フルート記事 「U-N-I-T-Y」に込めた想い─女性作曲家の作品を通して描く団結と希望
  フルート記事 「U-N-I-T-Y」に込めた想い─女性作曲家の作品を通して描く団結と希望
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《ONLINE限定インタビュー完全版》THE FLUTE vol.205 Close Up

「U-N-I-T-Y」に込めた想い─女性作曲家の作品を通して描く団結と希望

ARTIST

第91回日本音楽コンクール フルート部門 聴衆賞、第1回イギリス・リバプール国際フルートコンクール第1位など国内外で活躍を続ける鎌田邦裕さんが、リサイタル「U-N-I-T-Y」を東京と故郷の山形県で開催する。今回は女性作曲家の作品を取り上げ、団結といったテーマからAIの台頭による不安と女性の社会進出の歴史を重ね、未来への希望を提示する試み。幼少期からフルートに親しみ、恩師たちに学びながら音色を追求してきた鎌田さんは「演奏会を美術館のように楽しんでほしい」と、観客とともに新たな音楽の魅力を探求する姿勢などを語ってくれた。

タイトル「U-N-I-T-Y」に込めた思い

いつもテーマ性を持ったリサイタルを開催されていますが、今回のタイトルは「U-N-I-T-Y」ということで、どのような思いが込められているのでしょうか?
鎌田
実は以前から女性作曲家の楽曲だけでリサイタルをやりたいと考えていました。今回、それを実現しようと思ったのは、イギリスのリバプールで開催された国際コンクールで1位を受賞したときの課題曲で、アメリカのヴァレリー・コールマンという女性作曲家の『ファンミ・イメン』という曲が大きなきっかけになっています。この曲のタイトルは、マヤ・アンジェロウというアメリカの女性詩人が書いた詩「ヒューマン・ファミリー(Human Family)」から来ています。この詩の中では「友よ、私たちは似ていることのほうが、似ていないことより多いのです」ということを繰り返し謳っていて、そのメッセージを『ファンミ・イメン』の曲中ではモールス信号の「U-N-I-T-Y(ユニティ)」というリズムで表しています。そこから団結や共同体ということを今回のリサイタルのテーマにしようと考えました。
私はリサイタルごとにテーマを持つことを大切にしています。今回のリサイタルに向けて女性の社会進出について調べてみると、中世のキリスト教的な価値観から、啓蒙思想が強くなった時期に女性差別が強化されていったということがわかりました。啓蒙思想では、男性と女性は別の存在だとされ、これが女性差別を生む一因となったようです。しかし、女性の社会進出が進む中で、現代においてはその状況が変わりつつあります。昔は、女性が社会進出することによって男性の仕事が奪われるのではないかという不安が大きかったようです。これは、AIが進化することで仕事が奪われるのではないかという不安が広がっている現在の状況と似ているように感じます。
そこで今回のリサイタルでは、女性作曲家を取り上げることを通して、女性の社会進出による不安や問題を乗り越えてきた歴史を振り返り、今の社会でもAIに対する不安を乗り越え、団結し共存していく未来が見えてくる。そんな社会への問題提起や希望を示すことができればと思っています。
深いお話ですね。確かにAIが進化する中で職を失うことを不安に思っている声優さんや作家さんも多く、今の状況は過去の時代と似た感覚なのかもしれませんね。
鎌田
そうですね。確かに時代が変わる中で仕事がなくなることもありますが、結局は姿や形を変えながら続いていたり、どこかで新たな仕事が生まれるものです。限られた人たちにしかできない仕事もありますし、AIがどれだけ進化しても、それは変わらないと思っています。
 

インタビューは続きます!
・“美術館”のように楽しめる演奏会を目指して
・隠れた名曲による、世界旅行のような音楽体験
・フルートとの出会いから音大を目指すまで
・技術だけではない、人間力を学べた恩師たちとの出会い\ONLINE限定!/
・三響フルートの音色と“チーム三響”の魅力

 
Profile
鎌田邦裕 (かまた くにひろ)
1993年山形県鶴岡市生まれ。鶴岡市立第三中学校、山形県立鶴岡南高等学校、京都市立芸術大学音楽学部を卒業し、同大学大学院音楽研究科を修了。
第91回日本音楽コンクール フルート部門 第2位及び岩谷賞(聴衆賞)、イギリスで開催された第1回リバプール国際フルートコンクール第1位、スロバキアで開催されたブラチスラバ舞台芸術アカデミー国際フルートコンクール 第3位など多数受賞。また、京都市より「京都市文化芸術きらめき賞」を受賞。
ソリストとしては、2014年より山形にて毎年リサイタルを開催。2021年より京都・東京・鶴岡の3都市にてリサイタルツアーを開催。2023年3月には山形県での開催10回記念公演を行った。2023年9月に在スロバキア日本国大使館の協力により首都・ブラチスラバでコンサートを開催。これまでに、松尾葉子指揮・セントラル愛知交響楽団、Konstantin Ilievsky指揮・スロバキア放送交響楽団、工藤俊幸指揮・山形交響楽団と共演している。
現在は京都、鶴岡、東京を拠点に、オーケストラへの客演や、ソロ・室内楽の演奏、後進の指導に力を注いでいる。さらに鶴岡市より「鶴岡ふるさと観光大使」を委嘱され、故郷の魅力を発信している。
 
 
Information

鎌田邦裕フルートリサイタル〜U-N-I-T-Y〜
[出演]鎌田邦裕(Fl)、三上翼(Pf)
[曲目]C.シューマン:3つのロマンス op.22、C.シャミナード:コンチェルティーノ op.107、M.ボニス:フルート・ソナタ、S.グバイドゥーリナ:森の音、上林裕子:廃墟の風、V.コールマン:ファンミ・イメン 他
※都合によりプログラムが変更になる場合があります。
[料金]前売(税込/全席自由)
【東京公演】一般¥-4,000 学生¥2,000
【鶴岡・山形公演】一般¥4,000 学生¥1,000円 ペア(※前売のみ)¥7,000
※ペアはチケット2枚一組となりますので、お一人様につきチケット1枚を必ずご持参ください。
※未就学児は入場不可。当日は一般・学生共に¥500増。
[チケット取扱]
鎌田邦裕オフィシャルホームページ
http://www.kamatakunihiro.com/

■東京公演
[日時]6/27(金)19:00開演(18:15開場)
 ※18:40頃よりプレトークを開催します。
[会場]江東公会堂(ティアラこうとう)小ホール

■鶴岡公演
[日時]8/5(火)19:00開演(18:15開場)
※18:40頃よりプレトークを開催します。
[会場]荘銀タクト鶴岡(鶴岡市文化会館)大ホール

■山形公演
[日時]8/9(土)14:00開演(13:15開場)
※13:40頃よりプレトークを開催します。
[会場]山形県郷土館「文翔館」議場ホール

 
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