フルート記事
THE FLUTE vol.189 Close Up

デビュー40周年記念リサイタルを開催──すべての方に感謝を込めて

今年デビュー40周年を迎えた紫園香さん。これまでに世界各地の様々な場所で演奏活動を行ない、教育活動にも力を注いできた。長年第一線で活躍できたのは、応援してくれた仲間や家族の理解があったからこそと語る。10月に40周年記念リサイタルを開催する紫園さんにこれまでの歩みを訊いた。

生きる力になり苦境を打開する音楽

40周年おめでとうございます。今のお気持ちをお聞かせください。
紫園
感謝の一言です。育ててくださった先生、仲間、応援してくださった方々、そして家族に。現実的に一番近い家族の理解がないと、とてもやってこられなかったと思います。
家事や育児をやりながらの演奏活動は大変だったのでは?
紫園
私がデビューした時代は“女流フルーティスト”と言われていました。今では死語ですよね(笑)。当時の日本はまだまだ男社会でした。見えない壁を感じたこともあって、闘いながらやってきた世代だと思います。
長くソリストとして活躍されてきた中で思い出深いものは?
紫園
まず東京文化会館でのリサイタルは今回22回目を迎えます。その間CD14枚、曲集、書籍などを出してきました。それら一つ一つに思い入れがありますが、もう一つの大きな柱がチャペルコンサートです。 欧米ではチャペルコンサートは、良い音楽が聴ける場、という認識があります。人の心に届く一流の演奏が、リーズナブルにチャペルで楽しめる、というものなんですね。残念ながら日本ではそこまでの認識はありません。でもチャペルコンサートをすることで、クラシック音楽がもっと身近なものになると信じてやってきました。
チャペルコンサートのお客さんは一般の方もいらっしゃいますが、地域で苦労されている方たちも多いです。音楽を聴くことが生きる力になり、苦境を打開してくれるメッセージとなればと思い世界2000ヶ所余りで活動を続けてきました。
そんなコンサートですから、ちょっとやそっとうまく吹いても、感動はしてもらえません。それがチャペルコンサートの厳しい現場なんですね。若い頃はそのことに愕然として、私には中身がないと、苦悩しました。どうしたら音楽を通してみなさんの力になれるのかを探し求めてきた40年でした。

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・忘れられない世界の子どもたちとの思い出
・長期的な視点でプラスに考える
・40周年記念コンサートに向けて

 
Profile
紫園 香 Kaori Sion
東京藝術大学附属高校、同大学を各首席卒業。同大学院修了、芸術学修士。第7回「万里の長城杯」国際コンクール、他入賞多数。以来外務省招聘などで世界24ヶ国でリサイタル開催。皇居にて御前演奏。NHK洋楽オーディション入選以来NHK、スイス放送等各国のTV・FMに多数出演。現在、日本クラシックコンクール審査員、MFLC講師、東京バプテスト神学校教会音楽科講師、ケニアコイノニア教育センター特別講師、キリスト品川教会音楽伝道師。ハンガーゼロ親善大使。14枚のオリジナルCD、曲集、著書2冊を発売中。
2022年日本時事通信で特選CDに選出。月刊「音楽の友」で東京文化会館リサイタルが2021年コンサートベスト1位に選出。

 

Information

紫園香デビュー40周年記念フルートリサイタル~時空を越えて~
[日時]10/17(月)19:00開演
[会場]東京文化会館小ホール
[出演]紫園香(Fl)、藤井一興(Cemb)、沼田園子(Vn)、北本秀樹(Vc)
[曲目]J.S.バッハ:ソナタ ホ短調 BWV526/トリオ・ソナタト長調 BWV1038/フルートソナタ ロ短調 BWV1030、ヴィラ=ロボス:フルートとチェロのための「ジェット=ホイッスル」、藤井一興:「今賜るアッシジの聖フランチェスコの教え」(委嘱世界初演)、B.マルティヌー:フルート、ハープシコード、ヴァイオリンのための「プロムナード」
[料金]¥5,000
[問合せ]ミリオンコンサート協会03-3501-5636

 

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