フルート記事
THE FLUTE 30th Anniversary│さかはし矢波Special Interview

念ずれば花開く──念ずるだけでなく言葉にし努力すること

THE FLUTE創刊30周年を記念して、収録を行なったさかはし矢波さん。本誌読者にはおなじみのさかはしさんだが、これまでTHE FLUTEに登場したのは、連載を中心になんと140回以上! 初登場は第33号(1998年)。長きにわたりTHE FLUTEを支えてくれた立役者として収録をお願いしたのだが、実は単独のインタビューは今回が初めて。
改めてさかはしさんにスポットを当て、フルートのこと、演奏活動のことなどを訊いた。

一番最初が肝心——最初がうまくいくと自然とうまくなる

さっそくですが、音楽や楽器との出会いからお聞きします。
さかはし矢波
(以下矢波)
母親が武蔵野音楽大学のピアノ科出身で、自宅でピアノレッスンをやっていたので、お腹の中にいるころからピアノは聴いてました。生まれてからはベビーベッドがグランドピアノの下、というピアノの先生あるあるの状態で育ちました。
当然物心がついたときにはピアノを習うのですが、親子だからうまくいきません。親は生徒でなく子どもだと思っていますし、僕も親だから先生だと思っていない。それでも一通りはできるようになりましたが、まあ、ふざけた生徒だったと思います(笑)。
そんな小5のあるとき学校から帰ってきたら、机の上に長細い箱があって、それがフルートだった。母親は僕のピアノに限界を感じていて他の楽器を、と思ったのでしょうね。
フルートを始めたい、と思ったわけではなかったのですね。すぐに受け入れられましたか?
矢波
同級生でフルートをやっている男子がいたんですよ。学芸会などで吹いていたのを見たことがあったので、同じ楽器がきて「僕もやるのか……」と思いましたね。僕は今から始めるけど、同級生はもう楽器が吹けるからそれが悔しくってね(笑)。
負けず嫌いですか?
矢波
負けるのだけは嫌。とにかく同級生が先に進んでいることに頭にきたというか(笑)。だからこそフルートをすんなり受け入れられたのだと思います。
母親は音大出身なので、最初の基礎が一番大事ということを知っていましたから、楽器の組み立て方からレッスンに行き習いました。
最初の基礎的なものを教えるのが一番難しいんです。何も知識がないところに正しいことを教えないといけないから。中学校の吹奏楽部に行くと、間違った奏法をしている生徒が多くいます。独学でやったり、先輩が間違って教えるからなのですが、それを直すのはものすごく大変。とにかく一番最初が肝心です。
吹奏楽部の顧問の先生にこれは声を大にして言いたい。初心者にはレッスンを受けさせてほしいと。僕は最初からレッスンを受けられたから間違ったことは最初からしなくてすみました。最初がうまくいくと自然と上手くなります。これはスポーツでもなんでも同じです。

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Profile
さかはし矢波 Yanami Sakahashi
桐朋学園大学、同研究科卒。ドップラー記念コンクール入選、NHK 新人オーディション1 位合格、ジュリアス・ベーカーマスタークラスコンクール4 位。これまでにドップラー作品収録の2 枚のCD 他、計4 枚をリリース、専門誌に同作曲家研究を発表している。ソリストとして国内外でオーケストラとの共演、リサイタル活動をすると共にTV、ラジオのレギュラーとして数々の番組に出演。また音楽誌にエッセイ等を連載。アルソ出版より初エッセイ集「つれづれ放送局」を2012 年3月に発刊。現在、東京フィルハーモニー交響楽団、ラ・テンペスタ室内管弦楽団(フィンランド)フルート奏者、東京SDGs 吹奏楽団音楽監督。聖徳基督大学客員教授(台湾)、JICA 東京国際サポーター及び栃木市文化大使, とちぎ未来大使。峰岸壮一、ジュリアス・ベーカー両氏に師事。
使用楽器:ミヤザワフルート All 14K--RH (Eメカ付)85873
http://flutist.m.web.fc2.com/
 
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