フルート記事
THE FLUTE 160号 Cover Story

「キーワードは『楽器を通して歌う』こと!」アレーナ・ルゴフキナ

チャーミングで輝くようなエネルギーにあふれるアレーナ・ルゴフキナさん。7歳から英才教育で知られるロシア最高峰の名門音楽学校「グネーシン記念モスクワ中等特別音楽学校」で学び、最高位で卒業したのち渡英。特別優秀な学生にしか与えられない全額給付の奨学金を得て、英国王立音楽院に入学。イギリスフルート協会コンクール、クーラウ国際コンクールなど多くのコンクールで優勝し、ウィリアム・ベネット氏のもとで研鑽を積んだ、いま最も注目すべき若手フルーティストの一人だ。東京と大阪でのコンサートのために来日した9月、同じくベネット氏の門下で学んだフルーティスト・古川仁美さんが話を聞いた。
インタビュア:古川仁美/写真:土居政則/取材協力:株式会社グローバル

11歳で出会った“音”

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7歳で超名門音楽学校に入学されたそうですが、フルートはいつから始められましたか?
ルゴフキナ(以下L)
最初はピアノを習っていました。上手に弾けると先生がとても喜んでくださって、その先生からリコーダーを勧められたのが、“笛””との最初の出会いです。リコーダーはとっても安いですしね(笑)! 笛を通して音楽を“話す”ことが楽しくて、大好きでした。学校では友だち同士でCDのコピーを貸しあって、いろんな音楽を楽しんでいました。そして11歳で管楽器を選択する時に、自分としてはフルートかクラリネットがいいかなと思っていたのですが、ある時ゴダールの組曲が入ったフルートのCDを聴きました。その表現力と色彩感に大きな衝撃を受け、「フルートからこんな音がするのなら、私は絶対フルートが吹きたい!」と興奮して母に宣言したのをよく覚えています。その時は知らなかったのですが、実はのちに師事することになるウィリアム・ベネット先生(以下、ベネット氏の愛称であるWIBB)の演奏だったのです!
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その頃から既にWIBBの音と出会っていたのね。
L
そうなんです。14歳の時にルーマニアのブカレスト国際コンクールでWIBB門下生のウンジ・チュンさんと出会い、意気投合しました。そのあと彼女がメールで10個ものサマースクールの情報を教えてくれました。ロシアにはサマースクールがなくて、国外に出られるのはとてもエキサイティングなことでした。当時はまだ英語もよくわからなかったのですが、母と一緒にサイトを見ながら「ここが雰囲気も素敵だし、先生も優しそうね!」と選んだのがWIBBのコースでした。(古川注:会場だったイギリス南部のフレンシャムハイツは、まるでハリーポッターの魔法学校のような素敵なところです。)そして16歳の時、ついに念願叶ってWIBBのサマースクールに参加することができました。イギリスは物価が高いと聞いていたので、実はスーツケースの半分は食べ物でいっぱいだったんです。行ってみたら食事はとっても美味しくて充実していて、まったく必要なかった(笑)。今では楽しい笑い話です。
英国王立音楽院の入学試験は、通常3次まであるのですが、「君はフルスカラシップ(学費のみならず住居食費なども支給される)の学生として、いらっしゃい」と言われ、いきなり3次の試験曲を学長の前で演奏しました。イギリスでは、EU以外の国からの学生は学費が非常に高額なので、とても嬉しかったです。入試ではタイプの違う2曲を用意するのですが、たしかヴィヴァルディのコンチェルトと、ゴーベールの『ノクターンとアレグロ スケルツァンド』を吹きました。(次のページに続く)

次のページの項目
・すべてが宝物
・パートナーとの出会いも、音楽に導かれて
・Concert Report
・ONLINE限定:“大きな家族の一員”みたいなつながり

Profile
アレーナ・ルゴフキナ
Alena Lugovkina
1989年モスクワに生まれ、6歳より英才教育で有名なロシア最高峰の名門音楽学校「グネーシン記念モスクワ中等特別音楽学校」で10年間(日本の小学校から高校に相当)フルートを学び、最高位の成績で卒業後、英国王立音楽院に入学し、優秀な学生にしか与えられない奨学金 全額給付の権利を得て、ウィリアム・ベネットのもとでフルートを学ぶ。卒業後、ギルドホール音楽院にてオーケストラコースのマスターを修了。若くして、イギリス、アメリカ、ドイツ、フランス、スイス、オーストリア、スペイン、カナダ、デンマーク、日本及びロシアの各地で活躍し、輝かしい経歴を持つ。ソリストとして、モスクワ室内管弦楽団や、モスクワフィルハーモニー管弦楽団、イギリスロイヤルアカデミー室内管弦楽団と共演し好評を博す。これまでに、服部公益財団賞をはじめ、2006年に第5回ムラヴィンスキー国際コンクール特別賞受賞、2008年に第11回全英フルート協会コンクールで優勝。2009年に第13回フリードリヒ・クーラウ国際コンクール、及びロイヤルアカデミーコンクールで優勝。木管五重奏団「Atèa」のメンバーでもあり、2015年にはカール・ニールセン国際室内楽コンクールで3位入賞及びコンクール委嘱作品のベストパフォーマンス賞を受賞。
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