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「音程を良くしたい」という大きな流れの中に…

THE FLUTE 146 Cover Story|William Bennett

80歳を迎え、その記念となる世界ツアーの一環で来日を果たしたウィリアム・ベネット氏。コンサートでは、矍鑠(かくしゃく)としたスタイルで演奏し、その音色とともに年齢を感じさせないステージをこなした。インタビューでは、愛弟子のローナ・マギー、デニス・ブリアコフ両氏のこと、そして「ベネットスケール」開発秘話……時代を跨ぎ、壮大なロマンすら感じさせるストーリーを大いに語ってくれた。
聞き手:清水理恵(フルーティスト)、写真:土居政則、取材協力:株式会社グローバル、紀尾井ホール

ベートーヴェンもきっと許可してくれる

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今回は、傘寿を記念してお弟子さんたちとのコンサートツアーでの来日ですね。ベネットさんはこれからも長くフルートを続けていかれますか?
ベネット(以下B)
実は、まだ実際には79歳なんです。80歳に向かっているところというのでしょうか。些細なことですけどね(笑)。もちろん続けられる限り、フルートは続けます!
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そのお年までフルートを続けてこられて、大変なことはありますか?
B
やはり、体のことでしょう。体に何かが起こってフルートが続けられなくなったら、それが潮時ですね。特に演奏家は耳がやられると、とても大変です。だいぶ良くなりましたが、私も感染症で一時期耳の聞こえが悪くなりました。こういうことは、予期しないときに一気に起こりますからね。 私は泳ぐのが好きで、先週も海で泳ぎました。カナダでしたけれど、とっても水が冷たくて、泳いでいるのは私一人でした。10分くらい泳いだでしょうか。それから、息子が気功をやっているので、私も時々一緒にやります。気功は、体にとてもいいですね。その他、毎晩就寝前に、必ず長井芽乃さんのボディ・マッピング※をします。 ※フルート奏者の長井芽乃さんによる、体のバランスを整えるプログラム。2010年には「ウイリアム・ベネットフルートサマースクール」にて長井さんによるボディ・マッピング クラスが行なわれた。
ウィリアム・ベネット
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今回のコンサートもそうですが、弟子のローナ・マギーさんやデニス・ブリアコフさんと一緒にいろいろな活動を一緒にされていますね。マギーさん、ブリアコフさんはどんな生徒でしたか?
B
二人ともたいへん優秀な生徒でしたよ。私が教えることは、あまりありませんでしたから(笑)。デニスは、皆さんご存じの通りテクニックが驚異的です。世界のどのフルーティストにも負けないのではないでしょうか。素晴らしい才能の持ち主です。ローナは、繊細な感受性と色彩豊かな演奏をします。胸躍るような音楽的なイメージの持ち主です。だからといって、もちろんデニスが想像力がないということではありません。彼は、常に何か新しいことにチャレンジしようとしています。フォーカスしている点が、二人で異なるということです。
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昨年、ローナ・マギーさんにインタビューしたときに、コンサートのプログラムにヴァイオリンやピアノ、歌の曲などからアレンジした曲目を入れているのは、ベネットさんの影響だと話されていました。別の楽器の曲をフルート用にアレンジして演奏することの目的や、メリットは何ですか?
B
私は、たくさんの曲をアレンジしています。当然いい作品を演奏したいからです(笑)。昔、クライスラーのLPレコードをよく聴いていました。クライスラーもヴァイオリン以外の作品から、アレンジして弾いてますからね。その影響もあり、曲が好きならアレンジして自分で演奏することは許されるのだと考えました。ランパルもそうです。彼と学んだ時期があったのですが、ほかの楽器のために書かれた曲をフルートで吹くのが得意でした。ランパルは「もし、好きな曲があればいつでもフルートでチャレンジしてみるといいよ。作曲家に、“あなたの作品がとても好きなのでフルートで吹いてみたい”と言ってごらん。彼らはいつでも、どうぞやってみてください! と答えてくれるよ」と言っていました。ハチャトゥリアンのヴァイオリン協奏曲のときも、そうだったと話してくれました。私もかつて、ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲をアレンジしてレコーディングしましたが、私の中では、すでにフルート協奏曲という認識になっています。きっと、ベートーヴェンにフルートで吹いていいか と問い合わせても、すぐに許可してくれたに違いありません(笑)。(次のページに続く)

次のページの項目
・「ベネットスケール」開発秘話
・フルートの音程に奮闘した時代
・ONLINE限定:Concert review

Profile
ウィリアム・ベネット
ウィリアム・ベネット
William Bennett
フルートをジェフリー・ギルバート、ジャン=ピエール・ランパル、マルセル・モイーズの各氏に師事。ロンドン交響楽団の首席奏者を務めた後、イギリス室内管弦楽団、アカデミー室内管弦楽団等にて活躍。映画「アマデウス」では、フルートの独奏を演奏した。ソリストとしても世界各国でリサイタルを開催。教育者としての活動においては、世界各国での多数のマスタークラスを開講。オーレル・ニコレの要請により、ドイツ・フライブルグ音楽大学のフルート科教授に招かれている。また、現在も自身のサマースクールを毎年開講し、世界中から参加者を集め、指導している。イギリス・ロイヤルアカデミー(王立音楽院)フルート科名誉教授。1995年、英国女王よりO.B.E勲章を授与。

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