レベルアップのための基礎練習見直し講座

スケール練習を一工夫

 

序文

前提として、スケール練習とは指が速く動くことだけが目標ではなく、楽曲もしくは自身の即興などを自分の想い描いた通りに奏するための手段として考えたい。
ただ、指のメカニック的な瞬発力、正確性は優れているに越したことはないので、演奏する上での表現や解釈、ソルフェージュや調性感などの点についてはある程度の段階まで理解されている方を対象として述べていきたいと思う。Cの項目のスケール練習までやっていただきたいが、少し設定がハードなため、難しいと感じる方はB-2のT&G No.17トリルとNo.1分解ver.だけでも充分効果的である。

吉岡次郎
スイス・バーゼル市立音楽大学大学院にて、国家演奏家資格を最優秀の成績で取得し卒業。バーゼル交響楽団研修団員を経て帰国。第12回JFCコンクール・ピッコロ部門第2位、第3回東京音楽コンクール木管部門最高位。2008-09 神奈川フィル契約首席。ソリストとして名古屋フィル、東京フィル、日本フィル等と共演。東京、パリ、NYC、ウィーンなど国内外でコンサートを開催。これまでに7枚のCDアルバムをリリース。桐朋学園芸術短大、洗足学園音大講師。(公財)千葉交響楽団、シアターオーケストラトーキョーフルート奏者。

 

 

スケール練習の目的

全体的にはいくつかのエクササイズとスケール練習を用い、フルート(楽器)と指(または全身)をフィットさせつつもリラックスして演奏すればやりたい音楽を表現できる、という目標で進行する。課題はいくつかの準備練習から日常的なフィンガリングやタンギングを加えたものまで広がっているが、大事にしたいポイントはそれほど多くなく、レガートで綺麗な音の並びでさらにインナービートもしっかりと感じるスケールの練習に特化したつもりである。例えるならば、乗馬の時に勝手に疾走してしまう馬の手綱を如何にコントロールして華麗に走らせてあげるかといったイメージである。総合的なメカニックなテクニックは順次進行のスケール練習の他に3度以上のアルペジオ(分散和音)の練習も必要不可欠なので、そちらはまた機会があれば紹介していきたい。

A. 事前方針

まず、どの練習にも共通した着眼点は以下の3つである。
どのような段階の方もこれだけは守っていただきたい。

1 最初の音はキィを叩かないように必ずその運指に指をセットしてから発音する。
2 どんなに速いテンポでも最初の音が出る(自分の耳で捉える)までは次の音に行かない。
3 スケール練習はある程度の物量と根気が必要だが、指、腕、肩、首などに少しでも異変を感じたら途中でもすぐに中止して休息を取る。

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