クラリネット記事
The Clarinet vol.71 Cover Story

王 弢×橋本眞介

2019年9月5日、ヤマハミュージック名古屋店にてマスタークラス&ミニコンサートを行なうために、北京・中央音楽学院で教授を務めるワン・タオ(王 弢)氏が来日した。この日は現在、名古屋音楽大学で准教授を務める橋本眞介氏も駆けつけ、日中トッププレイヤーによる対談が実現。中国・日本のクラリネット事情や、ヤマハ・クラリネットの魅力などクラリネット談義に花が咲いた。 
取材協力:ヤマハミュージック名古屋店、ヤマハ株式会社 写真撮影:橋本タカキ

クラリネットは競争率が低い!?

ワン・タオさんの出身地は中国のどちらですか?
ワン・タオ(以下、ワン)
四川省出身です。自然環境が豊かな美しい町で、なにより食べ物がおいしいですね。
 
日本人も四川と聞くとまず、食べ物を思い浮かべると思います。ワン・タオさんがクラリネットを始めたきっかけは?
ワン
クラリネットを始めたのは小学3年生、9歳のときですが、5歳のときからチェロを習っていました。そのチェロの先生に「小指が曲がっていて伸ばしきれていない」と指摘され、チェロには向いていない指だということがわかりました。それでクラリネットを勧められて始めたのです。このときは個人レッスンでしたが、音楽大学付属の中学校に入り、それからは学校でクラリネットを学びました。
 
中国ではクラリネットがさかんなのでしょうか?
ワン
私が学生だったころよりもクラリネットを学ぶ学生は増えています。実は私がクラリネットを始めるとき父が「クラリネットのほうが競争率が低い」と言っていました(笑)。チェロよりも学んでいる人が少なかったので、この道を進めばいいのだと思ったのですが、意外と競争率が高くて騙された気分です(笑)。
現在の中国では各学校に吹奏楽部があります。クラリネットは吹奏楽で重要な楽器なのでたくさんの生徒がクラリネットを吹いています。
 
日本では吹奏楽コンクールが毎年開催されているのですが、中国でもコンクールは開催されていますか?
ワン
中国は国土が広く人口も多いので、各地域で開催されるコンクールは数え切れないほどあります。主に地域や企業が主催しているのですが、日本のように全国規模で行なわれるコンクールは少ないです。広大な国土を持つ中国では、全国大会となると国が主催しないとまとまりません。そのため、1年ごとの開催は難しく2~3年に1回開催されています。
 
橋本さんは長年オーケストラに所属されていましたが、現在は後進の指導を積極的に取り組んでいますね。
橋本眞介(以下橋本)
広島交響楽団に27年間在籍しましたが、教育活動に専念したかったので2016年3月に退団しました。現在は、名古屋音楽大学の准教授を務めています。名古屋は縁もゆかりもなく知り合いもまったくいなかったのですが、新しい人生を歩むという意味では知らない場所のほうがかえって面白いかなと思ったんです。
日本の現状はいかがでしょうか? 以前より学校の吹奏楽部のクラリネット吹きは増えていますか?
橋本
今はトランペットやサックスに人気が集中しています。実際に吹奏楽コンクールでもクラリネットよりトランペットのほうが多い学校もあります。昔は先生が上手く学生を振り分けていたのですが、今は生徒がやりたいと思っている楽器を優先している印象です。それが普通かもしれませんが、ある学校はクラリネットが少なすぎて金管の音しかしないような感じになっていたりします。

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・センセーショナルな演奏
・モパネの音色は素晴らしい

王弢(ワン・タオ) Wang Tao
クラリネット奏者。四川省成都市生まれ。現中央音楽学院教授、修士課程指導教官、シンガポールラッフルズ音楽院客員教授。2018年度Yamahaアーティスト、ドイツG.Henle出版社プロモーション大使。11才より国内外の舞台で活躍。中国、アメリカ、フランス、オーストリア、日本、香港、台湾など多数の国や都市で何度もソロコンサートを開催。これまで中国フィルハーモニー管弦楽団、北京交響楽団、杭州フィルハーモニー管弦楽団、中国青年交響楽団、ハルピン交響楽団、四川フィルハーモニー管弦楽団、中央音楽学院交響楽団、深セン フィルハーモニー交響楽団などと共演してきた。文化部主催の第二回全国コンクール第一位、中国作品演奏賞に選出。「情熱にあふれ、人々を惹きつけるステージ、卓越した技術、他にはない個性を持つ演奏家」と称賛されている。10枚を超えるCDを国内外で同時リリースし、様々な音楽のフィールド、芸術の枠を超えた各種大型の音楽賞を多数受賞。また、国内外トップレベルの各芸術の舞台でパフォーマンスをいくつも行なってきた。向振竜教授、喩波教授、張梧教授、陶純孝教授に相次いで師事。「イタリア政府芸術奨学金」を獲得しているほか、イギリス王立音楽院にてクラリネットを大家マイケル・コリンズ(Michael Collins)教授に学んだ。教育部の「青年中堅教師」プロジェクトの支援を受け、高級訪問学者としてアメリカのニューイングランド音楽院(NEC)でも造詣を深め、世界的クラリネット奏者リチャード・ストルツマン(Richard Stolzman)教授に学んだ。その後、同氏の招聘を受け日本巡回公演のゲスト演奏者となっている。

橋本眞介 Shinsuke Hashimoto
香川県出身。高松第一高等学校音楽科、武蔵野音楽大学を卒業後、シエナウインドオーケストラを経て、広島交響楽団に入団。NHK-FM洋楽オーディション合格。NHK-FMリサイタル出演。1995年よりロータリー財団奨学生としてドイツ国立リューベック音楽大学に留学、クラリネットをザビーネ・マイヤー教授に師事。同大学修了試験を最高点で卒業。1997年帰国し同楽団に復帰。以後、NHK交響楽団等主要オーケストラに首席客演奏者として出演。ソリストとしては1992年~2016年に渡りたびたび広響とモーツァルトの協奏曲等を共演。1999年10月よりTSSテレビ新広島の音楽プロデュース。主宰する広島クラリネットアンサンブルより「タナトス」「チャールダシュ」「暁の変容」の3CDを㈱ブレーンよりリリース。第30回広島県民文化奨励賞受賞。全国各地でのクリニック、吹奏楽コンクールやアンサンブルコンテスト等の審査など幅広く活動。 現在、名古屋音楽大学准教授、活水女子大学客員教授、エリザベト音楽大学、明和高校音楽科、同朋高校音楽科各非常勤講師、ヤマハオフィシャルクラリネットアーティスト、日本クラリネット協会理事、広島クラリネットアンサンブル主宰、なにわオーケストラルウィンズ、CrazyClassixメンバー。
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Twitter https://twitter.com/shinsukeH

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