になる人と、1+1=3とか4にしてくれる人がいて、僕はその化学反応が楽しくてずっとやってるというのはあります。
二人でやったもので、二人でしかできない言葉になってお客さんの耳に届いていくということが最大の良さなんじゃないかと、僕はすごく感じますね。
ありがとうございました。


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また、今回の秋吉台音楽コンクールの結果を受けた“ご褒美コンサート”が、以下の日程で予定されている。

◯2024年2月10日(土)
場所:ドルチェ楽器 東京店

◯2024年2月25日(日)
場所:ドルチェ楽器 大阪店

こちらも要チェックだ!

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