フルート記事
THE FLUTE vol.188 Cover Story

音楽家としての覚悟とこれから

3月に開催された第10回神戸国際フルートコンクールでは、日本人で一人本選に進み、見事第3位入賞を獲得した石井希衣さん。実はこれまで迷いもなくフルーティストになる道を進んでいたのではないという。音楽家になる覚悟、そしてその道が開けたのはつい最近のことだった。現在パリに留学中の彼女に、オンラインで初インタビューを敢行した。
Photo:mai toyama

オンライン(録画)審査で得たもの

神戸国際フルートコンクールでの第3位入賞、おめでとうございます。今回はコロナ禍ということもあり、予備審査からオンライン(録画)審査で、公開予定だった3次予選、本選もオンラインに変更されました。オンライン審査ということで、気持ちの上でいつものコンクールとは違う部分はありましたか?
石井
ありがとうございます。いつものコンクールと同じ気持ちで練習することを意識していました。ただ神戸での演奏がなくオンラインに決まったときは、それまで張り詰めていた緊張の糸が切れて、気持ちを立て直すのに時間がかかりました。当初の予定より延期もされていたので、もしかして開催されないのでは……という不安もありました。
ただ、事務局の方も「なんとかしてやりたい」と言ってくれていたので、それを信じて、練習も普段と変わらないように行なっていました。
今回は録音したものをオンラインで流す形でしたね。
石井
はい。もちろん録音するときも緊張しましたが、自分の演奏が配信されるときは、本番のときと同じくらい緊張しました。
録音で難しかったのはどんな点でしょう?
石井
ほとんどのコンテスタントがかなり苦労をしたのではないでしょうか……。そう思いたいです(笑)。まず予備予選、1次予選の無伴奏曲から苦労しました。録音は途中で演奏を止めることなく通しで収録しないといけません。これが3次、本選に進むと30分、40分のプログラムです。「上手くいっているな」と思うと、それがかえってプレッシャーになり、最後の最後でミスしてしまったテイクがいくつもありました。
通常のコンクールだと一度きりの演奏。でも録音となると、完璧を求めすぎて音楽的なことがおざなりになる傾向がありました。演奏した後にバランスなどを確認しますが、自分の演奏にすぐに向き合わないといけないのはしんどかったです。

次のページの項目
・自分に「覚悟しておけよ!」と暗示をかける
・何のために受けるのかをはっきりさせること
・フルーティストとしての覚悟
・諦めずに毎日少しずつ努力する

Profile
石井希衣
石井希衣
Kie ISHII
2022年第10回神戸国際フルートコンクールにて第3位受賞。第88回日本音楽コンクール第2位。第19回日本フルートコンヴェンションコンクール ソロ部門 第1位、吉田雅夫賞受賞。つくばフルートコンクール2018 第1位、中野雄&若林 暢賞、戸部謹爾賞を併せて受賞。第62回北九州芸術祭クラシックコンクール全部門グランプリ、県知事賞を受賞するなど、数々のコンクールでの優勝や入賞の実績を持つ。ソリストとして、角田鋼亮氏、山田和樹氏の指揮にて東京フィルハーモニー交響楽団、横浜シンフォニエッタなど数多くのオーケストラと共演を重ねる。オーケストラでの客演も多数。これまでに、フルートを内野里美、宗美沙子、野口龍、高木綾子の各氏に、フラウト・トラヴェルソを菊池香苗氏に師事。桐朋学園芸術短期大学、桐朋オーケストラアカデミー、東京藝術大学別科にて研鑽を積む。2021年度、2022年度公益財団法人ロームミュージックファンデーションの奨学生として、仏エコール・ノルマル音楽院に留学中。

 

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