THE FLUTE vol.172

第19回 日本フルートコンヴェンション福岡 2019 レポート

2年に一度のフルートの祭典「日本フルートコンヴェンション」が、今年も開催された。今年は福岡での開催となり、国内外のプロ・アマフルート奏者たちが集結するひときわホットな3日間となった。
世界で活躍する豪華なゲストたちによるコンサートをはじめ、ソロやピッコロ、アンサンブルのコンクール、一流奏者たちを講師に迎えたマスタークラス、フルートメーカーによるショーケース……など、数多くのイベントが目白押しとあり、会場は常に活気に満ちたムードにあふれた。
夏の終わりを彩ったコンヴェンションのレポートをお送りする。

 

大きな花を咲かせたコンヴェンション

第19回日本フルートコンヴェンション福岡2019—笛のチカラ・九州スタイル—
実行委員長 武田又彦

8月23日から25日にわたってアクロス福岡を会場に開催された「第19回日本フルートコンヴェンション福岡2019―笛のチカラ、九州スタイル―」は、コンサートやコンクールはもちろん、参加型のレクチャーやワークショップから、展示ブースや売店に至るまで、フルートに関するすべてが詰まった興奮の三日間となりました。九州各地と山口県のフルート仲間が一丸となって、企画から期間中の会場運営までの2年半、この上なく密度の濃い日々を過ごしました。その甲斐あってか、1300名を超えるたくさんの参加者の皆さんをお迎えすることができました。終了後には各方面から非常に高い評価をいただき、実行委員一同、ようやく肩の荷が下りた感じがしています。
日本フルート協会の主催で2年に一度開催されるフルートコンヴェンションは、すべてボランティアで運営されています。コンヴェンションの担い手となるべく、実行委員や協会の役員はもとより、コンサートに出演するフルーティストまでもが無償で集まるわけです。日本フルート協会の発足から52年、コンヴェンションの開始から38年の長い時間をかけて培ってきたボランティア精神という土壌があったからこそ、この度のコンヴェンションも大きな花を咲かせることができたのだと思います。今回、実行委員長を務めるにあたり、フルートの製作から流通、演奏、研究、鑑賞まで、この楽器に携わるすべての人々が等しく、共に手を携えて築き上げてゆく、という理念を掲げました。委員長としては至らないことばかりでしたが、実行委員の仲間たちの働きと支えのお陰で、誰の心にも残るコンヴェンションになったと自負しています。コンヴェンション開催にあたり、文字通り力の限りを尽くした実行委員一同に、どうぞ大きな拍手をいただけますように。
清水信貴実行委員長の下、すでに2年後のコンヴェンションに向けた準備が始まっています。次回、大阪でのコンヴェンションの成功に欠かせないものは?もちろん日本フルート協会会員のみなさんの「笛のチカラ」です!

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日本フルート協会や各フルートメーカーによる展示、オープンスペースでのコンサートなど

CONCOURS
「第19回日本フルートコンヴェンション福岡 2019 コンクール」

コンヴェンションでは、毎回ソロ、ピッコロ、アンサンブルの3部門でのコンクールが行なわれる。今回はソロ部門145名、ピッコロ部門49名、アンサンブル・アワード部門29組がエントリーし、様々な年代や国籍の奏者たちが腕を競い合った。

ソロ部門
期間 8/21~ 8/25

課題曲
1次予選
Arthur HONEGGER Danse de la chèvre
2次予選
次の2曲を演奏する
・Claude DEBUSSY Syrinx
・Sigfrid KARG-ELERT 30Capricen Op.107 よりNr.30 Chaconne
3次予選
(1)(2)の2曲を演奏する
(1)Johann Sebastian BACH Partita a-moll BWV1013よりSarabande、Bourrée Anglaise (繰り返しなし)
(2)下記の中から一曲選択して演奏すること
・Eugène BOZZA Agrestide Op 44
・Alfredo CASELLA  Sicilienne et Burlesque Op.23
・Louis GANNE Andante et Scherzo
・Raymond GALLOIS-MONTBRUN  Divertissement
本選
Wolfgang Amadeus MOZART
Konzert G-dur KV 313
 
入賞者
1 位 石井希衣
2 位 大竹菜緒
3 位 Ellen Hayun Lee
入賞 上畠由梨乃、河合雪乃、星川花保
 

ピッコロ部門
期間 8/21~ 8/24

 
課 題 曲
1次予選
Friedrich KUHLAU Fantasiea 2 Op.38 より
Ariette con variazioni : Andante con moto
(Universal Edition 版を使用)
2次予選
下記より一曲選択して演奏すること
・Johann Sebastian BACH
・Sonate für Flöte F-dur BWV529
・Sonata für Flöte C-dur BWV530(第2楽章の繰り返しはしない)
(W.&G.キルヒナー編曲Bärenreiter版又はZEN-ON MUSIC 版[絶版]を使用)
本選
Lowell LIEBERMANN
Concerto for Piccolo Op.50
 
入賞者
1 位 大久保成美
2 位 藤原友紀
3 位 去来川萌子
入賞 大久保祐奈、野勢寛樹、山本裕理子
 

アンサンブル・アワード部門
期間 8/23・24

アンサンブル
課題曲
予選
下記の曲を(1)(2)の順で演奏すること
(1)
・〈二重奏〉Friedrich KUHLAU  Duo Brillants Op.102 No.1 第2楽章
・〈三重奏〉Friedrich KUHLAU Grand Trio Op.86 No.1 第3楽章
・〈四重奏〉Friedrich KUHLAU Quartett Op.103 第3楽章
(2)自由曲1曲(6分以内におさめること)編曲作品も認める
本選
自由曲を2曲(曲間も含めて合計で20分以内におさめること)
編曲作品も認めるが、1曲はオリジナル作品を演奏すること。
 
入賞者
1 位 山本 英・角 芽吹・松岡 優・嶺井千奈
2 位 香川恵理・西村 葵・渡辺梨乃
3 位 小野蒼生・太田 光
入賞 大村優希恵・野村茉由、Hiu Lam Chuk・Chun Fung Ma、岡本華歩・三木百花・江崎 花
Slide 6
受賞式の様子

 

COMMENT
山あり谷あり……生まれ育った福岡での優勝
ソロ部門1位入賞 石井希衣

私にとって、今回は4回目のコンヴェンションコンクールでした。1次で落ちたり、3次で音が出なくなったり、山あり谷ありでしたが、たくさん成長させていただきました。今回、生まれ育った福岡でのコンクールで第1位をいただくことができ、とても嬉しいです。運営にご尽力いただいた皆様、ボランティアでお手伝いしてくださった皆様、本当にありがとうございました。博多の街も人もやっぱり大好きだなと感じる、充実したコンヴェンションでした。

 

CONCERT & SHOWCASE

今回のコンヴェンションコンサートのハイライトは、「ベルリンの14人のフルーティストたちコンサート」。ベルリン・フィルの元首席奏者アンドレアス・ブラウ氏によって設立されたフルートアンサンブルで、ベルリンの交響楽団とオペラ座の首席奏者を中心に14人という形態でフルートの多様性を広く世界に発信しているプロ団体の一つだ。
開催直前になり、ブラウ氏がけがのため来日できなくなるという不測の事態が起こったものの、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス交響楽団の副主席奏者のアンナ・ガルズリー・ヴァールグレンさんが代役に決まり、素晴らしい公演は無事に行なわれた。
ほかにも、大小様々なコンサートや各メーカーによるショーケースなど、一人で全部は回りきれないほどの充実のラインナップを楽しむ機会となった。

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1-3. 野口龍、永井由比プロデュース コンテンポラリーミュージック
4.工藤重典 リサイタル
5.サラ・ルメール ムラマツフルートショーケース

 

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1.クリスティーナ・ファスベンダー リサイタル
2.シルビア・カレドゥ ヘインズフルートショーケース
3.瀧本実里・石原小春・東佳音によるトリオイデアル、ヤマハフルートショーケース
4.前田りり子 コンサート
5.「ベルリンの14人のフルート奏者たち」と九州交響楽団による、ファイナルコンサート

 

MASTERCLASS & WORKSHOP

多岐にわたるジャンルのマスタークラスやワークショップが開かれ、どれも聴講者は出入り自由。普段はなかなか目にする機会のない分野のものもあり、連日、参加者・聴講者ともにたくさんのフルーティストたちが訪れ研鑽を積む場になっていた。
世界的奏者たちの指導を直接受けることができたり、参加者同士でアンサンブルを楽しめるなど、ここでなければできない体験を味わえるのはコンヴェンションならではだ。ジャズや低音フルートのためのワークショップなど、バラエティに富んだ分野の音楽を楽しむ人々が増えていることが感じられるのも、最近のコンヴェンションの特徴だ。

 

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1.アリ・ライアソン&星優子、ジャズフルート・ビッグバンドワークショップ
2.工藤重典 マスタークラス
3.木ノ脇道元 ロウフルートのためのワークショップ

 

会期:2019年8月23日(金)~25日(日)
会場:アクロス福岡
主催:一般社団法人 日本フルート協会、日本フルートコンヴェンション福岡 2019実行委員会
共催:福岡県、福岡市、公益財団法人アクロス福岡、公益財団法人福岡市文化芸術振興財団
後援:公益財団法人福岡観光、コンベンションビューロー、福岡商工会議所、九州電力㈱、九電工㈱、㈱福岡銀行
協力:公益財団法人九州交響楽団

https://japan-flutists.org/festival/flute-convention2019/

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石井希衣



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