ザ・ナルマン・クラリネット・アンサンブルが伝授 やれば絶対にうまくなる基礎練習

Lesson11  音色 その3

 

「ザ・ナルマン・クラリネット・アンサンブルが伝授 やれば絶対にうまくなる基礎練習」は亀居優斗、三界達義、吉本拓、和川聖也の4名から成るザ・ナルマン・クラリネット・アンサンブルが、クラリネット愛好家に伝えたい基礎練習講座です。ロングトーンやタンギングなど上達に欠かせないコンテンツをメンバーがそれぞれ解説していきます。隔週の金曜日に更新していきますのでお楽しみに♪

 
○The Narmen Clarinet Ensemble
 

2018年、東京芸術大学と東京音楽大学の在学中に亀居優斗、三界達義、吉本拓、和川聖也の4人で結成されたクラリネットアンサンブル。2018年3月に初のコンサートを開催し、好評を博す。2019年にはドルチェ楽器と十亀正司氏の共同企画であるNEWSvol.6に出演し東京、名古屋、大阪の3公演を行う。その他にも演奏会を重ね意欲的に活動中。前衛的なプログラムに挑戦している新進気鋭の若手クラリネット四重奏団である。2020年9月には、オペラシティリサイタルホールでのコンサートを開催する。

 

 

音色3 音色練習法ー楽曲を使った練習

皆さんこんにちは! 三界達義です。前回、前々回で理想の音色のイメージ、そして身体の使い方についてのアドバイスがありました。その点を踏まえてロングトーンをするだけで、音色を作る練習として成り立ちます! ……という解説だとあまりに雑ですので(笑)、今回はその上で実践的に楽曲を使って音色を探す考え方に取り組んでいきましょう、3つのポイントにまとめてみました。

 

♪ポイント1 音色の変化

楽曲に取り組む際の理想的な音色における意識は、音色の種類(引出し)を多く持つこと、です。いくら「綺麗な音」でもずっと同じ音色が続くと、聴いている人は飽きてしまいます。そのため曲の雰囲気、また場面に沿うような音色を常に探し続けましょう

譜例1: ブラームス『クラリネットソナタ第一番 第四楽章』8〜16小節 

※譜例が途中で切れてしまう方は、譜例を横にスクロールしてご覧ください。


2小節ごとに表情が変わるフレーズです。やはりずっと同じ音色で演奏すると音楽的ではありません。楽語にもありますがアーティキュレーションに沿った音色が必要です。最初のスラーは優美に、次のスタッカートは軽やかに、ですね。この際スタッカートの音色の練習には、息だけで発音する練習が有効です。

 

♪ポイント2 楽器の都合を出さない

これはなかなか難しいことなのですが、音色を作る際には楽器の弱点を考慮する必要があります。クラリネット的に難しいフレーズが出てきた時には要注意です、そのような時こそ技術を見せびらかすのではなく音楽的な音色を目指しましょう。聴いている人に「クラリネットって難しい楽器なんだなー」と思わせるのではなく、「なんか簡単そう!」と感じてもらえたらベストですね!

譜例2: サン=サーンス『クラリネットソナタ 第一楽章』2〜3小節 

※譜例が途中で切れてしまう方は、譜例を横にスクロールしてご覧ください。


上行系でディミヌエンドがかかるフレーズ、高音域が飛び出しやすいクラリネットからするとまさ に楽器的に難しいと言えますね...! ここでは弱点丸出しな細い音ではなく丸く柔らかい音でフレーズを収めましょう。2、3小節の音の移り変わる瞬間を一つずつ意識しながらゆっくり練習してみましょう。

譜例3: ドビュッシー『プリミエラプソディ』冒頭 

※譜例が途中で切れてしまう方は、譜例を横にスクロールしてご覧ください。


今度は逆に楽器が鳴りにくい音域のフレーズです。ダイナミクスはpのため一見鳴らす必要もなさそうですが、幻想的な曲の始まりですのでふくよかな響きのある音が理想的です。ここはロングトーン練習でバランスの良いアンブシュアを見つけましょう。解放のソの音から始まりますが、指を足して響きを増やすのも良いかもしれません。

 

♪ポイント3 楽譜に書いてある情報を理解する

表現にかかわる楽語、またダイナミクス、テンポ感など楽譜には様々な情報が載っております。それはすべて音色作りの手がかりとなる大事な情報です。楽譜に書いてあることで分からないものが あれば、その都度意味を調べて理解することが大切です。ちなみに楽譜情報を整理することで音色を作れるのは、ポイント1、2であげた曲にも共通してます!

 

♪まとめ

以上が簡単な音色を探す練習(考え方)になります。実際はそこからさらに深く深く追究していくもので、ゴールはありません。厳しいかもしれませんが、これが音楽をする醍醐味でもあると思います! また音色を作るためのロングトーンを行なう場合、もちろん今回触れたようなイメージ(僕の考え方はあくまで例なので、違うイメージでも問題ないです!)を持つべきですが、基本的な発音と音程にも意識を持ちましょう
音色を探していくにつれて他の人の演奏を聴くと、自分の理想の音色を見つけやすくなる上に、自分の考えとはまったく違った良い音色にも出会えると思います。そうすることによって自分の考えの幅も広がり、より豊かな音楽性に繋がるはずです。

 

 
 
今回の執筆者は……

三界達義 Tatsuyoshi Mikai

1996年生まれ、成城高等学校を経て東京藝術大学音楽学部器楽科卒業。
藝大奏楽堂モーニング・コンサートにて、藝大フィルハーモニア管弦楽団とカレヴィ・アホのクラリネット協奏曲を共演。
大学学部卒業時にアカンサス音楽賞、同声会賞を受賞。同声会新人演奏会に出演。。
これまでに三界秀実、野田祐介、山本正治、十亀正司、伊藤圭の各氏に師事。
2018年度瀬木芸術財団海外研修生。
現在、東京藝術大学音楽研究科修士課程2年、広島交響楽団クラリネット奏者。

 


次回の公開は4月2日(金)に、吉本拓さんによる「音色4 これだけは聴いてほしい音」をお届けする予定です。お楽しみに!

 


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