THE FLUTE ONLINE連載「石井希衣の教えて!コンテスタント」特別編

将来のフルート界を担う、コンテスタントたちの本音を聴く

昨年開催された第10回神戸国際フルートコンクール。
コロナ禍での開催とあって、すべてが録画審査という異例のコンクールであったが、その中で入賞したコンテスタントたちの表彰式と入賞者披露演奏会が2月に開催された。
そこで、東京公演に出演した5名の入賞者たちの豪華な座談会が実現!
THE FLUTE ONLINE人気連載「教えて!コンテスタント」の特別編として、石井希衣さんをホストに掲載する。THE FLUTE ONLINEでは全文を公開!
取材協力:公益財団法人 神戸市民文化振興財団/通訳・翻訳:秋元万由子/写真:吉岡麻莉奈(演奏写真・表彰式写真)

左からラファエル・アドバス・バヨグ(第1位)、石井希衣(第3位)、マリアンナ・ユリア・ジョウナッチェ(第3位)、ジョイディ・スカーレット・ブランコ・ルイス(第6位)、マリオ・ブルーノ(第1位)
※第5位のアンナ・コマロワ(ロシア)はスケジュールの都合で欠席

入賞してからの変化

石井希衣
(以下石井)
受賞から少し経ちますが、今はどのように活動されていますか?
ラファエル・アドバス・バヨグ
(以下ラファエル)
このコンクールが様々なチャンスを与えてくれたと思います。神戸の後、リサイタルをはじめ、オーケストラでのエキストラやソリストとしての共演などたくさんの演奏の機会をいただきました。今後もどんなプロジェクトが待っているか楽しみです。
マリオ・ブルーノ
(以下マリオ)
神戸の後も、基本的には今までしてきたことを続けていますが、スケールがさらに大きくなった感じです。主にオーケストラでの演奏、ミュンヘン国際コンクールの準備などですが、神戸のおかげで以前より演奏の機会も増えました。それに伴って企画に関する事務的な作業も増えましたね(笑)。
マリアンナ・ユリア・ジョウナッチェ
(以下マリアンナ)
コンクールの後、私の人生に様々な変化がありました。まずは大学院を修了し、そして最近ドレスデン・フィルハーモニーのオーディションに合格しました。これからもきっとたくさんの変化が起こっていくだろうと思っています。
ジョイディ・スカーレット・ブランコ・ルイス
(以下ジョイディ)
私もコンクール後は様々な機会が増えましたが、それに伴い、より(受賞者としての)責任を問われる気がしています。また、練習にかけることのできる時間も減りました。それでも私たち全員がこのコンクールで受賞することができて幸せに感じていると思います。
石井
私はコンクールを受けていたときと同じくパリに留学していて、エコールノルマル音楽院でシルヴィア・カレドゥ氏のもとで勉強を続けていますが、皆さんいろんな変化がありますね。

参加のきっかけは、“神戸国際”だから

石井
神戸のコンクールは、私にとって昔から手の届かない世界の人たちが演奏していて、聴けば聴くほど衝撃で落ち込むくらい、とにかく憧れていたコンクールでした。世界トップクラスの演奏が日本で繰り広げられるのですから、なおさら日本人にとってこれほど特別なコンクールはないと思って受けようと思いましたが、皆さんはどんなことがきっかけでしたか?
ラファエル
私にとってはやはりコンクールの知名度ですね。神戸は、大きな国際コンクールの中では唯一、フルートに特化しています。そして今回の大会に関しては特に皆が待ち望んでいたのではないでしょうか。第9回大会からライブストリーミング配信が始まったことで、より広く知られるようになったとも思います。ずっとコンクールに参加できることを楽しみにしていたので、とにかくチャレンジしてみようと思ってビデオを送りました。
マリオ
あの「神戸国際」じゃないですか。それ以上、特に付け加えることはありません(笑)。世界でも権威のあるコンクールの一つなのでもちろん参加したいと思いました。
マリアンナ
私にとっては少し状況が違っていました。というのも、すでに(第9回大会に)出場した経験があるからです。私が今回また応募したと知った人たちは口をそろえて、「何をしてるの? 前回の順位(第3位)より上を目指すことは難しいし、むしろ下がる可能性のほうが高いよ」と言っていましたね。でも、私は特に気にしませんでした。前回いただいた賞は誰も奪うことはできないじゃないですか。それよりとにかくモチベーションが必要でした。コロナの自粛期間中フルートを吹かなかった時期が少しあったのですが、神戸は課題曲も多いので、以前の生活に戻す良いきっかけになると思いました。そのタイミングでコンクールの募集が出たので、これは何かの予兆かなと感じました。
ジョイディ
母国ベネズエラでフルートをはじめてすぐの頃、当時の先生を通じてこのコンクールを知りました。今までの受賞者のリストを見ただけでも、参加したいというモチベーションになるのではないでしょうか。実は今大会以前にも2回挑戦していたのですが、今回3回目にして初めて予備審査を通過してコンクールに出場することができたので、とても楽しく、素晴らしい経験でした。

次ページへ続きます!
・録画音源は聴いた? 聴かなかった?
・録画審査のメリットとデメリット
・コンテスタントたちのこれから
さらに、3ページ目はONLINE限定公開!

Rafael ADOBAS BAYOG ラファエル・アドバス・バヨグ(第1位/スペイン)
イビサ音楽院を最優秀の成績で修了後、カタルーニャ高等音楽院でヴィンセンス・プラットに師事。
2017年からはミュンヘン音楽大学でアンドレア・リーバークネヒトに師事し研鑽を積む。ソリストとしてコペンハーゲン・フィルハーモニー管と共演。カール・ニールセン国際フルートコンクール2019年第3位入賞。2022年6月には、カーネギーホールでソロ・リサイタルを行なう。

Mario BRUNO マリオ・ブルーノ(第1位/イタリア)
フォッジャの音楽院を卒業後、Accademia Italiana del Flautoでミケーレ・マラスコに、シュトゥットガルト音楽大学にてダヴィデ・フォルミサーノに師事し、優秀な成績で卒業。現在、ミュンヘン音楽大学のExcellence in Performanceコースに在籍し、アンドレア・リーバークネヒトに師事する。
2021年よりカッセル国立管弦楽団首席フルート奏者を務める。

ISHII Kie 石井希衣(第3位/日本)
桐朋学園芸術短期大学を経て、専攻科フルート専攻を第一位で修了。桐朋オーケストラアカデミー研修過程修了。
東京藝術大学別科で研鑽を積む。これまでにフルートを内野里美、宗美沙子、野口龍、高木綾子、ヴァンサン・リュカ、ヴィセンス・プラッツの各氏に、フラウト・トラヴェルソを菊池香苗氏に師事。現在パリ・エコールノルマル音楽院在学中。

Marianna Julia ŻOŁNACZ マリアンナ・ユリア・ジョウナッチェ(第3位/ポーランド)
ザルツブルク・モーツァルテウ音楽大学とショパン音楽大学の両校で修士課程を修了し、ミヒャエル・マルティン・コフラー、マリア・ペラジンスカ、ウルズラ・ヤニクの各氏に師事する。
ドレスデン・フィルハーモニー管弦楽団フルート奏者。

Joidy Scarlet BLANCO LEWIS ジョイディ・スカーレット・ブランコ・ルイス(第6位/ベネズエラ)
シモン・ボリバル音楽院でフルートを学んだ後、リヨン国立高等音楽・舞踊学校、ジュネーブ高等音楽院、レイナ・ソフィア音楽学校で研鑽を積む。
13歳でベネズエラ・シモン・ボリバル交響楽団との共演でソロデビュー。
数多くの国際コンクールで賞を受賞。

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