フルート記事
THE FLUTE vol.186 Close Up

J.S.バッハのアルバムをリリース、そして東京・春・音楽祭への出演│柴田俊幸

ベルギーを拠点として、ヨーロッパや日本で活躍している柴田俊幸氏がバッハのアルバムをリリース、さらに4月には東京・春・音楽祭に出演する。バッハへの思いを訊くインタビューとなった。

バッハという強靭な土俵の上で創造(クリエーション)すること

1月に発売されたアルバムにバッハを選ばれた理由は?
柴田
2019年に発表したCDでは、自分自身のライフワークであるカール・フィリップ・エマヌエル・バッハ(バッハの次男)の作品を取り上げました。ちょっとマニアックだったかもですが……。今回は、自分の活動の中で最も重要視している「古楽というジャンルをより多くの人に知ってもらう」という目標を実現するために、クラシック音楽ファンでも、そうでない方でも知っている作曲家を選びたいと思っていました。
共演者のアンソニー・ロマニウクと一緒に録音の話が出た時に、彼の口から出て来たのがJ.S.バッハでした。大作曲家であるし、多くの名盤が存在するこのレパートリー。自分自身はまだ若いし今じゃない、という気持ちもありましたが、いろいろなジャンルを超え、ヨーロッパで飛ぶ鳥を落とす勢いで活躍しているロマニウクとならば、何か面白いアルバムができると思い、一緒に録音することを決めましました。
柴田さんはバッハのどんな部分に魅力を感じますか?
柴田
普遍性ですね。時空を超えて愛される。すべてのジャンルの音楽家に崇拝される作曲家って、他にいませんよね。すべての人間の心を鷲掴みにできる音楽の構築力。バッハはどのような解釈で演奏されても本質がねじ曲がらないほどの強靭な建築だと思います。古楽器奏者が演奏しても、グレン・グールドやマルタ・アルゲリッチが弾いても、キース・ジャレットや秋吉敏子が弾いても、バッハの音楽の美しさは残ります。無駄な音がひとつも存在しない。素晴らしくデザインされています。
そのバッハの音楽を自分自身のフィルターを通して再現することに喜びを感じます。古楽を勉強することでバッハの時代の習慣を理解し、その一方で、21世紀の現代に生きる音楽家として何が表現できるのか。答え探しをしたものではなく、バッハという強靭な土俵の上での創造(クリエーション)を今回は心がけました。

 

次のページの項目
・翌日には前日よりも上手くなっている自信がある
・即興は朝飯前だった

 

CD information

NYCX-10272
J.S.バッハ:フルート・ソナタ集 ほか
【NYCX-10272】(日本語解説付)発売中
[価格]¥2,970
[演奏]柴田俊幸(フラウト・トラヴェルソ)、アンソニー・ロマニウク(チェンバロ、フォルテピアノ)
[収録曲]バッハ─ロマニウク─柴田:サラバンドによるファンタジア(無伴奏フルートのためのパルティータ BWV 1013による)、バッハ:フルート・ソナタ ホ長調 BWV 1035、バッハ:フルート・ソナタ ホ短調 BWV 1034、ロマニウク:インプロヴィゼーション、バッハ:フルート・ソナタ ロ短調 BWV 1030、バッハ−ロマニウク−柴田:アンダンテによるファンタジア(トリオ・ソナタ 第4番 ホ短調 BWV 528による)
[録音]2021年5月25-27日 ブリュッヘ・コンセルトヘボウ大ホール

Concert information

東京・春・音楽祭 柴田俊幸&アンソニー・ロマニウク
[日時]4/18(月)19:00開演
[会場]東京文化会館 小ホール
[出演]柴田俊幸(フラウト・トラヴェルソ)、アンソニー・ロマニウク(チェンバロ/フォルテピアノ)
[料金]S¥5,000 A¥3,500 U-25¥1,500
[問合せ]東京・春・音楽祭実行委員会 事務局 03-5205-6497
https://www.tokyo-harusai.com

 

Profile
shibata_prof
柴田俊幸
ベルギー在住。ブリュッセル・フィルハーモニック、ベルギー室内管弦楽団などで研鑽を積んだ後、古楽の世界に転身。ラ・プティット・バンドなど古楽器アンサンブルに参加。2019年には、B’Rockオーケストラの日本ツアーのソリストに抜擢。1枚目のアルバム「C.P.E. バッハ フルートソナタ集」はレコード芸術にて輸入盤CD特選に選出。 2020年のコロナ禍で「デリバリー古楽」をプロデュースし、第9回四十雀賞を受賞。 2022年春には「J.S.バッハ フルートソナタ集」を発売、2023年には、作曲家 藤倉大の新曲初演を予定。たかまつ国際古楽祭芸術監督。

 

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