クラリネット記事 音楽に真摯に向き合い、音楽を理解し、自分の職業を愛すること─それが演奏家に必要なことなのです
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vol.45 Cover Story│ミシェル・アリニョン

音楽に真摯に向き合い、音楽を理解し、自分の職業を愛すること─それが演奏家に必要なことなのです

ビュッフェ・グループ・ジャパンが主催する「欧日音楽講座」で長く指導に携わり、今年8月にも来日。そして10月にクラリネット・リサイタルのため再来日したミシェル・アリニョン。クラリネット奏者として、クラリネット界を牽引し続けてきた、重鎮の一人である。これまでフランスに渡り、また日本で開催されるマスタークラスなどで彼の薫陶を受けた人は、かなりの数に上る。日本に息づくフランスのクラリネットの世界は、彼の貢献なくしてはなしえなかったのではないだろうか。今回は、8月に来日した際、欧日音楽講座で取材を敢行した。10月に開催されたクラリネット・リサイタルのプログラムにもインタビューが掲載されていたが、ここではそこに補筆し、さらに「ミシェル・アリニョン」という一クラリネット奏者に迫ってみよう。
インタビュア・翻訳:郡 尚恵 / 写真:土居政則 / 取材協力:ビュッフェ・グループ・ジャパン

インスピレーションの欠けた演奏はしない

 
教育者として、若いクラリネット奏者に求めるものは?
M
クラリネットを尊敬し、個性だけを追い求めるのではなく、作曲家の意志を尊重し、伝統を継承していくことです。私自身も学生に教えるときは「音楽家」としての枠組みを作りつつ、音色、テクニック、優美さを伝えています。これらが形になってはじめて個性が出ると思っています。
アリニョンさんが必要だと思われる日課練習を教えてください。
M
個人的に私はまず、自由で柔軟に演奏でき、できる限り長いフレーズを演奏するための最適なポジションをチェックするため、呼吸とアンブシュアの位置を確かめるエクササイズを行ないます。そして、レガートおよびアーティキュレーションを付けたスケール練習を行ないます。私は音楽のインスピレーションが欠けた演奏は絶対にしないよう、常に心がけています。
あなたは日本における教育活動にも熱心に取り組んできました。中でもビュッフェ・グループ・ジャパンが主催する「欧日音楽講座」では長年にわたり指導されていますが、日本の学生についてどう思われますか?
M
欧日音楽講座は、15年ほど講師を務めてきましたが、毎年レベルが上がっています。演奏様式、受講する曲、いずれも水準が高いです。今年も優秀な学生たちが参加してくれました。今回は特に高校生の参加者も多かったのですが、若いうちは奏法に問題があってもすぐに解決できますし、吸収も早いので、若いときにこうして積極的に参加することはとても良いことです。この講座は若い日本人の音楽学生にとって、刺激の溢れる「出会いの場」にもなっていると思います。
日本の学生たちはヨーロッパへの留学をするべきでしょうか?
M
音楽教育の高いレべルに関して、日本は特筆すべきものがあります。ヨーロッパでは、特にフランスに言えることですが、国々の伝統的な教育方法を知ることは、興味深く大切なことだとしています。それにより、それぞれの国の音楽を解釈することに大いにつながると思います。
学生たちがプロになるために必要なことは何でしょうか。
M
プロフェッショナルのクラリネット奏者になるには、まず楽器を完璧にマスターすることです。そのためにはたくさんの練習、しかも効率の良い練習が必要です。そして同じく、すべての音楽(中世、古典、ロマン派、近代、現代音楽……)に興味を持ち、可能な限り広いレパートリーに精通することです。
最も重要で最も難しいことは、自分の音楽感覚を表現することを体得することです。

音楽をする環境に恵まれている日本

あなたは「ビュッフェ・クランポン」のテスターですが、これまでどのような楽器の製作に携わってきましたか? また現在はToscaのグリーンラインを愛用されていますが、グリーンラインの良さは?
M
私はこれまでにフェスティヴァル、エリート、トスカの開発に携わってきました。グリーンラインの良さは、湿度や温度の変化にも強く、割れにくいといったことはもちろんですが、音色の均一感は木のタイプ(グレナディラ材)では得られないものがあります。少しだけ木より重いということはありますが。
話は変わりますが、あなたはたびたび来日されていますね。日本との最初の出会いは?
M
何十年も前に遡りますが、サントリーホールで行なわれた、とあるコンチェルトのコンサートで、予定していたクラリネット奏者が病気で出演できなくなり、コンサートの2日ほど前に、現在のビュッフェ・グループ・ジャパン名誉会長の保良徹さんから出演依頼が私のところに来たことがきっかけです。
日本に来て驚いたことはありますか?
M
私が初めて日本を訪れた時のことでした。その頃の私は生の魚を食べる習慣がなく、ある晩生きたエビを勧められました(しかもまだ動いている!)。私は少しためらい、正直怖かったです(笑)。最終的に食べてみたところ、とても美味しかったのを記憶しています! 私を招いてくれた方々はとても喜び、皆さんすごく笑っていました!!
これからのクラリネット界に望むことは?
M
クラリネットのレパートリーは20世紀に大きく発展し、それは今でも拡がり続けていると信じています。現代の偉大な作曲家たちは、クラリネットのための曲を多く作っています。私は最近パリで、ミシェル・ポルタルとポール・メイエのコンサートを聴きました。プログラムはDusapin、Escaïch、Hersant……など。どれも2本のクラリネットのために書かれたものです。その作品たちは今後世界に広まっていくことでしょう。
この20年ほどで、クラリネット奏者のレべルは私たちが想像できなかったほど上がりました。私は未来を楽しみにしています。
ありがとうございました。
 
 
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