クラリネット記事
The Clarinet vol.65 Cover Story│アンドレアス・オッテンザマー

クラリネット界の貴公子、7年ぶりに登場!

The Clarinet 36号では父エルンスト、兄ダニエルと表紙を飾った

2017年7月22日、クラリネット界を揺るがすニュースが飛び込んできた。ウィーン・フィル首席クラリネット奏者エルンスト・オッテンザマー氏が急逝。国内でも多くのクラリネット奏者が彼の業績を悼んだ。しかし、父エルンスト氏の急逝にも関わらず予定通りアンドレアス・オッテンザマー氏は来日を果たした。クラリネット界、そしてクラシック界の貴公子とも称される彼に、エルンスト氏との思い出、2017年10月から12月にかけて日本で行なわれた演奏会、そして彼が現在取り組む「マンハイム楽派」の楽曲に取り組んだニューアルバム「New Era」について大いに語ってもらった。
写真:橋本タカキ 取材協力:ヒラサ・オフィス 通訳:井上裕佳子

一緒にステージに上がれたことが一番の思い出

去る7月22日にお父様で偉大なクラリネット奏者でもあったエルンスト・オッテンザマー氏が他界されました。このニュースは日本でも驚きと悲しみをもって報道されました。
アンドレアス・オッテンザマー(以下O)
ご存じかとは思いますが、私は音楽的な一家の中で育ちました。特に楽器という意味で一番大きな影響を受けたのはもちろん父でした。やはり思い出というと一緒に演奏したこと、一緒にステージに上がって演奏できたことが一番特別に感じます。
そのような状況にも係わらずほぼ予定通りに公演を続けられていらっしゃいますね。
O
ご想像がつくとは思いますが、このように演奏活動を続けるのは楽なことではないです。しかし自分が楽しいと思っていることを辞めるのは誰のためにもならないし、自分自身もそれで癒されるということはまったくないわけですから。なんでもそういう時には役に立つと思っています。人生は止められるものではないですし、すべてのことが自分が前進するために役立っていると思います。

伝統を未来へつなぐ責任

本日は新日本フィルとのリハーサル中ですが、手応えはいかがでしたか?(編集部註:取材は2017年10月2日に行ないました)
O
今回共演するのはカール・シュターミッツの協奏曲です。いま自分が取り組んでいるプロジェクトで、新しいアルバム「New Era」にもこの曲を収めています。このレパートリーは特にクラリネットにとって重要なレパートリーなので、新たな光を当てることが重要だと思っています。日本の皆様の前でこの曲を演奏するのは初めてなのでとても楽しみです。
アンサンブル・ウィーン=ベルリンはベルリン・フィル、ウィーン・フィル、ウィーン交響楽団という名だたるオーケストラの首席奏者によって編成されていますね。2013年から現在の若返ったメンバーで活動されていますが、このメンバーたちと木管五重奏をどのように発展させていきたいと考えていますか?
O
私が入ったのは2015年なので一番新しいメンバーとなります。この伝統的で有名なアンサンブルの一員に選ばれたことは自分にとって非常に大きな光栄です。そして遺産を将来につなげていく大きな責任も感じています。ウイーンとベルリンのオーケストラのソリストたちが集まって、もっとも純粋な音楽の形である室内楽を演奏するということは大きな機会であるのと同時に、責任でもあるのです。けれども私たちにとっては音楽を楽しむということが一番重要なことです。そしてこのアンサンブルは長い伝統がありますが、日本に来ることは定番になっているので今後も続けていきたいです。メンバーは忙しく、多くのコンサートはこなせませんが、1年の中にやりたいいくつかの特別なコンサートがあります。今後もそういうふうに自分たちでコンサートを選んでいきながら、定期的に演奏を続けていきたいと思いますし、日本に来ることは優先順位のトップにあることは間違いないですね。

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・クラリネット、そして音楽史における「新時代」

Andreas Ottensamer アンドレアス・オッテンザマー
1989年、オーストリア・ハンガリー系の音楽一家に生まれる。早くから音楽に親しみ、4歳でピアノを始め、10歳になるとウィーン国立音楽大学でチェロを学び、2003年にクラリネットに転向、ヨハン・ヒントラーに師事した。その間、ピアノ、チェロ、クラリネットの各楽器で数々のコンクールにて優勝を果たす。その後、ウィーン国立歌劇場管弦楽団、ウィーン・フィル、グスタフ・マーラー・ユーゲント・オーケストラで、オーケストラ奏者としてのキャリアを開始。2009年、ハーバード大学在学中にベルリン・フィル・オーケストラ・アカデミーに入学。その後わずか21歳で、ベルリン・フィル首席クラリネット奏者に就任。現在、世界で最も注目を集めるスター・クラリネット奏者として活躍をしている。
室内楽奏者としても、ペライア、アンスネス、カヴァコス、ヤンセン、ヨーヨー・マ等と共演しているほか、アンサンブル・ウィーン=ベルリンのメンバーとしても活動。また、スイスのビュルゲンシュトック音楽祭の芸術監督をピアニストのホセ・ガヤルドと共に務めている。
2017年2月には、名門デッカとクラリネット奏者として初めて専属レコーディング契約を結び、デビューアルバム「New Era」をリリースして話題となる。

CD Information

「New Era~18世紀のクラリネット作品集」

【UCCD-1451】ユニバーサルミュージック
[価格]¥3,000(税込)
[収録曲]ヨハン・シュターミッツ:クラリネット協奏曲変ロ長調、ダンツィ:クラリネットとファゴットのためのコンチェルティーノ 変ロ長調 Op.47(クラリネットとコールアングレ編曲版)、モーツァルト:歌劇『ポントの王ミトリダーテ』より二重唱「月桂冠を頂いて」(バセット・クラリネットとフルート編曲版)、ダンツィ:モーツァルト『ドン・ジョヴァンニ』の『お手をどうぞ』による幻想曲、モーツァルト:歌劇『ドン・ジョヴァンニ』より『ぶってよ、私の愛しいマゼット』(バセット・ホルンとフルート編曲版)、カール・シュターミッツ:クラリネット協奏曲第7番変ホ長調
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