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ゲイリー・ショッカー│THE FLUTE vol.208 Cover Story
音楽を楽しむことを恐れないで
[この記事の目次]
上野星矢氏が主宰するイベント「フルートセレブレーション」のゲスト、リサイタル、マスタークラスを開催するために来日したゲイリー・ショッカー氏。これまでにショッカー氏の作品を演奏した読者も多いのではないだろうか。ショッカー氏はフルーティストであり、作曲家であり、そしてハーピストという三刀流で活躍している音楽家だ。
今回はフルートセレブレーション東京公演当日に久しぶりの取材が叶った。インタビューの最後には、上野星矢氏にも参加してもらい、ショッカー氏を招聘したわけを訊いた。
インタビュア・翻訳:村井 睛 取材協力:上野星矢 写真:橋本タカキ
フルートセレブレーションにソリストとして参加

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今回、日本にはこのフルートセレブレーションとご自身のリサイタルのためにいらっしゃっていますね。まずはフルートセレブレーションについてお伺いしたいのですが、こうした大規模なフルートのイベントに参加されてのご感想をお聞かせいただけますか?
ゲイリー・ショッカー
(以下 G)
(以下 G)
こんなにたくさんのフルーティストと一緒に舞台に立つのは初めてなので、大勢の中でどうやって自分の音を通すかを探るのは興味深いです。ですが、指揮の(上野)星矢さんは非常に感度が高く、細かいところまで感じ取ってくれますし、皆さんがしっかり耳を傾けてくださっているので、まったく問題はありません。
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今回のために『In and Out』を作曲されました。
G
はい。今回、私に委嘱された作品で、第一フルートが目立つようなパートにできるかとも聞かれました。ただ、(この作品は)厳密には協奏曲や独奏パートというわけではなく、でもときに第一フルートが曲の流れを作る存在になっています。そして、私のパートで演奏するさまざまなフレーズや動きが、フルートオーケストラの他のパートでも繰り返されたり、受け継がれたりします。
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この作品の着想について教えていただけますか?
G
日本に行くことが分かっていたので、冒頭のテーマには日本的な旋律(音階)を使いました。冒頭のテーマと第一楽章は、どちらも夜の曲のような雰囲気で、内面の感情を表現しています。それに対してコントラストをつけたかったので、第二楽章ではリズミカルで明るく、軽快な曲を書きました。
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ありがとうございます。今日はご自身の作品『Blue Bossa』でソリストとしても演奏されますね。これだけ大きなフルートオーケストラをバックでソロを演奏するために気をつけられていることは?
G
私が気をつけていることですね。この曲はもともとフルートとピアノのための作品で、星矢から「ソロでも何か演奏してほしい」と言われたんです。そこで、私は「他の人の曲ではなく、自分の曲を演奏しよう」と思いました。というのも、普段演奏しているのもほとんど自分の曲なので。以前『Blue Bossa』と『Red Bossa』という曲を書いたのですが、「じゃあ、『Blue Bossa』の前半をアレンジできるか試してみよう」と言いました。後半は、この編成ではあまりいい響きにならないだろうと思ったので。この曲には少しストーリーがあるので、結果的にとてもうまくいきました。
曲は、とても楽しいカクテルパーティのような雰囲気で始まります。まずピッコロでドアベルの音が鳴り、その後も鳴り続けます。曲が進むにつれて、どんどん人がパーティにやってきて、だんだん雰囲気がぼやけてきます。たぶん、みんな酔っ払ってうとうとし始めるからでしょう。そして少し濁った感じになります。そのあと、ソリストがなんとか「みんな、帰って!」というふうにして、最後には、みんなが帰った直後にドアベルが鳴り、パーティに遅れて到着する人たちが現れます。それで終わりです。
曲は、とても楽しいカクテルパーティのような雰囲気で始まります。まずピッコロでドアベルの音が鳴り、その後も鳴り続けます。曲が進むにつれて、どんどん人がパーティにやってきて、だんだん雰囲気がぼやけてきます。たぶん、みんな酔っ払ってうとうとし始めるからでしょう。そして少し濁った感じになります。そのあと、ソリストがなんとか「みんな、帰って!」というふうにして、最後には、みんなが帰った直後にドアベルが鳴り、パーティに遅れて到着する人たちが現れます。それで終わりです。
「フルートセレブレーション2025 A late summer dream『晩夏の夢』」の出演者160名と記念撮影。これだけのフルート奏者たちの中で埋もれない音色を奏で、素晴らしい作品を生み出したショッカー氏に、コンサートでは温かい拍手が贈られた次ページに続く
・楽しみつつ、のびのびと演奏してほしい
・良い状態を理解すること
・同じ曲ばかりを演奏しないこと
・“高校生時代に感じた特別な音”に惹かれて招聘
Profile

ゲイリー・ショッカー
Gary Schocker
Gary Schocker
この時代を代表するフルーティスト、ゲイリー・ショッカーは作曲家として多くの優れた作品を世に送り出し、またピアノとハープの演奏家、そしてフルートのレスナーとしても実績を残している。
10歳でフルートと出会い、15歳のころにはフィラデルフィア管弦楽団やニューヨーク・フィルハーモニーとソロイストとして共演。高校卒業後、ジュリアード音楽院で学び、様々なコンクールで一位を獲得。この中の最も重要なのが1985年のヤングコンサートアーティストオーディションであり、賞品としてマネージャーやサポートスタッフが与えられ、プロアーティストの活動の始まりとなる。
作曲者としての活動も豊富で、数多くの賞を受賞。現在、300を超える作品が出版されている。特にミュージカル「The Awakening」と「Far From the Mdding Crowd」は様々なトニー賞受賞者が演奏し、イギリスのミュージカル賞を受賞している。
演奏時の物理的な研究を長きにわたっておこない、体と楽器の最も適した融合を目指している。レッスンは一人ひとりに適した解決を探り、体に負担のない演奏ができることを目標に、毎月オンラインマスタークラスをおこなうなど、ニューヨークからオーストラリアや日本まで幅広く、世界中にその教えを広めている。
10歳でフルートと出会い、15歳のころにはフィラデルフィア管弦楽団やニューヨーク・フィルハーモニーとソロイストとして共演。高校卒業後、ジュリアード音楽院で学び、様々なコンクールで一位を獲得。この中の最も重要なのが1985年のヤングコンサートアーティストオーディションであり、賞品としてマネージャーやサポートスタッフが与えられ、プロアーティストの活動の始まりとなる。
作曲者としての活動も豊富で、数多くの賞を受賞。現在、300を超える作品が出版されている。特にミュージカル「The Awakening」と「Far From the Mdding Crowd」は様々なトニー賞受賞者が演奏し、イギリスのミュージカル賞を受賞している。
演奏時の物理的な研究を長きにわたっておこない、体と楽器の最も適した融合を目指している。レッスンは一人ひとりに適した解決を探り、体に負担のない演奏ができることを目標に、毎月オンラインマスタークラスをおこなうなど、ニューヨークからオーストラリアや日本まで幅広く、世界中にその教えを広めている。
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